曼珠沙華一むら燃えて秋陽つよしそこ過ぎてゐるしづかなる径 木下利玄
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曼珠沙華を取り上げた作品にこんなのがあった。秋の陽が照りつけている。日射しが強い。それを射止めるかのように曼珠沙華が赤く明るく灯っている。小径の傍に一叢。そして一本の径が遠くまで静かに続いている。どんな音も聞こえないけれど。村里の目の前の現実がそこで途絶えている。作者はその後4ヶ月して異境の人となった。死の予感があったのかもしれない。秋の陽が強く差し込む曼珠沙華を見たのはこれが最後になった。「そこを過ぎて行けば」寂静界、静かな涅槃界に続いて行くのである。
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