寒い。いい空だ。すっきりしている。低減した青の、広がり具合がいい。僕が重たい物質でなければ今日あたりはずっと空を住処にしていたいものだ。いずれ物質ではなくなる時が来るが、それまで手をこまねて待っていられるかどうか。いま出来る方法は瞑想か幽体になって肉体を離脱する方法しかないように思われる。(ほかにも方法はあるのかもしれない、うんとうんと)
擬態という手もある。なったふりをするシミュレイションだ。化ける。烏賊や章魚でもこれをする。賢い。体の色を透明にしたり赤くしたりする。お化けも化けている。化けるというのは、しかし、変化が巧みだというだけのことなのだが。お化けでも出来るのだから、何かないか。僕に出来ることはないか。隠れ蓑という発明品がもうやがて生産されてきてもおかしくはない。透明人間になるのはそう難しいことではなさそうに思えるのだが。
地上のダイナサーは鳥に化けた。長い進化を経てだが、大空を行く鶴にも化けた。蜻蛉に化ける。水蒸気は霞に化ける。霧に化ける。雲に化ける。幽霊ゴーストは、人から恐がられるが、恐がらせるのはこれも一種の誤魔化しで、秘密維持を謀っているだけかもしれない。シークレットは盗まれないことが肝心だ。案外あれで何かひそかな楽しみごとをしているのかも知れない。何かは分からないが。
いい空だ。水色の空がいい。広がりがいい。無限大がいい。僕のエッセンスは無限大でいられるのではないか。ここを飛び去る方法はないか。飛べない人間として固定したままでいるのはかなわない。自由がない。窮屈だ。お昼頃には一人すういすういミズスマシのようにして大空を滑っていたいものだ。魅惑する青空の青色だってしかしあれは瞳が捉える太陽光線の魔術。青空へ上がっていけばそこは眩い白色光だけなのかもしれない。
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