ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

第20次支援活動<気仙沼市・震災3年>(その2)~気仙沼・北野神社

2014-04-01 09:41:32 | 能楽の心と癒しプロジェクト
北野神社は天神社で、気仙沼駅からもほど近く、JR大船渡線のすぐ北側にせまった山の頂に鎮座しています。面白いのは気仙沼駅前からのびる道路から参道に入ると小さな鉄橋があって、参詣者はこれによって大船渡線の線路をまたいでから、はじめて山上へ続く石段に取りかかることになります。社務所に掲げられていた明治時代の気仙沼市内の絵図を見ると、山の下の道路と市街は昔からあったものです。そこに明治期に鉄道がひかれたため、線路は道路と山との間に敷くしか方法がなく、この線路が参道を分断してしまったために参詣者用の鉄橋が架けられたものでしょう。山頂に鎮座する神社に参詣するには、かつては鉄橋を渡ってから急な石段を上るしか方法がなかったようですが、今は山をぐるっと迂回して住宅街の中を通る車道がありました。





境内に入ると、まず目に入ってくるのは真新しい神楽殿。昨年新築されたばかりだそうです。





そしてその奥にある拝殿と本殿。こちらはぐっと時代がある建物で、趣もありますが、直線的で偉容というのがふさわしいです。丹塗りの彩色もよく残っていて、そうして正面の縋破風の下から飛び出すかのような阿吽の龍にも彩色が少し残っていました(あとで伺ったのですが、石段にある狛犬の阿吽と方向が一致していないそうで、研究者の説によれば、社殿はこの神を信仰した鮎貝氏によって向かいの山から移築されたのではないか、とのことでした)。





この北野神社は桜の名所として有名だそうで、この4月には桜の下で能を奉納することになっております。この日はご挨拶と下見を兼ねて参上することにしていました。宮司さんのご都合で打合せは今回の活動が終了した最終日に ぬえが参上することになっていたのですが、この日はまず みんなで下見のつもりで参上しました。。が、偶々 宮司さんもご在宅で、社務所にて親しくお話しさせて頂くことができました。

新しい神楽殿は、震災前から建てる計画があったのですが、震災によって中断になってしまっていたそうです。その後はこちらの神社もボランティアを受け入れて、その活動の拠点のひとつになったり、復興のために尽力しておられたそう。その折々に、土台だけ作って放置してある神楽殿を見た人々から「これは何ですか?」と質問を受けた宮司さん。。面白い方で、津波で流されたんです、なんて冗談も言っておられたそうですが、やがてそれらの人々の中から ぜひ神楽殿を完成させよう、という機運が巻き起こって、全国から寄付も集められたのだそうです。

宮司さんとしては震災の被害があった気仙沼の氏子さんたちから建築の寄付を募るわけにもいかずに中断していたのでしたが、全国から寄付が集まり始めると、氏子さんの方からも率先して寄付が集まるようになり。。こうして昨年、立派な神楽殿が完成したのでした。

この真新しい神楽殿で、しかも桜の季節に奉納させて頂けるのはプロジェクトとしても望外の幸です。伺えばこちらにも独特な法印神楽が伝承されているようで、それも拝見したいと思ったのですが、こちらの神楽は市内のいくつかの神社の宮司さんも携わる大規模なもので、なかなか上演の機会はないのだそうです。いつか能と競演させて頂きたいな~。

こうして思わず4月の奉納の打合せを済ませることができまして、市内に戻り、復幸小町仮設商店街にあるおなじみのカフェ「エスポアール」で昼食を頂いて(をっ、コンビニ弁当じゃない食事だ!)、それから「気仙沼災害FM」の生放送に出演するために松岩地区に向かいました。