おれはとてつもなく偉大な人間だ。
なにしろおれのために、大空がある。
おれのために光が降って来る。
おれのために風が吹いて来る。
おれのために空気がある。それをおれの鼻まで届けて来てくれる。
しかも、みんなにそれを頼んだ覚えがない。頼まないでもそうなっている。
みんな向こうの方からだ。
シャットアウトされたらそこで終わりだが、これまでシャットアウトされないでいる。
みんなぴったりおれに寄り添っている。おれに傅(かしず)いている。おれを王様にして仕えている。
おれとは偉大な人間だ。
おれのために地球が回っている。おれのために宇宙中の星々が光っている。
☆
なに? おれのためなんかじゃない?
そうかもしれない。「おれのために」働いているぞなどと恩も着せない。
みんな立派だ。みんな偉大だ。みんな神だ。みんな仏だ。
おれが生きていける条件をみんな整えていてくれている。
しかも無償で。代金寄こせとも言わないで。感謝せよともほのめかさないで。
さらりさらりさらりとしているばかり。
☆
おれのために大空が広がっている。大空が秋になっている。
おれは大空を見上げて秋をしている。爽やかでいる。
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