ワイフが高校生のとき、生前の父から「お前に山を買っといたよ!」と権利書を貰った。資産の価値には関心の無い高校生、ず~っと忘れており、結婚するときには持ってきたが結婚してからも銀行のSafty Boxに入れっぱなしで55年。従って62年前の権利書だ。父親が亡くなった時、兄は「親の財産は俺が全部貰う。財産放棄のハンコを押してくれ!」と言い、兄の独り占めで何も頂いていない。最近傘寿も近づき、モノの処理の一環として上記山林の権利書を思い出し、私に山を見てくれという。自分の郷里の山林、面積は3000坪だ。先週森林組合の人に案内を頼んだ。
舗装されたくねくね林道を上がると三叉路、そこからまた林道を下るが、三叉路から長さ300m、幅27mから80m、だが長さの半分は幅30mと狭い矩形の斜面だ。反対側は町有地だ。雑木が茂っており蔦も絡んでいる。道路との境目にガードレールが走っている。柵から覗くと斜面、30度はあるだろう急勾配だ。斜面下の境界線は雑木で不明、利用価値は斜面を麓まで自分の足で下って見ないと判らない。昔、麓側は農地だったようだが今は山林に化けている。山林を下れば8軒のだ。そのから何キロ上がると自分の所有地に着くのか見当もつかないが、これをやらないと土地の全景が把握できない。
さて、この山林の利用法だが、水が得られないので①「家は建てられない」。②「植林に130万円かかり、その上周辺の雑木処理も含めて5年以上必要」と。③「売れますか?」と聞いたら「植林よりもっと難しい。誰も山林を欲しがらないから」という返事。義父が何故そこを買い、それをなぜワイフにくれたのか疑問だが、当時薪炭業を手伝ったのは高校生のワイフだけだったからか。62年前のことだ。町役場から山林の詳しい図面を取り寄せたが、近隣土地との隣接関係も複雑で、買い増して利用することも売ることも不可能に近いと森林組合の人も役場の人も言っていた。
土地の場所も価値もおおよそ確認した。「3000坪の山林所有者」と言えばその内容がどうあれ羨望されるだろう。まぼろしの名誉を義父から頂いたのだ。財布の豊かさではなく心の豊かさを増す一助になる、と義父に感謝した。(自悠人)
写真 1.ガードレールの向こうが崖で所有地 2.電柱はある 3.ここが三叉路