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 風の向くまま薫るまま

その日その時、感じたままに。

映画 『オーメン』 1976

2018-11-14 10:37:02 | 映画












よくできたストーリー。優れた演技陣。適度に抑えの効いたショック演出。格調の高い映像。

ホラーだとかなんだとか、そんなことは関係ない。映画としてエンタテインメントとして、実に優れた作品だとしか、言いようがない。





6月6日午後6時。アメリカの大使館員でローマ駐在のロバート・ソーン(グレゴリー・ペック)は、妻が死産してしまったことを知り、そのことを妻にどう知らせるべきか悩みます。そこへ、全く同じ時刻に生まれ、母親が死亡し孤児となった赤ん坊を養子として引き取るよう、病院から提案されます。

ロバートは悩んだ末にこれを受け入れ、妻・キャサリン(リー・レミック)や周囲には秘密にして、その子ダミアンを実の子として育てることにします。


やがてロバートは駐英大使に任命され、ソーン親子は絵に描いたような幸せな日々を送ります。



しかし、ダミアン5歳の誕生会の日、大勢の招待客の目の前で、ダミアンの若い乳母が突如

「あなたのためにするのよ!」

と叫び、笑いながら首吊り自殺を遂げてしまう。


これ以降、ソーン一家の周囲で奇怪な事件が起こり始めるのです……。





教会を異様に怖がるダミアン。動物園に行けば何故か動物たちは皆、ダミアンの前から逃げていく。サファリパークではダミアンに怯えたヒヒの群れが、キャサリンとダミアンの乗る車を襲撃。

キャサリンは徐々にダミアンを疎ましく思い始め、恐怖心を抱き始めます。この子は自分の子ではないのではないか?そんな思いが頭をもたげ、そんなことを考えてしまう自分に戸惑い、精神的に追い詰められていきます。



ダミアンの秘密を知るという老神父がロバートの前に現れ、ダミアンは悪魔の子であり、ロバートの妻を殺し、やがてはロバート自身も殺されるであろうことを告げますが、もちろんロバートは取り合わない。

しかし、その神父が嵐の中、落雷を受けて折れ、教会の屋根から落ちてきた避雷針に串刺しにされるという異様な死に方をするに及び、ロバートは偶々この事件に関わることになったフリーカメラマンのジェニングス(デヴィッド・ワーナー)とともに、ダミアン出生の秘密を探っていく。










ホントによくできたストーリーだと思います。このストーリーの優れているところは、変な悪魔主義者の集団だとか、魔力のようなものを使える人物だとか、そうしたものに一切頼らず、普通の日常の中にいつの間にか忍び入る非日常の恐怖というものを描いているところにあります。

以前にも触れましたが、ダミアン少年は特別怖いことをするわけでもなんでもないんです。ダミアン自身は普通の子供と同じようにその辺で普通に遊んでいるだけ。ただその周囲で、次々と奇怪な出来事が起きてくる。


特殊な事象に頼らない分、役者さんたちの演技力が要となってきます。その点も実に素晴らしかった。

主演のグレゴリー・ペック、リー・レミック。カメラマン、ジェニングス役のデヴィッド・ワーナー。ダミアンを「守る」と誓う、不気味な中年の乳母ベイロック夫人役のビリー・ホワイトロー。いつも怯えたような表情で、避雷針に串刺しになるブレナン神父役のパトリック・トラウトン。ロバートにダミアンの「殺し方」を伝えるエクソシスト・ブーゲンハーゲン役のレオ・マッカーン等々、素晴らしい演技陣で、もうため息が出ちゃいます。

それとやはり、ダミアンを演じたハーヴェイ・スペンサー・スティーヴンス少年を忘れちゃいけません。この子も上手かった。



優れたストーリーに優秀な演技陣。ある意味とても「正攻法」な撮り方の映画だといえますね。



特殊効果も控えめではあるけれど、これもまた素晴らしい。デヴィッド・ワーナー演じるカメラマン、ジェニングスが、ガラスの板で首を切断されるシーン。当時はCGなどありませんから、使われているのはダミーの人形だというのはバレバレなのですが、それが逆に効果を上げているといえます。

滑ってきたガラス板によって切断される首。このシーンは7台のカメラを使い、様々な角度から撮影され、それを編集で繋げて効果を上げています。切断された首は実に綺麗にクルクル回りながら飛び上がる。この回転しながら飛ぶ首をスローモーションで様々な角度から何度も何度も見せていく。

残酷と云えば残酷ですが、ダミー人形だというのが丸わかりだということと、あまり血が出ていないということもあって、さほど陰惨な印象は受けないんですね。むしろ妙な「美しさ」「格調の高さ」といったものを感じさせる、秀逸なシーンに仕上がっているところが、実にお見事でした。


今ならばCGを使って、もっとリアルな映像になっていたでしょうが、その分陰惨さの度が増し、とても格調が高いなどとは言えない映像に仕上がったことでしょう。



70年代という時代も味方していますね。





この映画はダミアンというより、ダミアンの父親、ロバート・ソーンの物語です。実の子として愛情深く育てた子が悪魔の子だった!初めは信じられず、真実を確かめるために奔走し、やがて見えてきた真実に驚愕し、憔悴していく。


ダミアンを殺すことなどできない!初めは抵抗するロバートですが、ジェニングスの悲惨な死に様を目の当たりにし、ついに決心せざるを得なくなる。


この時点でロバートはほぼ正気を失ってますね。正気のままでは子供を、それも愛情をもって育てた子を殺そうなどとはとても思えるものではないでしょう。


観ていて思ったのは、これはひょっとしたら、すべてロバートの「妄想」なのではないか?ということです。


周囲で不幸な出来事が立て続けにおきたことから、精神的なダメージを受け、これは出自の知れない「もらい子」であるダミアンのせいではないか。

アミアンは「悪魔の子」ではないのか?


そのようなロバートの妄想、狂気を、我々観客は見せられたのかもしれない。



そんな視点まで持たせてくれる、実に深い映画であります。




お見事でした。

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6 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (美樹枝)
2018-11-14 15:25:14
幼少期のダミアンが好きでしたね~。 
  ダミアンが好き過ぎて、彼をモデルに漫画、描いちゃった友達いました。
その子の描く漫画「超革中」も面白かったな。
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Unknown (薫風亭奥大道)
2018-11-14 16:12:01
美樹枝さん、平井和正の『超革命的中学生集団』ですか?!コメディSFというか、当時は「ハチャハチャSF」と云われていたジャンルですね。あれはハヤカワ文庫版の挿絵が永井豪先生で、小説の内容に見事にハマってた。角川文庫版の方は生頼頼義先生が挿絵で、こちらは画風が内容にあってなかった。
『超革中』懐かしいですね。ハヤカワ文庫版も角川文庫も、もう絶版になってるのかな。懐かしいです。
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Unknown (薫風亭奥大道)
2018-11-14 16:14:51
生頼範義先生でした。名前を間違えちゃいけません。
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Unknown (美樹枝)
2018-11-15 15:23:24
あはあは、そうですそうです「超革命的中学生集団」。 「超革中」て書いても、薫ちゃんにいさんにはゼッタイ分かる!て思って。
   あの小説のキャラクターを元に、シリアスな漫画、描いてた友達(女子)。 あぁ、あのカッコいいイラスト貼付できたらなぁ~、今だに持ってる!😆 
 わたしも間違い、ダミアンの幼少期でなく、少年時代が素敵なのでした~❤
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Unknown ()
2018-12-16 18:31:38
兄さん 過去記事にコメント御免なさい。
お久し節にじっくり拝見しました。
やぁ面白かった。
ところで兄さんはオーメン3を御覧になりましたか?
オーメン1.は見応えありましたね。
脚本はモノホンの悪魔さんではないかと勘ぐりたくなるほど身震いしました。特に子役が良かったです。backに流れる悪魔の旋律も素晴らしかった。
しかしオーメン3は納得いかなかったのです。まづ配役見て違うわぁ…
悪魔はそれと誰も気付かないほど凄絶に美しい方に演じて欲しかったです。
あ、それと先日FNS歌謡祭でモモクロちゃん達をおみかけしました。皆さんすごく綺麗になられてて…いやぁびっくりしたわ。
アイドルを頭1つ抜け出した見事なエンターテナーに見えました。兄さんが応援するお気持ちが少しわかりました。
つまらない駄文で失礼致しました。
今年もあとわずかになりましたね。
兄さんどうぞお風邪などお召しになりませんように、ご自愛下さいませ。ではまた😃🌠
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Unknown (薫風亭奥大道)
2018-12-16 19:17:55
ゆさん、オーメンは1作目が最高で2作、3作と回を重ねるごとにつまらなくなっていった印象があります。画作りもだんだん適当になっていって、すごく落胆したのを憶えています。
3作目でダミアンを演じたサム・ニールは確かに超絶イケメンというわけではないですね。良い役者でちょっと癖のある役、裏のある役を演じさせたら抜群に上手い。
映画『レッドオクトーバーを追え!』の、ショーン・コネリー演じる潜水艦艦長に仕える副長役が良くてね、あれで結構好きな役者になった。映画『ジュラシック・パーク』では主役の数学者を演じてます。

コメントありがとう。ゆさんもご自愛くださいね。
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