私的CD評
オリジナル楽器によるルネサンス、バロックから古典派、ロマン派の作品のCDを紹介。国内外、新旧を問わず、独自の判断による。
 




Georg Philipp Telemann: Trio Sonatas for Violin, Flute & B. C., Trio Sonatas for Oboe, Recorder & B. C.
Brilliant Classics 93873
演奏:Fabio Biondi (violin), Lorenzo Cavasanti (recorder), Alfredo Bernardini (oboe), Tripla Concordia

ゲオルク・フィリップ・テレマン(Georg Philipp Telemann, 1681 - 1767)は、音楽史の中でもとりわけ多産な作曲家として知られている。テレマンの作品は、マルティン・ルーンケ( Martin Ruhnke)の編纂で1984年から1999年にかけて3巻で刊行されたテレマン作品目録(Georg Philipp Telemann: Thematisch-Systematisches Verzeichnis seiner Werke <TWV>)およびヴェルナー・メンケ(Werner Menke)の編纂で1983年に刊行されたテレマン声楽作品目録(Thematisches Verzeichnis der Vokalwerke von Georg Philipp Telemann <VWV>)によって分類されている*。TWVの分類は、曲の種類別に教会カンタータから管弦楽組曲まで55の番号が付けられ、それぞれの分類の中で、コロンの後に番号が付けられているが、器楽曲の場合、曲の区別を容易にするため、調性別のアルファベットが付けられた上で、さらに一連番号が付けられている。たとえば、今回紹介する曲の内のヴァイオリン、リコーダーと通奏低音のためのトリオソナタニ短調には、TWV 42:d10と言う番号が与えられている。42は2つの旋律楽器と通奏低音のための室内楽、すなわちトリオソナタに与えられた番号で、150曲以上が挙げられている。
 テレマンの作品の作曲時期については、自身が関与した出版譜がある場合を除いては、まだ充分に解明されてはいない。何しろ膨大な作品数で、それらすべてについて、作曲時期を特定するのは容易なことではない。
 今回紹介するCDは、Tripla Concordiaという1991年に創設されたイタリアのアンサンブルの演奏による、ヴァイオリン、リコーダーと通奏低音のためのトリオソナタとオーボエ、リコーダーと通奏低音のためのトリオソナタを収録したブリリアント・クラシックスの2枚組である。このCDでは、ヴァイオリン、リコーダーと通奏低音のためのトリオソナタは5曲で「全曲」とされているが、原曲の標題では、ニ短調(TWV 42:d1)とイ短調の2曲(TWV 42:a1, a4)はリコーダーと明記されているが、ヘ長調(TWV 42:F8)とヘ短調(TWV 42:f2)は”Flöte”ないしは”flûte”と記されていて、リコーダーかフラウト・トラベルソか必ずしも明確ではない。しかしこのCDでは、いずれもリコーダーで演奏されている。18世紀前半までは、通常”Flöte”あるいは”flûte”と言えば、リコーダーをさしていたと考えられていたためだろう。
 さらに、オーボエ、リコーダーと通奏低音のためのトリオソナタは、6曲で「全曲」とされているが、ここでもハ短調(TWV 42:c2)、ヘ長調(TWV 42:F15)とイ短調(TWV 42:a6)はリコーダーと記されているが、ホ短調(TWV 42:e6)、ヘ長調(TWV 42:F9)とハ短調(TWV 42:c7)は”Flöte”ないしは”flûte”と記されている。
 このCDに収録されている11曲のトリオソナタは、オーボエ、リコーダーと通奏低音のためのトリオソナタヘ長調(TWV 42:F9)が3楽章であるほかはすべて4楽章構成で、舞曲の表記がされていないので、その点では教会ソナタに分類できるが、各楽章のテンポ指示は、緩・急・緩・急を基本としていながら、一部に例外があり、速いテンポの楽章では、模倣的な技法が用いられているものが多いが、その対位法的技法はあまり緻密ではない。しかし、コレッリやヴィヴァルディなどのイタリアのトリオソナタとはかなり異なった、テレマン独自の様式と見ることが出来る。
 このCDにはこの他に、リコーダーと通奏低音のためのソナタヘ短調(「忠実な音楽の師」の36番、TWV 41:f1)**と、三位一体後第12日曜のためのソプラノのカンタータ「イエス、汝の名声を増すために(Da, Jesu, deinen Ruhm zu mehren)」(TWV 1:155a)が収録されている。
  この録音におけるTripla Concordiaのメンバーは、リコーダーを演奏しているロレンツォ・カヴァサンティ、チェロのカロリーネ・ベルスマ、チェンバロのセルジオ・チオメイの3人である。ヴァイオリン、リコーダーと通奏低音のためのトリオソナタでは、ヴァイオリンをファビオ・ビオンディが演奏している。ビオンディは、エウローパ・ガランテを率いてOpus 111レーベルにおけるヴィヴァルディの「四季」ほかの協奏曲などの録音でよく知られている。オーボエ、リコーダーと通奏低音のためのトリオソナタでは、オーボエをアルフレード・ベルナルディーニ、ファゴットをジオルジオ・マンドレーシが演奏している。カンタータのソプラノは、モニカ・ピッチーニが歌っている。ヴァイオリン、リコーダーと通奏低音のためのトリオソナタを収録したCD 1は、1997年6月29日にコリアーリにおけるライブ録音、オーボエ、リコーダーと通奏低音のためのトリオソナタを収録したCD 2は、2001年4月7日から9日にモンテヴァルキにおいて録音された。いずれもイタリアのストラディヴァリウス・レーベル原盤のライセンスに基づいている。

発売元:Brilliant Classics

* ウェブサイト上のテレマンの作品目録としては、フランス語のサイト「 http://www.uquebec.ca/musique/catal/telemann/telgp.html Georg Philip Telemann Catalogue TWV」が最も詳しい。ドイツ語の総合的クラシック音楽情報サイト”Klassika. Die deutschsprachige Klassikseiten”のテレマンの項” http://www.klassika.info/Komponisten/Telemann/ Georg Philip Telemann”の作品目録は未完成で、曲種によってはすべての作品が網羅されていない。

** このCDケースの裏にあるトラック、曲目リストには、いくつかの誤りがある。ヴァイオリン、リコーダーと通奏低音のためのソナタヘ長調は、TWV 42:f8ではなく、TWV 42:F8である。CD 1の最後にある曲は、”Trio Sonata in F minor TWV 42:f1”とあるが、正しくは”Sonata in f minor TWV 41:f1”である。CD 2に収録されているソプラノのカンタータの作品番号が記されていないが、上述のようにTWV 1:155aである。

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