ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

『鵜飼』終了しました(その5)~神鳥の周辺

2006-02-20 01:51:37 | 能楽
またまた幽玄堂主人さんへのレスを書いていたら長文になっちゃったので新規記事になりました。。すみません。。ぬえも混乱しているので、あえてレスは不要ですので。。>幽玄堂さん

あ、ありましたね『鵜飼』のほかにも鵜を扱った曲が。
『鵜祭(うのまつり)』。たしか廃曲ではなく、金春流では現行曲だと思います。。もっともさすがによく上演される人気曲ではなく、ぬえも国立能楽堂の主催の企画で出されるのを番組で拝見した程度だと思いますが。。

番組で拝見しているのに、不勉強な ぬえは未だ実演に接していません。脇能で、曲の終わりの方で奇瑞として鵜が出る、それも子方が鵜の役を演じる(!)という程度は知識としては知っていましたが。。そこでちょっとこの曲の梗概を調べてみたら。。ええっ? 後シテが女神なのに「楽」を舞うんですか! う~ん、少なくとも観世流で能を勤める身としてはそれは考えられない。。

観世流では女神の役は「序之舞」か「中之舞」、または「神楽」を舞うもので、「楽」はもっぱら男性の舞、という認識です。。女性の役で「楽」を舞う曲もないわけではないのですが、『梅枝』『富士太鼓』の二曲に限られます。でもこの二曲はそもそも脇能ではないし、もっとも大きな違いはこの二曲には太鼓が参加しない点です。しかも『天鼓』のように小書がついて演出が変わる場合に太鼓が入るという事もない。大小物の「楽」は普段聞き慣れているあの華やかで楽しげな「楽」とは全然雰囲気が違って、ちょっと淋しさを湛えた舞で、伶人の夫を失った妻がその夫を追慕して舞う舞楽、という設定にはまことに似つかわしいんですが。

話がそれましたが、『鵜祭』に登場する鵜の役はたしかに神鳥なのでしょうね(実演に接していないので確信はないのですが。。)本当に、どうして神のお使いの首を縛って魚を捕るような職業が古来からあるのだろう。どうして鵜なんだろう。。? んー、幽玄堂主人さんばかりでなく ぬえも、もうここまで来たらお手上げです。。いつか調べてみたいものだが。。

ところで『鵜祭』の物語の舞台は能登・気多大社だそうですが、「気多明神」と呼ばれるご祭神は大国主命のはず。ははあ、やっぱり実像は女神ではない。。なんと言っても出雲大社のご祭神で、「因幡の白兎」の伝説で有名な御仁(ご神。。か。。)です。どうも『三輪』や『龍田』とも通ずる難しい神道解釈がこの曲には流れているようですね。

鵜、と言えば、そういえば神武天皇の父。。というか能楽関係では『玉井』のシテ(豊玉姫)とワキ(火々出見命=山幸彦)との間に生まれた子、と言った方がわかりやすい鵜ですが、その神の名前「ウガヤフキアエズノミコト」も表記は「鵜葦草葦不合命」だったはず。産気づいた豊玉姫のために火々出見命が浜辺に産屋の建てるのに、その屋根を葺くのに鵜の羽を使ったがそれが葺き終える前に生まれた子で。。という話もあるし(あれ。。?『鵜羽(うのは)』って曲もあったような気が。。)

ああ、混乱してきた。このあたりは九州のお話なので、このへんの系図なんてどこかにあるんだろうか。。と思ったら、やっぱりありました。

http://miyazaki.daa.jp/himuka/sinwa01.htm

なんでも、鵜葦草葦不合命はその系統の中で穀物に由来しない名前を持つ唯一の神で、それもナゾなのだそうです。

えっと、最後に『鵜祭』のご祭神を祀る「気多大社」はHPがありました。
興味がおありの方はご覧に。。なっても。。良いのでは。。ないかと。。

http://www.keta.or.jp/

きもちもキレイにしなくちゃ! (;_:)