François Couperin: Apothéose à la mémoire de Lully, Sonatas
SEON SRCR 2103
演奏:Sigiswald Kuijken, Lucy van Dael (Violins), Wieland Kuijken (Cello, Bass Viol), Adelheid Glatt (Bass Viol), Barthold Kuijken, Oswald van Olmen (Travers Flutes, Recorders), Bruce Hayns, Paul Dombrecht (Oboe), Hansjürg Lange (Basson), Robert Kohnen (Harpsichord, Narrator)
フランソア・クープラン(Feançois Couperin, 1668 - 1733)は、フランスの音楽一族の中で特に傑出した者として、「大クープラン(Couperin le Grand)」と呼ばれている。ルイ14世治下の1693年に王宮礼拝堂のオルガニストに就任し、1717年には王宮楽団の常任楽士に任命された。クープランは、コレッリのトリオソナタをフランスに導入した事で知られているが、ただそっくりそのまま導入したのではなく、自分流に、あるいはフランス風に消化して取り入れた。
今回紹介するCDは、クイケン3兄弟を中心とする奏者たちの演奏による、トリオソナタほかを収録したSEON盤の再発である。日本盤の第1曲の題名は、「トリオ・ソナタ『リュリ讃』」となっているが、原題は「比類無きリュリ氏の思い出への『賛』の形式のコンセール(Concert en forme d'apothéose à la mémoire de l'incomparable M. de Lully)」とあり、単なるトリオソナタではない。 コンセールというのは、フランス独特の小規模の室内楽の形式で、クープランの「王宮のコンセール」やラモーの「コンセール形式によるクラヴサン曲集」などがよく知られている。曲はそれぞれ標題を持った12の楽章と、緩・急・緩・急の4楽章からなるトリオソナタによって構成されており、1725年に出版された*。本来「アポテオーズ(apothéose)」というのは、優れた音楽家が死後、ミューズ達の住むパルナッス山に導かれ、音楽の神アポロから冠を授けられることを意味する。この曲では、パルナッス山におけるリュリを迎える様子が描写される。このCDでは、その表題を曲の冒頭でクラヴサン奏者のロバート・コーネンがフランス語で朗読している。演奏は、ヴァイオリンのジギスヴァルト・クイケンとルーシー・ファン・ダエル、バスヴィオール、チェロのヴィーラント・クイケン、フラウト・トラベルソとリコーダーのバルトルト・クイケンとオスヴァルト・ファン・オルメン、オーボエのブルース・ヘインズとパウル・ドムブレヒト、ファゴットのハンスユルク・ランゲ、クラヴサンのロバート・コーネン等が、曲に応じて様々な組み合わせで演奏している。最後のトリオソナタは、ヴァイオリン2と通奏低音によって演奏される。
トリオソナタ「壮大なるもの(La superbe)」は1693年頃に作曲されたと思われ、緩・急・緩・急・緩・急の6楽章からなる。他の作品も同様であるが、フランスの作曲家の作品は、イタリアの影響を受けたにもかかわらず、ドイツやイギリスなどの作曲家とは異なり、テンポや曲想の指示をすべてフランス語で表示している。たとえば、Allegro = Gaiement、Grave = Gravement、Vivace = Vivement、Dolemment = Tristeなどである。
トリオソナタ「スタインケルク」は、1688年から1697年にかけてルイ14世治下のフランスとアウクスブルク同盟(神聖ローマ帝国、ドイツの選帝侯国、スペイン領ネーデルランド等)軍の間で戦われた大同盟戦争の中で、1692年にフランス軍が南部オランダのスタインケルク近郊における戦闘で勝利を収めたことを記念して作曲されたことからその名が付いた。曲は急・緩・緩・急・急・緩・緩・急の8楽章からなっている。冒頭の楽章は、しばしば戦いの表現に使われるリズムで構成されている。第5楽章は、短いファンファーレを模した曲である。
四重奏ソナタ「スルタン妃」は1695年の作とされ、2つのヴァイオリン、2つのバス・ヴィオールと通奏低音によって演奏される、緩・急・緩・緩・急・急の6楽章からなる作品である。この作品の表題は、世紀の変わり目のパリで流行していた東洋趣味にちなんで、この作品の荘重な楽想から付けられたもののようだ。この曲でもう一つのバス・ヴィオールを演奏しているのは、アーデルハイド・グラットである。
クープランのトリオソナタは、特に舞曲の表示はなく、教会ソナタに分類されるもののようではあるが、実際の楽章の中にはジーグなどの舞曲を思わせるものがあり、そのような分類を強いてする必要はないと思われる。冒頭にも記したように、フランソア・クープランのトリオソナタは、コレッリの影響を受けて作曲されたものと考えられているが、実際の作品を聴いてみると、充分にフランスの音楽になっていることが分かる。
録音は1973年1月と1975年2月にアムステルダムで行われた。このCDは、日本のソニー・ミュージック独自企画の、セオン・シリーズの1枚で、1997年11月に発売されたものである。しかし、現在ソニー・ミュージックのウェブサイトには掲載されていない。
発売元:ソニー・ミュージック
* フランソア・クープランの作品の作曲、出版年については、梅沢敬一氏による「 クラシック・データ館」の「フランソワ・クープラン(1668.11.10-1733.09.11)簡易作品表」を参考にした。
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