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『悼む人』天童荒太

2015-06-17 | 読書

内容(「BOOK」データベースより)
不慮の死を遂げた人々を“悼む”ため、全国を放浪する坂築静人。静人の行為に疑問を抱き、彼の身辺を調べ始める雑誌記者・蒔野。末期がんに冒された静人の母・巡子。そして、自らが手にかけた夫の亡霊に取りつかれた女・倖世。静人と彼を巡る人々が織りなす生と死、愛と僧しみ、罪と許しのドラマ。第140回直木賞受賞作。



直木賞と聞くと敬遠してしまうのだけど、叔母に借りて読んでみました。

結論から言えば、「圧巻・・・!」でした。これは読んでおいて損はないです。

どうせ宗教めいた話だろうと高をくくっていたらそんなことなかった、むしろ神仏に頼らず人として死者を悼む的な。

道端で不思議なポーズを取る主人公〈静人〉に何をしているのか問うと
「故人を悼ませてもらいました」
これだけでも不自然でインパクトの有るシーン、それを「偽善」とし化けの皮をはがそうとする雑誌記者、もっと理解したいと放浪に同伴する夫殺しをした女、そして「息子が理解できない」ながらもどこか通づる想いを感じる末期がんの実母。

この3人の視点で物語が紡がれます。そしてわからないながらも徐々に心境に変化が。やがてそれぞれに大事なものに目覚め人生の意味を噛みしめる。

いや、読み終わっても十全に理解できたわけでなく、どこかモヤモヤと消化不良なのですが。このもやもや感が読書の醍醐味かもしれない。

主人公〈静人〉も自ら「病気かも」と己の行為を理解してないので、ぼくごときがわかるはずもないですが、安易に賛成反対を言えない物語って位置付け?まあ、実際こんな人が家族にいたら大迷惑ですが。

いろいろ反発を覚える場面もあるし、登場人物のように静人の行動をリスペクトできない、出来ない自分は根が腐ってるのかなと考えたり。

そんな様々な思考が頭の中を渦巻いて夢中になれる本です、お薦めです。