私的CD評
オリジナル楽器によるルネサンス、バロックから古典派、ロマン派の作品のCDを紹介。国内外、新旧を問わず、独自の判断による。
 




Mozart on the 1793 Fortepiano
Music & Arts Programs of America, Inc CD-660
演奏:Igor Kipnis

筆者が初めてフォルテピアノのレコードを聴いたのは、1970年にドイツ、ボンのベートーベンハウスで購入した、ベートーベンハウス所蔵の1825年ウィーンのコンラート・グラーフ製のフォルテピアノをボン近郊のブリュール宮で録音したLP(ドイツ、ハルモニア・ムンディ盤)だった。演奏はイェルク・デームスである。このLPを聴いて、フォルテピアノという楽器は、部屋の豊かな響きにもかかわらず、堅い、乾いた音がするものだと言う印象を受けた。その当時は、フォルテピアノの録音は、まだ非常に希であったが、オリジナル楽器による演奏のLP/CDが増えた現在ではフォルテピアノの演奏によるモーツアルトやベートーベンなどの作品を多数聴くことが出来るようになった。
 このCDでイゴール・キプニスが演奏している楽器は、ドレースデンのヨハン・ゴットフリート及びヨハン・ヴィルヘルム・グレープナー兄弟が1793年に製作したフォルテピアノである。音域はFF ~ g’’’の63鍵で、各音に2本の弦が張られている。この楽器は、録音当時、イゴール・キプニスの所有であった。収められている曲は、トルコ行進曲付きのソナタ11番イ長調(K. 331)、きらきら星変奏曲(K. 265)など12曲である。
 イゴール・キプニス(1930 - 2002)は、アメリカ在住のチェンバロ奏者、ピアノフォルテ奏者として幅広い活躍をしていた。この録音は1986年10月に行われた。調律はa = 425 Hzの非平均律である。録音は、かなり近接マイクで行われているが、打弦音は柔らかで、共振する弦の音が繊細で美しい。しかし機械的雑音は非常に少ない。
 モダンピアノでの演奏しか聴いたことのない人は、このCDに限らず、フォルテピアノの演奏、出来れば一度はオリジナル楽器の演奏を聴いてみることをお勧めする。モーツァルトやベートーベンが演奏していた自身の曲が、実際どのような音であったかを経験することは、作品の理解にとっても、非常に重要なことであると思う。
 なお、発売元のMusic and Arts Programs of America, Inc.のサイトには、このCDは見当たらないので、入手は困難かも知れない。しかし、他にもオリジナルのピアノフォルテを演奏したCDは売られているので、経験する機会はある。このサイトでも、今後いくつか紹介するつもりである。

発売元:Music and Arts Programs of America, Inc.

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