懐炉冷えて上野の闇を戻りけり
正岡子規
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明治の頃の、懐炉ってどんなのがあったのだろう? 焚き火に石ころを埋めておいて、熱を持ったのを、布にくるんでいただろうか? 想像がつかない。
寒い日、着物の懐の奥に、これを忍ばせておくとあたたまっていられる。現代人は、空気に触れると発火する仕組みの、市販の紙製の使い捨てを使っているようだ。背中などにぺたんと貼り付けてもらって。
わたしはこれをやらない。やっとことがない。
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どうだっていいけど、作者正岡子規は夜中上野の辺りの真っ暗な通りを歩いていたが、冷え込む。これじゃ、この後、夜会の歌会に集中できない。もう一度家に戻って新しい懐炉を手に入れて、再出発をした。そこが俳句になっている。俳人が詠めば俳句になる。わたしがどんなに工夫を籠めても、わたしのは俳句にならない。フシギだ。
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