石匠風間ブログ!

読書、音楽、雑学

満員御礼

2015-09-28 | 音楽
今年の深谷フィルハーモニー、定期演奏会もつつがなく盛況のうちに幕を閉じました。これも皆様の温かいお心遣いあってのことと深く感謝申し上げます。指揮の三河先生からも「問題はあるが着実にこのオケはうまくなってる!」とお褒めの言葉もらいましたよ。

実際ベートーヴェンといっても普段から聴いてるひとそんなにいないとは思うんですよ、元来のクラシックファンなら聴くだろうけどそうじゃなければ「英雄」ったって知らないでしょ。だのに800人を超える聴衆が集まってくれる、ありがたいことです。

ところで深谷フィルは普段川本農業トレーニングセンターというところで練習してます、毎週日曜日。ずいぶんと辺鄙な場所ですが、オーケストラを気兼ねなくやる会場って早々ないのですよね、いや容量の問題だけでなく、例えば大型打楽器(ティンパニー)などなかなか置いておけないし、毎週同じ時間をずっと抑える事は公民館では難しいでしょう。

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大型楽器運搬係のぼくは川本から文化会館までティンパニーやら太鼓やら電子ピアノやら無事運んで最後の練習が始まります。ぼくも今回3回めの定演で、それなりに練習してきたし満を持して本番に望んだのでした。

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ところが、どうしたことでしょうw練習の時に出来たところがうまくいかない!「こんなはずでは?」と悔しさを滲ませながら2時間ほどの本番が終わりました。まあ、3年位で自在に操れるほど簡単な楽器じゃないってことか。だからおもしろいのだろうけどね。

(フェイスブックから皆さんの掲載画像を勝手に使用させてもらいました、ご協力勝手に感謝します)


『その女アレックス』ピエール・ルメートル

2015-09-23 | 読書

内容(「BOOK」データベースより)
おまえが死ぬのを見たい―男はそう言ってアレックスを監禁した。檻に幽閉され、衰弱した彼女は、死を目前に脱出を図るが…しかし、ここまでは序章にすぎない。孤独な女アレックスの壮絶なる秘密が明かされるや、物語は大逆転を繰り返し、最後に待ち受ける慟哭と驚愕へと突進するのだ。イギリス推理作家協会賞受賞作。



これは素直におもろい!凄絶なバイオレンス小説だけど、人間の悲哀が胸に沁みる。こんな話を考えつく著者は天才だよ。

外国作家の、しかもフランスを舞台にしてるとなると読みづらいんじゃないかと想像してたがそんなことは全くなかった。スイスイと読み進められるのは刺激の強い展開が次々に待っているからで、キャラ達の魅力とも相まって淀みなく読了できる。

読んでるあいだ、日本の警察もの小説を思い起こしてた。
刑事のそれぞれ偏屈なとことか、上司の融通の効かなさとか、フランスも日本も変わりないってのは、結局文化が違っても人間のやることなんて大差ないのか。

「イギリス推理作家賞」受賞してるらしいが、さほど推理はしてないんじゃないか?どっちかといえば人間ドラマ、というか「社会の暗部をえぐる」系。
それも話しの持って行き方が抜群で、スリルが読んでるあいだずっと維持されるから飽きないんだな。

ちなみに主役である刑事の班長カミーユ、この人がすごくいい!著者の他作品にも登場して「カミーユシリーズ」になってるらしいから、そんな事言われると他のも読みたくなる。

そしてすでに映画化が進んでいるらしい、カミーユは身長145cmの中年男性って設定だがそんな俳優いるのかね。


石屋の仕事

2015-09-20 | 雑記
石屋の仕事、お墓が殆どなのですがなかにはカテゴライズしづらいものもありまして。
久しぶりにうちの変わり種をUPしませう。
久保田氏神様 005       元々は久保田氏神before003
氏神さま。これは変わり種ってこともなく毎年建ててるけど、とてもバランスの良いきれいな仕上がりだったので。

久保田飛び石
飛び石。これもよくあるけど、今回今までと違い大きなサイズ(60cm径)にしたところ見栄えがステキだったので。

深谷商業記念碑 003 深谷商業記念碑 004
深谷商業、記念碑。一昨年建立。定時制高校の閉校に際し建てました、このデザインは当時の教頭先生のアイデアです。

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キャラクター系の依頼も時々来ます。それぞれお墓の中に設置。若くして亡くなった場合が多いです。

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ついでに、おなじみふっかちゃん。絵タイルと立像です。立像は深谷駅南口に鎮座します。


『老人と海』ヘミングウェイ

2015-09-16 | 読書

内容(「BOOK」データベースより)
キューバの老漁夫サンチャゴは、長い不漁にもめげず、小舟に乗り、たった一人で出漁する。残りわずかな餌に想像を絶する巨大なカジキマグロがかかった。4日にわたる死闘ののち老人は勝ったが、帰途サメに襲われ、舟にくくりつけた獲物はみるみる食いちぎられてゆく…。徹底した外面描写を用い、大魚を相手に雄々しく闘う老人の姿を通して自然の厳粛さと人間の勇気を謳う名作。



30年ぶりに読んでみた!当時深く感動した名作、時を経ても古びないのは名作たる所以。

しかしなんてシンプルな設え、それなのにこの深み!
ストーリーも内容紹介で全て明かされてるくらいに単純w登場人物はほぼ老人と少年の2人のみ、少年は最初と最後だけだし。

メタファー(隠喩)としての物語を意識したのはこれが最初だったなあ。

この老人とカジキマグロとのやりとりが何を訴えるのか。何を伝えたいのか?
そんなふうに若者のぼくは考えたっけ。
今読んでも同じように考えこむ、人生とはつまるところこんな描写に集約されるのか。

孤独ななか大魚に立ち向かう老人は、何かに執着する人の営みを幾分ドラマティックに現しているのかな。

自分の船よりも大きなカジキを相手に全身ボロボロになりながらも闘志を無くさない老人の生き様は、じわじわと伝わってくるものがある。かっこいいし美しい。

短い話だけど手放せない大事な1冊です。


欠史八代(歴史覚書き)

2015-09-12 | 歴史
日本の天皇制は色んな意味で特殊で世界に類例を見ないことはご存知だろう、今上天皇は125代目という異例の系譜を積み重ねている。政権交代すると必ず王が殺されるのが他所の国では普通だから。

だがしかし、2代目から9代目まではその存在を疑われている、「欠史八代」とはこの8人の天皇のことで最初に疑問の声を上げたのは歴史学者・津田左右吉。
戦前のことだから不敬罪に問われのだとか。

初代天皇は神武天皇、「神武景気」とか「神武以来の天才」とか、そういう使われ方をしてるので知ってるかな。

で2代目=綏靖、その後、安寧・懿徳・孝昭・孝安・孝霊・孝元・開化と続く。
戦前・戦中に教育受けた人はこれを「じんむ、すいぜい、あんねい、いとく・・・」って諳んじてたんだと!

それぞれ帝紀や日本書紀に名前・年齢や在位期間などが記録されてるが、活動記録が一切ないのがこの欠史八代の王たち。しかもとんでもなく長生きだったり初代神武と10代崇神の称号がどちらも「ハツクニシラススメラミコト」(=初国統治天皇)だったり、要するにかなりいい加減。

これらの8人の天皇は中国の革命思想(辛酉革命)に合わせることで、皇室の起源の古さと権威を示すために偽作したという推測がある。
辛酉とは干支のひとつで中国では革命の年とされる。21回目の辛酉の年には大革命が起きるとされ、日本では聖徳太子が政治を始めた601年が辛酉の大革命の年である。すると21×60=1260よりAD601-1260=BC660(西暦0年はない)が神武天皇即位年と算出される。この1260年間を9人の天皇で按分して・・・

ああ、こりゃだめでしょ、ウソでしょ。

って思うでしょ?

でも世の中には「いや、実在したのだ!」って言い張ってる人もいるのだとかw

不自然な長生きは、古代において半年を1年と捉えていたという説があり、これに則れば自然になる。
初国統治天皇も王朝交代があったと考えればそれぞれの王朝の初代と考えられる。まあそうなると125代皇室が繋がってたわけじゃなくなるのだけどね。

3王朝交代説ってのもあって諡(おくりな)に「神」が入っている天皇=神武・崇神・応神はそれぞれ別王朝の初代だと。王朝を起こしたから「神」なんだと。なるほど。

まあいずれにしろ欠史八代について、全くのデタラメとも思えなくなってきた。血のつながりはなくても何らかの存在があってそれを記録したと考えるほうが素直な解釈だしね。

といったわけで、日本史面白くて仕方ない。


『ホワット・イフ?』ランドール・マンロー

2015-09-06 | 読書

内容(「BOOK」データベースより)
人類総がかりでレーザーポインターで照らしたら月の光は変わる?お茶を必死にかき回したら沸騰させられるか?どのくらい高い空から落とせば、その熱でステーキが焼けますか?元素周期表を現物の元素のキューブを積んで作ったら何が起こる?こうした突拍子もない思いつきも、理系思考をこらして検討すれば、そこからは驚くべき結論が導き出され、何よりその結論は笑える!元NASAの研究者が物理と数学とマンガで読者の疑問に全力を挙げて答える、人気のマンガ科学解説サイトを書籍化したベスト&ロングセラー、待望の邦訳。


これはまた愉快でかわいくて微妙な本だなあw
まあとても楽しかったのだけど、いささかふざけ過ぎな感もあって。もちろん元研究者だけあって科学的裏付けはしっかりしてるのだけどね。

興味深かったトピックは幾つかあるのだけど、

<光速の90%の剛速球をバッターに投げたらどうなるか?>
これが最もエキサイティングだったな。「そんなことできるものか」と拒絶せずにまじめに答える事自体が面白いw

つまり「どうやってそんなスピードのボールを投げるか」は不問として話を進める。
1ナノ秒ごとに何が起こるか検討したという馬鹿げた質問への真摯な態度ってのがこの本の売り。

答えとして、ボールが進むところにある空気の分子が避けきれず分子同士が衝突し核融合が起こる、それはガンマ線を発生させ核融合生成物をばらまく。これにより周辺の空気は高温プラズマ化し膨張。

少し離れた場所から見ていればプラズマ雲が太陽より明るい光を放つ、次に火の玉が膨張、やがてキノコ雲が空へと伸びていく。その後轟音が起こり周辺の家屋・木々をなぎ倒し1.5km以内にあるものは全て消え去り、あとには大きなクレーターが残るのだとか。

速度というのはエネルギーだから物理法則に則ればこうなるのだろう。
他にも
<星の王子さまがいたような小惑星がじっさいにあったら、居心地はどう?>とか
<深海底に穴をあけたら、海水が抜けるにつれて地図はどう変わる?>とかね。

子供の時に抱きそうな疑問をまともに取り合ってとことん追求する、その姿勢は尊敬に値する。
物理・数学の専門家なのに公式などをほとんど載せてないのもいい!取っ付き易いという意味では文系の人でも楽しめると思う。そういう意味でお薦めです。

ただ、紹介に「漫画科学解説」ってあるけど
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この程度のマンガなのであしからず。


『ソクラテスの弁明・クリトン・パイドン』プラトン

2015-09-03 | 読書

内容(「BOOK」データベースより)
自己の所信を力強く表明する法廷のソクラテスを描いた「ソクラテスの弁明」、不正な死刑の宣告を受けた後、国法を守って平静に死を迎えようとするソクラテスと、脱獄を勧める老友クリトンとの対話よりなる「クリトン」。ともにプラトン(前427‐347年)初期の作であるが、芸術的にも完璧に近い筆致をもって師ソクラテスの偉大な姿を我々に伝えている。


『船に乗れ!』に頻繁に引用されるので久しぶりに読んでみた。確か大学のときこれで小論文書かされた記憶。

30年ぶりに開いた頁には、熱心に波線やら二重線やら引いてあって、全く覚えてないが当時は必死に読んでたのかな。

まあ内容紹介の通り、ソクラテスは不正な死刑宣告を受け、抗うことなくそれを受け入れ己の正義を通すのだけど、町の物知りを自認する人を片っ端から論破して恨み嫉みから訴えられた結末。
ぶっちゃけこんな屁理屈ジジイは嫌われるだろう間違いなくw

訳文のせいかそれとも古代ギリシャ当時の言い回しなのか、いちいち回りくどいことこの上ない。弁論家として正確を心がけ論理的に齟齬のない発言を目指せばこうなるのか。それにしたって
「いいかね、クリトン、それには私なりの深い考えのあってのことなのだ、今からその自説をかみくだいて説明したい。それはつまりこういうことなのだよ。~」

と、一事が万事こんな調子で始めるのでイラつくw
で、どんな優れた哲学を展開するのかと思えば結局「正義を貫くことが神への道に通ず」みたいな宗教がかった結論ばかりで。

いやまあ、当時の時代背景というのも鑑みなくてはならないのだけど。それはつまりこういうことなのだよw

古代ギリシャのこの時期は「衆愚政治」と言われる民衆支持の多寡で方針を決めていたとか、多数決の原理というのは一見正しいようだけど、声の大きい人の意見が通りやすい面もある。だからソクラテスは大衆に人気の高い知識人政治家に論争をふっかけ、尽く論破してしまったわけ。

結果、プラトンなど若者の絶大な支持を受け時代の寵児となった、論破されたほうは面白く無いから訴える。にもかかわらず自己の所信を力強く表明したもんだから死刑にされちゃった。

弟子や知人が金を積んで許しをえようとしてもあるいは脱獄を勧めても、一切受け付けず「ここで法を破るのは今まで自分を守ってくれた国家への裏切りだから」と。

『パイドン』のなかでは死後の世界、魂の不滅を論理的に証明せんと熱弁するのだけど、21世紀人にはいささかうさんくさいかな。
もし身近にこんな人いたらたまったもんじゃないけど、本で読むぶんには愉快な爺さんです。