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たのしくおしゃべり。そう、おしゃべりは楽しいよ。

鉄鉢の中にも霰(あられ)  山頭火

2006年08月17日 11時58分04秒 | Weblog
 霰は音がする。霙はしめっていて粒が小さいが、霰は乾燥して粒が大きい。投げられたように勢いもある。それが緑葉樹の大きな葉にあたる。瓦にあたる。土にぶつかる。すると高い音がする。金属音がする。

     *

 山頭火は、鉢を手に抱えている。家々を廻って、読経をして、いただきものを鉢に受ける。銅貨の時もあるし、米粒の時もある。広い葉に包んでおにぎりをわけてもらう時もある。手がかじかんでいる。ぱらぱらぱらと霰が落ちてきた。どうせ木彫りの鉢しか持ってはいないのだが、鉄鉢のように響いてきた。

     *

 受ける物を受ける。受けてしか生きられないことを体で覚えてゆく。われわれはわが計らいによって、わが働きによって、わが智恵によって生きているように錯覚して一生を終えるが、その迷いの中に、懺悔(さんげ)を加える時も持つ。それが行脚であろう。受けることがあることを喜ぶ。霰はよろこびの音である。
コメント (2)
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