私的CD評
オリジナル楽器によるルネサンス、バロックから古典派、ロマン派の作品のCDを紹介。国内外、新旧を問わず、独自の判断による。
 




Beethoven: Cello Sonatas, opp 69, 102, Variations on Mozart’s “Bei Männern”
Hyperíon CDA66282
演奏:Melvin Tan (fortepiano), Anthony Pleeth (violoncello)

すでに「ベートーフェンのヴァイオリン・ソナタ『春』と『クロイツァー』をオリジナル楽器による演奏で聴く」を紹介する際にも述べたように、ベートーフェンの独奏楽器とピアノのためのソナタの題名は、ピアノが先に書かれ、両者が同等の扱いをされている。今回紹介するチェロ・ソナタの場合も同じで、作品69のソナタイ長調の場合も、「ピアノフォルテとチェロのための大ソナタ・・・(Grande Sonate pour Pianoforte et Violoncelle...)」と題されている。このソナタは、1807年から1808年にかけて作曲され、グライヒシュタイン男爵イグナーツに献呈された。この年には、交響曲第5番と第6番「田園」も完成しており、ベートーフェンは耳の病が深刻化するなど、苦境にある一方で、創作活動の頂点にあった。アレグロ・マ・ノン・タント、スケルツォ(アレグロ・モルト)、アダージョ・カンタビーレ、アレグロ・ヴィヴァーチェの4楽章からなり、演奏時間は約26分に及ぶ雄大な楽想の作品で、ベートーフェンのチェロソナタと言えばこの曲が先ず挙げられる。これに対して、作品102の2曲のソナタは、1815年に作曲された、やや小規模なソナタである。
 今回紹介するCDは、メルヴィン・タンのフォルテピアノとアンソニー・プリースのチェロによるヒューペリオン盤である。メルヴィン・タンは、1956年、シンガポール生まれのフォルテピアノ奏者で、幼少よりイギリスに渡り、ユーディ・メニューイン音楽学校、王立音楽院に学んだ。現在はイギリス国籍で、イギリスを拠点に演奏活動を行っている。ロジャー・ノリントン指揮のロンドン・クラシカル・プレイヤーズとベートーフェンやモーツァルトの協奏曲を録音するなど、EMIでの録音が多い。一方のアンソニー・プリースは、1948年にイギリスで生まれ、チェロを先ず父親のウィリアム・プリースに学び、後にギルドホール音楽・演劇学校で学んだ。主にバロックやクラシック・チェロの演奏家として活動し、かつてアカデミー・オヴ・エインシェント・ミュージックやイングリッシュ・コンサートの主席チェロ奏者を務める一方で、モダン・チェロの演奏も行っている。タンが演奏しているフォルテピアノは、1983年デレク・アドラム製作の1814年作のナネッテ・シュトライヒャーの楽器の複製で、プリースは、1770年頃ジョセフ・ヒル製作のチェロと1810年頃ルイ・パノルモが製作した弓を使用している。二人はヒューペリオン・レーベルに、このチェロ・ソナタを含むベートーフェンのチェロのための作品の全曲録音を行っている。録音は1987年8月に行われた。
 なおこのCDには、モーツァルトの「魔笛」の中のパミーナとパパゲーノの2重唱「愛を感じる男達には(Bei Männern, welche Liebe fühlen)」による7つの変奏曲(キンスキー番号Wo 46)も収録されている。
 このCDは、現在廃盤になっており、ヒューペリオンのウェブサイトの情報によると、アーカイヴ・サービスという、注文によってCDRに焼いたもので購入出来るそうだ。現在購入可能なのは、ベートーフェンのチェロのための作品全集の2枚組で、価格は27.98ポンド(約4,000円)とのことである。

発売元:Hyperíon

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