退屈と言った気がする海鼠かな
青木栄子さん
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西日本新聞の今朝の「俳句月評」にこの句を見つけました。月評担当は谷口慎也俳人です。
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海鼠(なまこ)が食べられる季節になりました。12月が過ぎようとしています。スーパーで切り分けた赤海鼠パックを見つけましたが値段が張っていてとてもとても。その場を逃げるようにして立ち去りました。海鼠は海の底に退屈そうに暮らしていますが、なんのなんの、地上に運ばれて来ると途端に驚きの価値が出ます。
海の底にいるときには退屈に暮らしているのでしょうか、ほんとに? なにしろ鈍重。ぶよぶよとしてふくらんで動きが鈍いですからね。目が何処についているのかもわかりません。海の底の暮らしがそんなに変化に富んでいるわけでもありません。恋人と連れ添って映画を見に行く機会もありません。
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ある日とうとう海鼠のお爺さんは、「退屈!」と言いました。「生きているのは退屈!」と2度3度。まるでお爺さんしているわたしのようです、長生きに倦怠を覚えているところが。いいんでしいんです、それでいいんです。退屈を覚えるほどの平和な世の中がいいんです。
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提示された俳句の言い分は、読者によってさまざまに受け取られしまいます。それほどに奥が深いのでしょうね、きっと。
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