石匠風間ブログ!

読書、音楽、雑学

『地球移動作戦』山本弘

2016-02-28 | 読書


内容(「BOOK」データベースより)
西暦2083年、超光速粒子推進を実用化したピアノ・ドライブの普及により、人類は太陽系内のすべての惑星に到達していた。観測プロジェクト“クリーンアップ計画”により発見された謎の新天体2075Aの調査のため、深宇宙探査船DSS‐01“ファルケ”が派遣される。船長のブレイドをはじめとする搭乗員たちによる観測によって、この星は24年後に地球に迫り壊滅的な被害をもたらすことがわかった。迫る厄災の報を受けた地球では、様々な対策案が提唱される。ブレイドの姪である12歳の天才少女・風祭魅波はACOM(人工意識コンパニオン)のマイカとともに、天体物理学者である父・良輔が発案・提唱した驚くべき計画の実現を決意するのだった…。著者入魂の本格長篇宇宙SF。



ええ、ご察しの通り、最近は「山本弘」漬けです。

短編のふざけた作風は惹かれなかったが、『アイの物語』に感動してからは片っ端から読みまくっている。本作も上下巻の長編大作でとことんSF好きによるSFファン向けの傑作!

ホーガンの『揺籃の星』を彷彿とさせる地球破滅系のお話です。

この話の中では「ACOM(エイコム)」と呼ばれる人工知能が人々の必須アイテムとなっていて、さながら誰でも秘書を持てる世界みたいな、ちょうどスマホが意思を持ったような感じかな。
また網膜や内耳に微細なコンピュータをインプラントして見たり聞いたりした記憶を保存したり分析したりが自在に出来て。

さらに若返り手術が当たり前で平均寿命は180歳位。小惑星から稀少資源を採取できるから食糧問題もエネルギー問題も克服、となると国家間・民族間の諍いも激減!
近未来がいいコトずくめの夢の世界に描かれている。

そんな都合よくいくのか?基本楽観派のぼくとしては案外この話の詳細って実現するんじゃないかなって気もするのだけど、楽観過ぎかな?ここまで事細かに数値的な描写をしてるとまんざら夢物語とも思えなくなってくる。そんな理想社会に地獄絵図が出現するわけで、それも大いに有り得ることも含めてバカに出来ない未来予想です。

しかし唯一辟易するのが著者の幼女趣味でwなにかとロリコン的ディテールが出てきて、本の表紙にしてもそうだけど、この部分だけ共感できないです。それを加味してもまだ面白いから困る。

まあ個人の趣味だから難癖は付けないけどさw


映画『オデッセイ』

2016-02-25 | テレビ・映画・芸能
観てきました、殊の外大きな感動!

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すごくわかりやすい単純なストーリーです。良くも悪くもハリウッド的。

ただし、その内実は天文物理のオンパレードで、登場人物がみな物理用語で対話するようなシーンが多く、そしてファンタジックな要素は少なくてとても現実的に言わば「黙々と仕事をこなす」ような映画です。ここらで好き嫌いが別れるかも。

SFオタクにはたまらない、最初から最後まで痛快な映画です。
実務的科学的クライシス映画というと『ノーグラビティ』に似た雰囲気があるような、あれもすごい映画だった。
主役演じるマット・デイモンが最初は筋肉質だった体を後半にガリガリに変えてくるのも作りこんでる感が強くてリアリティを生みます。

最後クライマックスは容易に筋が予想できるのにもかかわらず、泣かされてしまった。もう怒涛の勢いで無理やり泣かされるw

ただ、物語途中で不意にBGMにデビッド・ボウイ「スターマン」がかかるのですが、この瞬間
「あ、デビッド・ボウイ死んじゃったんだなあ」と偲ばれて、その偉大さを再認識し関係なくウルウルきちゃいました。


『トンデモ本の世界U』 と学会

2016-02-21 | 読書

内容(「BOOK」データベースより)
トンデモ本とはなにか?UFO、超科学、超古代史、大予言、ユダヤの陰謀…著者は「衝撃の真実!」のつもりだが、はたから見れば大笑いのトンデモない本のことである!
ペンタゴンにボーイングは突入しなかった?モーツァルトを32倍速で聴くと何が起きる?太平洋に広がるドラゴン・トライアングルの正体とは?結成から16年、と学会が尽きることなきトンデモを笑い飛ばす。



内容紹介がすべてなのだけど、これがいちいち笑えるんだw「こんな本よく出版できたなぁ」という驚愕もあるし。

著者である「と学会」というのは山本弘が会長を務めた(去年退会)「世間のトンデモ本やトンデモ物件を品評することを目的としている」団体で、数多くのトンデモ本シリーズを刊行している。

「モーツァルトを32倍速で聴くと頭が良くなる」なんていう内容の本が本当に発売されてたのかと思うと唖然とするが、ヘタしたらぼくだって引っかかってたかもしれないし、笑ってばかりいられない。

10年位前『神々の指紋』にはかなり真剣にハマったしね~。
思い起こせば、ユリ・ゲラー、ミステリーサークル、ノストラダムスw  散々騙されてきたものよ、、、。
ちょっとアカデミックな言葉で飾られるとコロッとイっちゃう、騙されやすい質でして。

さて、本書で様々なトンデモ本を紹介されるうちに段々とおっかなくなってきた、その著者に大学教授とか一流企業の経営者とかもいて、こういう世間から信頼厚い人達がマジメにトンデモを主張するのってとても危険だと思う。
どんなアホみたいな学説も権威付けされるとそれなりに聞こえてくるってもの。

だから、こんなふざけた団体名で購入が恥ずかしい表紙でも、とても価値のある本で意義の高い活動をしていると思うわけです。

中身はと学会の会員が数人で分担して書いているが、山本弘の文章が一番面白い、エセ科学をただ暴くだけじゃなく文章で笑い飛ばすことでインパクトが強まるしトンデモ本の存在価値が一気に高まるような。小説家として成功しているのもわかる。


音楽に癒してもらおう

2016-02-18 | 音楽
大概の曲はネットで聴ける、便利な時代になったもんですね。
ただ、お手軽すぎて睡眠を削ってでも聴き過ぎちゃうっていう事態にもなりかねず、自制が必要。

最近はややクラシックがメイン、なのだけど、今練習してるベートーヴェンの第9とか秋にやるブラームスとかなにせ長いんですよ演奏時間がw

で、聴き疲れちゃったような時こういうのが心に沁みるのです。


目覚めよ、と呼ばわる物見らの声

CMなどで使いまわされてメロディーは大抵の人がご存知でしょう。
でもあらたまって聴いてると、なんというかとても素朴な音使いなのに妙に心に響く気がするのですが。

たくさんの音を重ねて作る複雑な音楽にはまた別の良さがあるのだけれど、こんなシンプルな演奏シンプルな楽器で聴かせるって考えようによってはとても偉大なことじゃないかな?いや、それは人によって捉え方違うけれどもね、少なくとも300年近く伝え残ってきたのはそれなりの価値があるでしょう。

皆がどう思うかわからないけれど、ぼくには深い癒やしをもたらしてくれます。

ついでに癒し系のバッハをもう一つ

羊は安らかに草を食み

これもね、自分が羊になったような錯覚の中安らぐんです。特に疲れてる時が効果大。

どちらもカンタータつまり教会音楽だけど、キリシタンじゃなくても感動できるのってこの音楽の持つジャンルを問わない普遍的なパワーだよなあ、と思いました。


『オケ老人!』荒木源

2016-02-14 | 読書

内容紹介
平均年齢世界最高齢(?)のアマオケ交響曲!
老人ばかりで構成された平均年齢おそらく世界最高齢のアマ・オーケストラ「梅が丘交響楽団」(略称・梅響)に、ひとりの高校教師・中島が間違って入り込んでしまったところから物語は始まります。
彼は、全く演奏など論外のはずの土下手くそな「オケ老人」たちのなかで勿論一番若く、力も備わっていると目され、いきなり指揮者になってくれと皆から懇願されます。
その後、彼が本当に門を叩きたかった同じ町にある人気のアマオケ「梅が丘フィル」(略称・梅フィル)との確執、梅フィルの怜悧で完璧主義のコンマス・大沢が熱望するロシアの人気指揮者・ゴルゴンスキーの来日騒動などを経て、日本・ロシアの国家機密の情報漏洩にまで話は大きく展開していきます!



アマオケに関わる者として読んでおくかと手にとったが。なんだこれ?
オケの練習風景とかアマオケの厳しい現状とか、首肯できる部分も多いのだけど、とにかく都合のいい展開がどうにも鼻につく。
万城目学の劣化版という感じ。

主人公が奮闘してずっこけるというパターンが繰り返されるのだけど、ちっとも笑えないし。
老人を小馬鹿にしたような描写も気に入らないし、なにしろボロボロだった演奏が突如うまくなるって、そんな調子よく事が運べば悩みのない世界だろう。

ところが、この話今年の秋にドラマ化されるらしい。

確かにテレビドラマにするなら小気味の良さがあるかも。演奏シーンをしっかり再現し名曲の数々を聴かせてくれるなら推したいね。アマオケ文化の啓蒙という観点では応援すべきだろうが、如何せん、この原作に魅力を感じられないぼくとしてはなかなか素直になれないね。

そしてロシアの諜報機関を絡ませて進行するストーリーって、いまいち蓋然性を感じないし、無理があるし。

ひねくれ者のぼくにとっては以上のような噴飯物の小説だが、ドラマ化されるのだからそれなりに面白いのだと思いますよ。


老後は一人暮らしが幸せ

2016-02-11 | 地域・暮らし
「老後は一人暮らしが幸せ 家族同居より生活満足」
yahooニュース01/21

この記事は考えさせられた。
幸せといってももちろん条件付き、当然適度な健康といくらかの仲間、そして最低限の生活力は必須だろうけど。

特に自分のような引きこもり傾向の強い人間にはとても当てはまる気がする。

たとえ血がつながっていようと誰かに気を使って生活していくのはそれなりのストレス、これをストレスと思うか楽しみととらえるか、人間力というかコミュ力が試されよう。ぼくはダメw
かみさんは逆だろうな、人としゃべってないといられない人だから。

ただ世の風潮として独居老人に対して手厚い社会保障に向いている傾向あるから、今後ますます一人で生き易くなるのかも。

宅配はあらゆる分野に波及しつつあるし、住民票とかお固いものもコンビニで済んじゃうんでしょ、SNSのみのコミュニケートはちと物足りないけれど、2~3人の仲間が身近にいてくれればね。

そういえば「孤独死は不幸じゃない」という主張もどこかで読んだ。それはそうかも、死んじゃえばわかんないしね。
問題は孤独か家族に囲まれてるかではなく、苦しんで死ぬかポックリ逝くかでしょ?

昨年亡くなった俳優の阿藤快みたいに生涯現役で突然寝たまま逝くのが理想ですなぁ。
50直前にしてすでに「老後」に思いを馳せるのでした。

追記: 件の記事はすでに消去されてました。ヤフーにしてはやけに早い消去、クレーム入ったかな?


『宇宙はくりまんじゅうで滅びるか?』山本弘

2016-02-07 | 読書

内容紹介
宇宙の彼方へ捨てられた、倍々に増えていく「くりまんじゅう」はその後どうなるの?トンデモ本から世界は見えるか?SFから人生は学べるか?くりまんじゅうが5分ごとに2倍に増えたら、宇宙はどうなるか?
 作品の裏話、疑似科学やトンデモ本の話、怪獣映画や変身ヒーローものの話、SFの話、メディアや社会情勢の話などなど、現在までに書かれたあとがきや解説、エッセイを再録。また、これまであまり語らなかった私生活についても書き記した、初のエッセイ集。


これは楽しい!昨年『アイの物語』で強く惹かれた著者の山本弘は以前から小説やブログを愛読していた、こういう「自分と気が合う」作家がいるとうれしくなる。

さて題名の「栗まんじゅう」問題は、知る人ぞ知るマニアックな物理学テーマで、元はドラえもんの道具「バイバイン」によって5分に一度倍になる栗饅頭を考察したもの。
例によってのび太が欲をかいて栗饅頭にふりかけて、それを知ったドラえもんが大慌てで増えつつある饅頭をロケットで宇宙へ送る、という顛末。

子供の頃、なんとも思ってなかったこのエピソードには恐ろしい事実が隠されている。

「倍に増える」ってのは凄いことで、5分で倍増を繰り返すと7時間で地球より大きな栗饅頭ボールができる!9時間で太陽より大きくなり18.5時間で銀河と同等(半径5光年)、23時間で現在考えられている宇宙をうめつくす(半径130億光年)。。。!

借金の複利計算を彷彿させるw

ただ、以上の計算は重力や光速度限界を無視している。つまり地球ほど大きくなったら重力で内側に潰れていくし、9時間で光速を超えてしまう!質量のある物質は光速を超えられない。つまり物理法則に則るなら実際は光速になる前に成長速度は鈍ると。

また、バイバインをかけた饅頭をのび太が食べても体が爆発してないことから「形が崩れると効力も止まる」という理解のもと、重力で潰れたボールの内側は増えずに表面のものだけが増えるとするとさほど脅威ではなくなる、という鋭い考察w

ああ、また自分の好みのマニアックな文章になった、興味ない人には退屈でしたね、ゴメンナサイw

でもこの手の思考実験が大好物でして、この他にもウルトラマンの話とか書きたいこといっぱいあるのだけど、また別の機会にします。いずれも驚きと笑いにあふれたエッセイです。

こーゆーのが好きな人には大いにオススメです!


ロボット対人間

2016-02-04 | 科学
去年は人工知能やロボットに対する本を色々読んで色々と刺激された。
年々世の中に「ロボットに仕事を奪われる」とか「いずれ支配される」とか、そういう不安感・恐怖感が強くなっているのがわかる。

これらはいずれも機械対人間という対立構造でとらえた場合なのだけど、ことはそんなに安直じゃないと思うのです。

たとえばパラリンピックの記録が徐々にオリンピックの記録に迫ってきているのをご存知でしょうか?

ロンドン五輪100m走だと9秒63(ウサイン・ボルト)に対し
パラリンピックのピストリウス選手10秒91、その差1秒28!
遂にここまで来ているのです。

そりゃ当たり前かもしれない、義肢義足はどんどん最新技術や素材をつぎ込んで進化しているのだから健常者を凌駕するのは時間の問題でしょう。

健常者より障害者のほうが早く走れるのだとすると、、、いささか興ざめしませんか?「いくら世界王者になっても障害者にはかなわない」という構図ができたら今までのように五輪を楽しめるのか?

この「機械の体」に人工知能が組み合わさるとロボットということになるけれど、現時点では技術的に簡単ではないでしょ、それより機械と人間のハーフ=サイボーグのほうが手っ取り早いし合理的な気がします。

人工知能だってそう、現在の我々はPCやアイホンなどで外部記憶装置に頼っているわけで、これもハイブリッドと言えなくもない。
まあ、そう言い出したら入れ歯だってメガネだって補聴器だってサイボーグと言えなくもないかw

要は人工知能に意識を持たせるっていうかなり時間もお金もかかる技術を待つ前にすでに我々は人工知能と混在化しつつあるのではないかと。

昔は友達の家の電話番号結構覚えてましたよね?今や全部携帯の中。読めない字があったらすぐ携帯で調べ、場所を知りたい時も携帯で解決。これって昔の人からすれば超人類に見えるかも。

グーグル・グラスなどスマホのウェアラブル化も進みつつあるし、近い将来頭の中にCPUが埋め込まれるのは確実ではないかと予想します。もちろん派手な外科手術なしに注射とか錠剤のような形で取り込めるみたいな。

つまり「人間対機械」という構図は成立せず、混在化していく、どこまでが生身の人かどこからがサイボーグかなんて区別はできないくらい。

そう考えるからぼくは未来を楽観視しているのです。