こんなにもまあるく笑う人だっけ退職初日の夫と歩きて
福岡南 福井幸子さん
今朝発表になった西日本新聞読者文芸栗木京子選短歌部門第3席の作品です、これは。
いい作品だなと思いました。
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夫が退職した。初日いっしょに外に出て歩いた。歩こうと誘うので歩いた。靴は二人とも軽いスニーカーにした。お天気もよかった。四月の公園は桜がもう見頃になって居た。風が花びらを散らすと、夫はこどもになったように、大声を出して、「きれいだね」「きれいな蝶のようだね」とはしゃいだ。いままでこんな顔は見せなかったのに、と思った。重たい拘束から解かれた人が、今日は自由になった日である。何か言ってあげたいのだが言葉が見つからなかった。角張った顎がなくなって、顔がまあるくなっていた。夫は、この日、初めて会った人のように初々しかった。
この短歌からわたしはそんな風景を想像してみました。この歌は感情があふれています。
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