いつ何時何が起こるか分からない。いつ死んでもいいように準備をしておかなくちゃならないなあ。死ぬ準備って、どんなことをしておいたらいいのかなあ。家族が慌てないようにしておくことかなあ。葬式の準備をしておくってことかなあ。生前写真は撮ってもらっていた。法名はすでに本願寺から頂いて仏壇の引き出しに入れてある。葬儀場は駅前の小さなところと決めている。人は呼ばないでいい。大袈裟にするな。ひっそり家族葬でいいと話してある。年金出し入れの通帳と印鑑も揃えてある。借金返済をすませていない。これは気になる。急がなくちゃならない。あれこれマイナスになっているものはできるだけ埋め合わせておくべきだろう。気になることはいろいろある。まっさらとはいかない。でもね、準備が終わらないと死ねないということはない。いざとなればあっという間だろう。そこが救いだ。人生修了感謝状を書き添えておけばいいのかもしれない。「わたしは生きました」「過分な幸福を頂戴いたしました」「文句はありません」「わたしは無事に死ねました」「このまま次なる成長地点へ立ち去れます」神さま仏さまに上程する文言はこんなところかなあ。家族が見たら、大袈裟過ぎているというふうに笑われるのが見える。一切無用か。心配無用か。手が込んでいたら却って醜いかもしれない。死んだときは死んだとき。置き土産なし。おろおろしない。生死ともに安らかでいる。ぽあんとしている。重々しくせず、あっけらかんにしている。これに限るかもしれない。
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