Rossini Overtures
EMI CDC 7 54091 2
演奏:The London Classical Players, Roger Norrington (Conductor)
ジョアッキーノ・ロッシーニ(Gioachino Antonio Rossini, 1792 - 1868)は、イタリアのペサーロでホルン奏者と歌手を両親として生まれ、幼少の頃からヴァイオリンとチェンバロを習い、美しい声の持ち主でもあった。14歳でボローニャの音楽学校に入り、作曲とともにチェロ、ホルン、鍵盤楽器、声楽も学んだ。4年後に卒業すると、最初のオペラを作曲し、続いて8曲のオペラを作曲したが、いずれも成功したとは言えなかった。1813年に作曲した「タンクレディ(Tancredi)」によって初めて成功し、続けざまに作曲すると同時に、1715年にはナポリの2つのオペラ座の監督となった。ロッシーニはオペラ作曲家として広く知られているが、その39曲に上るオペラは1710年から1729年までの間に作曲されたもので、その後はカンタータなどの宗教曲や器楽曲を作曲した。ロッシーニが作曲した39曲のオペラの内で、今日でも演奏されるのは、「セヴィリアの理髪師」や「チェネレントーラ」など僅かな作品で、序曲だけが演奏されるものほとんどである。
その活動時期から見ると、メンデルスゾーンやシューマン、ベルリオーズと重なるが、ロッシーニの作品には、ロマン主義的な感情移入は見られない。序曲は、一種の「処方」に基づいて作曲されており、オペラそのものとはほとんどの場合関連性が見られない。多くはゆっくりとした序奏に始まるが、その冒頭には様々な工夫がされている。例えば、「泥棒カササギ」では、小太鼓の連打で始まり、「セミラーミデ」では、ティンパニの弱音のトレモロで始まる。続いて速いテンポの主要部分が続くが、和声的には単純で、主和音(トニカ)と属和音(ドミナント)を行き来し、最後は活気あふれた終結部に至る。ロッシーニの管弦楽曲で特徴的なのは、クレッシェンドの多用であろう。2拍や4拍のリズムを繰り返しながら、次第に楽器が加わってくるクレッシェンドは、非常に効果的である。19世紀の前半は、オーケストラの規模が拡大していた時期で、ロッシーニの序曲も、ピッコロ・フルートがしばしば使われ、ホルン、トランペット、トロンボーンにティンパニ、大太鼓、小太鼓、そしてしばしばシンバルやトライアングルも加わる。「ウィリアム・テル」の序曲の冒頭では、チェロが5つの独奏と合奏に分けられており、最低6人の奏者が必要で、それをもとに計算すると、30人以上の弦楽器奏者と少なくとも20人の管楽器と打楽器奏者が必要となる。「ブルスキーノ氏」では、第2ヴァイオリンが弓で譜面台を叩くという、奇想天外な試みが見られる。ロッシーニのオペラとして、最後の作品となった「ウィリアム・テル」の序曲は、チェロ独奏によるレシタティーヴォ風の音型で始まり、分奏されるチェロをともなって美しい旋律が奏される。この序奏部は「夜明け」を表し、これに続いて「嵐」、「牧歌」、「スイス独立軍の行進」を表現する一種の交響詩と考えることも出来る、ロッシーニの序曲の中でも最高傑作と言っても良いだろう。
今回紹介するCDは、ロジャー・ノリントン指揮、ロンドン・クラシカル・プレイヤーズの演奏によるもので、「絹の梯子(Scala di seta)」、「ブルスキーノ氏(Il Signor Bruschino)」、「アルジェリアのイタリア女(L'italiana in Algeri)」、「セヴィリアの理髪師(Il barbiere di Siviglia)」、「泥棒カササギ(La gazza ladra)」、「セミラーミデ(Semiramide)」、「ウィリアム・テル(Guillaume Tell)」の6曲が収録されている。18世紀前半の木管楽器は、次第にキーが付け加えられてきた時期だが、この録音でどのような楽器が用いられたかは、明記されていない。金管楽器はすべてピストンやバブルのないものが用いられている。ホルンのストップ奏法による音程の調整が随所で聞かれる。編成は第1,第2ヴァイオリン各10,ヴィオラ8,チェロ6,コントラ・バス6、フルート、オーボエ、クラリネット、ファゴット各2,ホルン5,トランペット4,トロンボーン3,ティンパニと打楽器5の67人で、「ウィリアム・テル」では、チェロが1人加わっている。演奏解釈は、「伝統」にはとらわれず、原曲に立ち戻り、オリジナル楽器の制約と特長を生かしたものとなっている。
このCDは、1990年にロンドンで録音され、EMIレーベルで発売されたが、現在EMIのサイトのは掲載されていない。東芝EMIでは、2005年12月21日にTOCE-13232の番号で1,300円で発売されている。現在まだCDショップによっては在庫があるようだ。
発売元:EMI
*ロッシーニの生涯と作品については、ウィキペディア・ドイツ語版の"Rossini"を主に参考にした。
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