Corelli: Sonate da Camera op. 2 & 4
Harmonia mundi France HMC 901342/43
演奏:London Baroque
前回の「コレッリの教会トリオソナタ作品1&3」で述べたように、トリオソナタの形式は、ベルガモのレグレンツィやカザッティによって形成されたが、17世紀中頃に、北イタリアの器楽曲の様式がエミリア地方のモデナやフェラーラにもたらされ、モデナの音楽家が導入した様式の中に、フランスの舞曲を取り入れたものがあった。 この舞曲を含む器楽曲がもとになって、コレッリの「室内ソナタ」が生まれたと思われる。コレッリは、1685年にローマで12曲からなる作品2の「3声の室内ソナタ(Sonate da camera a tre)」を出版した。その基本的な楽章構成は、ゆっくりとしたテンポの「前奏曲(Preludio)」に始まり、アルマンド、クーラント、サラバンド、ジーグなどの舞曲が続く、緩・急・緩・急の4楽章構成である。前奏曲や舞曲の名称とともにテンポ表示もされており、同じ「アルマンド」でも、ゆっくりとしたテンポの場合もあれば速いテンポのものもある。たとえば第3番は、前奏曲に続いて、アレグロ、アダージョの2つの部分からなる楽章と、それにプレストの楽章が続き、いずれもアルマンドと表記されている。第6番と第9番は3楽章構成、そして最後の第12番は「チャコーナ(Ciacona)」と言う変奏曲1楽章のみである。コレッリは、間に作品3の「教会ソナタ」を挟んで、1694年に作品4の「3声のソナタ(Sonate a tre)」を出版した。この曲集も12曲からなり、基本的な構成は作品2と同様であるが、異なったテンポのクーラントやアルマンドの楽章を含むものが多い。この「室内トリオソナタ」の2つの曲集も、「教会トリオソナタ」同様、ヨーロッパ各国に広がり、多くの版を重ね、それぞれの国の作曲家に大きな影響を与えた。
今回紹介するCDもロンドン・バロックの演奏によるフランス・ハルモニア・ムンディ盤である。 ヴァイオリンはイングリット・ザイフェルト(Ingrid Seifert)とリチャード・グウィルト(Richard Gwilt)で、ザイフェルトが1661年、オーストリアのインスブルック近郊アプサムのヤーコプ・シュタイナー作のヴァイオリン、グウィルトがクレモナのアマティ作の1660年頃のヴァイオリンを使用している。チェロはチャールス・メドラム(Charles Medlam)で、1720年、ペルージャのフィノッキ作のチェロを使用している。オルガンは1982年、イギリス、デヴォン州のバックファストレイのウィリアム・ドレーク社製をラース・ウルリク・モルテンセン(Lars Ulrik Mortensen)が演奏している。
ただ、このCDは、「教会トリオソナタ」と違って、廉価版である”musique d’abord”が出ておらず、現在絶版となっていることが残念である。