私的CD評
オリジナル楽器によるルネサンス、バロックから古典派、ロマン派の作品のCDを紹介。国内外、新旧を問わず、独自の判断による。
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バロック時代のトリオソナタを聴く:(1) コレッリの教会トリオソナタ作品1&3
バロック音楽(バッハ以外)
/
2011-02-12 11:19:00
Corelli: Sonate da chiesa op. 1 & 3
Harmonia mundi France HMA 1951344/45
演奏:London Baroque
トリオソナタという形式は、モンテヴェルディのオペラや宗教曲のリトルネッロがもとになって生まれたと考えられている。17世紀に於いては、もっぱらトリオソナタが器楽曲の形式として、その発祥の地イタリアのみならず、ドイツ、フランス、イギリスに於いても、多くの作曲家によって生み出され、出版された。当初は主にヴァイオリンなどの弦楽器が旋律楽器として用いられてきたが、18世紀になると、オーボエやリコーダー、フラウト・トラベルソなどの管楽器も用いられるようになってきた。通奏低音は、ヴィオラ・ダ・ガムバ、チェロ、テオルベ、ファゴットなどと、和音を奏するチェンバロやオルガンが担った。後期バロックのトリオソナタでは、通常は緩・急・緩・急の4楽章からなり、 第2楽章は2つの旋律楽器による模倣、フガートやフーガが多く用いられ、これが次第に精緻なフーガへと発展する。
アルカンジェロ・コレッリ(Arcangelo Corelli, 1653 - 1713)は、バロック後期のイタリアに於いて、最も影響力のあった作曲家、ヴァイオリニストである。コレッリが出版した作品集は、作品1から6まであるが、その内作品1と3は、それぞれ12曲からなる「教会ソナタ(sonata da chiesa)」と題されている。「教会ソナタ」という名称は、カトリックの僧侶でもあったジオヴァンニ・レグレンツィ(Giovanni Legrenzi, 1626 - 1690)とマウリッツィオ・カザッティ(Maurizio Cazzati, 1616 - 1678)がベルガモに於いて、緩・急・緩・急の4楽章からなるトリオソナタの形式を創作し、教会に於いてミサの間に演奏したことから生まれたと考えられる。しかし、コレッリがこの名称を用いた際には、教会との関係は意識されて居なかったようである。
作品1のトリオソナタは、1681年にローマで出版された。基本的な楽章構成は、グラーヴと指示された緩徐楽章に始まり、アレグロ―アダージョ―アレグロの4楽章からなる。しかし第7番のようにアレグロ―グラーヴ―アレグロの3楽章構成のものや、第4番のように短いヴィヴァーチェ(アタッカ)に続いてアダージョ―アレグロ―プレストが続く場合もある。1689年に出版された作品3の12曲も、基本的な楽章構成は同じである。コレッリのトリオソナタは、独奏者の技巧や華やかな展開を避け、形式的に整った、作品としての完成度を示していることにその特徴があると言えよう。それによって、他の出版された作品番号を有する曲集同様、広くヨーロッパ中に広がり、繰り返し出版された。後に紹介する作品2と4の「室内ソナタ」との違いは、精緻な構成と対位法技術の採用にある。速いテンポの楽章は、もっぱらフーガないしはフガートの形式を採っている。コレッリの「教会トリオソナタ」は、17世紀初頭に登場したイタリアのトリオソナタを完成した形式に纏め上げた作品と言うことが出来るであろう。
今回紹介するCDは、ロンドン・バロックの演奏によるフランス・ハルモニア・ムンディ盤である。ロンドン・バロックは、1978年にチェロ、バス・ヴィオール奏者のチャールス・メドラム(Charles Medlam)、ヴァイオリン奏者のイングリット・ザイフェルト(Ingrid Seifert)および故ジョン・トル(John Toll)によって創設された30年以上の歴史を持つオリジナル楽器編成の室内楽団である。その間、中核となる奏者は変わらないが、時期、編成によって様々な奏者が参加していた。ヴァイオリン奏者のヒロ・クロサキも、その一員として来日したことがある。今回紹介するCDに於いては、第2ヴァイオリンをリチャード・グウィルト(Richard Gwilt)、アーチリュートをナイジェル・ノース(Nigel North)、オルガンを作品1ではニコラス・パール(Nicholas Parle)、作品3ではラース・ウルリク・モルテンセン(Lars Ulrik Mortensen)が担当している。グウィルトは、現在の中核メンバーの一人である。それぞれが使用している楽器は、ザイフェルトが1661年、オーストリアのインスブルック近郊アプサムのヤーコプ・シュタイナー作のヴァイオリン、グウィルトが1660年頃、クレモナのアマティ作のヴァイオリン、メドラムが1720年、ペルージャのフィノッキ作のチェロ、ノースが1984年、オックスフォードのマイクル・ローウ作のアーチリュートを使用、オルガンは1982年、イギリス、デヴォン州のバックファストレイのウィリアム・ドレーク社製である。
このCDは、フランス・ハルモニア・ムンディの”musique d’abord”と言う廉価版の2枚組で、もとは作品1が1987年9月、作品3が1990年10月に録音され、1991年に発売されていたものである。このCDは現在も容易に入手できる。
発売元:
Harmonia mundi France
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