私的CD評
オリジナル楽器によるルネサンス、バロックから古典派、ロマン派の作品のCDを紹介。国内外、新旧を問わず、独自の判断による。
 




W. A. Mozart: Clavier-Concerte 26 & 27
Channel Classics CCS 2691
Jos van Immerseel (fortepiano), Orchestra Anima Eterna

ヴォルフガンク・アマデウス・モーツァルト(Wolfgang Amadeus Mozart, 1756 - 1791)のピアノ協奏曲第26番ニ長調(KV 550)は、第25番ハ長調(KV 503)の作曲から1年あまり後の1788年2月にヴィーンで完成した。この年にはその後6月から8月にかけて最後の3曲の交響曲が作曲されている。初演は翌年の1789年にドレースデンで行われた。
「戴冠式」という名前は、1790年にフランクフルトで行われた皇帝レオポルトII世の戴冠を祝う演奏会に於いて演奏されたことに由来すると思われる。トランペットとティンパニを含むオーケストラ編成によって、華やかな、時に堂々とした響きを有しているが、モーツアルトのピアノ協奏曲としては、決して優れた作品とは評価されていない。3楽章を通じて長調で、主題もピアノのパートも単純で、何ら新しい試みは見られない。モーツァルトは、作曲に取り掛かるときから、戴冠式を祝う演奏会における演奏を想定してその事を強く意識していたためかも知れない。
 ピアノ協奏曲第27番変ロ長調(KV 595)は、すでに「モーツァルトの最後の協奏曲、バセット・クラリネットのための協奏曲とピアノ協奏曲第27番」でも触れたが、1791年1月5日に完成した。しかし最初の2つの楽章は、1788年まで溯ることが出来、必ずしも最晩年の作品と言うことは出来ない。この曲は、モーツアルト特有の躍動感や喜びの表現が感じられない、静謐で内省的な作品である。そして第3楽章の主題は、同じく1791年1月に完成した歌曲「春へのあこがれ(Sehnsucht nach dem Frühling)」(KV 596)の旋律と極めて類似していて、ごく自然に同じ旋律を用いたものと思われる。モーツアルトの最後のピアノ協奏曲にふさわしい傑作である。

注)「春へのあこがれ」はヘ長調だが、比較しやすいよう変ロ長調に移調してある。

 今回紹介するCDは、ヨス・ファン・イムマゼールのフォルテピアノ、アニマ・エテルナ管弦楽団の演奏によるチャンネル・クラシックス盤である。ヨス・ファン・イムマゼールについては、すでに「ベートーフェンのピアノ曲をフォルテピアノで聴く」や「モーツァルトのピアノ協奏曲第20番と21番をオリジナル編成で聴く」でも紹介したが、1945年アントウェルペン生まれのフォルテピアノ奏者、指揮者で、アントウェルペン音楽院でオルガン、チェンバロ、ピアノを学んだ。その当時すでにコレーギウム・ムジクムを組織して、ルネサンスやバロックの作品への関心を深めていった。1987年にはアニマ・エテルナ管弦楽団を創設し、古典派からロマン派、そして最近では近代の音楽にまでそのレパートリーを拡げている。アニマ・エテルナは、当初6人の奏者からなっており、バッハの作品を研究することを目的としていたが、1987年には17人に拡大し、バロック時代の音楽に専念していた。1989年までには25人に拡大し、ヴィーン古典派の音楽を演奏するようになり、1990年から1992年にかけてモーツァルトのピアノ協奏曲全曲を演奏する。その後オーケストラは、メンバーを45人ぐらいに拡大し、ロマン派からさらにラヴェルやリストなど近代の作品にまでその範囲を拡大してきた。しかしアニマ・エテルナは常設のオーケストラではなく、演奏会や録音のある機会に、世界各国から適した奏者を招集して結成される。
 このCDには、冊子が添付されて居らず、ウェブサイトにも使用された楽器やオーケストラの編成についての情報が掲載されていないため、詳細は不明である。録音されたのは、発売年である1991年から推察して、1990年か1991年と思われる。現在チャンネル・クラシックスのサイトには、このCDが掲載されているが、在庫はないようである。

発売元:Channel Classics


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