荒縄が遊具であった昭和の子 大なみ小なみの海を跳びけり 兵庫県 上月しげ子 米川千嘉子選 特選 (NHK全国短歌大会入賞作品より)
*
さぶろうも昭和の子。終戦の年に台湾で生まれた。翌年キールンの港から引き揚げ船に乗って和歌山に上陸したらしい。船中で死にかけていたらしい。下痢が止まらずお襁褓が尽きて困ったらしい。それはそうと、縄跳びの縄は荒縄であった、たしかに。それもぼろぼろの。これで遊んだ。こんなものにか遊具がなかった。それでも大波小波が飛び越せた。海を遊びの中に引き込んで大らかにして暮らすことが出来ていた。いまはどんな近代的な遊具だってある。でも、こうはいくまい。この大らかさはあるまい。雄大さはあるまい。こどもの遊具は大人に与えられたらそこでもうおしまい。こども自身が開発するものである。「平成の子たちよ、どうだこの心意気!」と言いたいような素朴で力のある歌に巡り会えた。・・・とはいえ、さぶろうは運動音痴で且つ小心者。荒縄の縄跳びを苦手とした。女の子にも笑われていた。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます