ビオトープ考Ⅱ

2010年04月07日 | ビオトープ





❹ 地域全体のビオトープ化



ビオトープの輪を地域へ広げることにより、生
きものの種類や個体数が増え、生態系ピラミッ
ドの裾野が広がる。このことはヒトにとっても
蚊やハチなどの不快生物も減少することを意味
する
。さらに、環境づくりや自然観察会などを
通じ、地域のコミュニケーションが深まり、生
きるための技を子ども達に伝える環境学科にも
貢献する。「③誰でもどこでもビオトープ=自
然再生を!」で示した提案は、個人の土地や建
物のほか、都市公園をはじめ小中学校や公民館、
病院、市町村役場などの公共施設に対しても同
じように対応できる。国や都道府県が管理する
河川には、多自然型川づくりとその運営を積極
的に働きかけることも提案される。わが家にく
わえて、身の回りにすばらしい自然環境を取り
戻し、次代へ残していくためには、個人から地
方自治体、国が管理する河川など、地域全体を
ビオトープ化することが主要である。公共空間
を個人1人でビオトープ化し維持することは、
労力的にも、経済的にも困難である。地域の仲
間を募り、管理者との協議を縦続し地域に愛さ
れる自然環境を修復していくことが大切である
(養父志乃夫著『ビオトープづくり実践帳』)。

【注釈】

「ビオトープの輪を地域へ広げる」→「・・・」
→「
蚊やハチなどの不快生物も減少することを
意味する」。何か裏付けデータでもあるのだろ
うか
。地域に広げるて、不快生物の大量発生し
た場合、殺虫剤でも使うのか。使うとしてそれ
は「化学合成物」がだめで「天然物質の抽出物」
なのかの議論になるというのだろうか?



Ⅱ ビオトープの基本

❶ 野生の生き物を呼び戻す方法

(1)「食う。食われるJ関係=自物連韻で成り
 立つ生物のつながりを大切にする

地球上には、私たちが行日お世話になっている
経済の北のほかに、水と上、大気を基礎として
動植物同士の「食う 食われる」という関係=食
物運鎖から成り立つ生態系の性がある。健全な
大気と水、食料を入手し、豊かな人間社会を持
続的に維持するために、この掟を守る必要があ
る。
生態系は、動植物を中心とした食物連鎖
もとに成立する
。土には落葉落枝や動植物遺体
を分解し、養分に還元する土壌生物が生息する。
森林や草地の植物を生産者と呼び、土壌生物が
作った養分と太陽のエネルギー、水、二酸化炭
素を使い、植物体である炭水化物に加え酸素、
水を生産する。生産者が作る酸素は、全生物の
呼吸に不可欠である。生産者の植物体を食べる
ことで多数のバッタやチョウ、ノウサギ、シカ
などの草食生物が生活できる(一次消費者)。こ
れらを餌ににカマキリやトンボ、アシナガバチ
などの肉食生物が生活する(二次消費者)。一次
消費者や二次消費者を食べ、カワセミやツグミ
などの鳥類が生活できる。さらに鳥類や小型野
生獣を捕食するタカやキツネなどの肉食鳥獣が
生存でき、ビラミッドの頂点に位置づけられる
(高次消費者)。
土壌基盤を土台に生産者や一次
消費者の個体数、現存量、種類が多いほど、ビ
ラミッドの祈野が広く、そこで養いうる動植物
の現存量、種類が多くなる


【注釈】

「動植物の種類の増加→やがて均衡→人間にと
って快適環境」という仮説と「動植物の種類の
増加→やがて均衡→人間にとって不快環境」と
いう仮説
の違いは何かという命題が残る。



(2)ビオトープネットワークによる生物の自然定着

森林や草地、水域を含む広大な緑地、例えば東
京都心では皇居の自然環境などのようにすでに
多様性に富む動植物が安定して生息する緑地を
拠点ビオトーブと呼ぶ。もちろん白神山地や釧
路湿原などのような多様な生態系を育む緑地も
拠点ビオトープである。再生したビオトープに
棲みつく生物は、拠点ビオトープを基点に地域
のビオトープネットワークによって自然定着す
る種群による。ネットワークは生物が移動する
ための「道(回廊)」になる樹林や草地、溜地群、
河川、街路樹、庭や外構の植栽などの緑地を指
す。飛び石状に点在するものから連続している
ものまで形態は様々である。生物の種群によっ
て求める「道」の環境構造が異なることが多い。
地域の小川などに生息するメダカなどの魚類や
タニシなどの貝類などは、水系に大きな段差な
くビオトーブと小川がネットワークしていない
と自然定着できない。これらは、人為的に導入
するほかなく、採取する範囲は、地域の環境に
適した個体群が生息する同じ流域に限定する。
採取する個体数は自生地の個体群にダメージを
与えない範囲とする。



❷ 仲間づくりと活動場所の探し方

(1)仲間作りに適した既設の活動組織

インターネットのホームベージや地元市町村な
どの広報誌、里山保全や田んぼの学校などの書
籍を探し活動情報が得られたら、連絡を取って
行事やイベントに参加してみよう。市民参加に
よる里山づくりが行われている。まずは、既設
の活動場所を深し、そこをベースとして仲問づ
くりをしながら新たな活動場所を深すのが無難
である。活動の具体例や組織の運営方法などは、
進士五十人ほか編著(2000)「生き物緑地活動 を
はじめよう一環境NPOマネジメント入門― (風土
社)」などを参照のこと。

❸ 生きものの生息環境と見分け方



動植物の生息環境を計画し、設計、施工するた
めには、主な種の生活環や選択する環境条件を
把握しておく必要がある。動植物には、シオカ
ラトンボのように幅広い環境条件に生息できる
ものから、ハッチョウトンボなどのように限ら
れ条件にしか生息できない種があり、種類毎に
選択性に幅があることを理解しておく。また、
形成したビオトープに何が定着したかを確認す
るためには、主な種を見分ける力が要求される。
この同定作業では、専門家への問い合わせはも
ちろんのこと市販の入門書的な図鑑にある写真
や絵を参考に実物との照合を繰り返し、解説記
事との整合性を確かめ慣れることが大切である。



(1)生息環境

生息環境が在や属などで異なるのは、生物が互
いに強い競合を避けるため住み分けしていると
も理解される。同じチョウでも種や属毎に幼虫
の食樹や成虫が花蜜を得る際に選択する花色が
異なることが多い。



野鳥の見分け方

形態、鳴き声やしぐさ、習性、生息環境が見分
ける時のポイント。セキレイは水辺や裸地など
地上で採競することが多い。メジロやヒヨドリ
は茎葉の虫、果汁や花密にも餌にするコケラは
立木の幹上をつたい樹皮裏や材中の虫などを餌
にする。

(2)見分け方

図鑑は、普通、植物では開花個体、生物では成
体の絵や写真を掲載する。これでは花のない時
期や小幼虫の同定には不都合。同種でも色彩や
形態に一定幅がある。同属生物ではよく似て見
分けにくい種も数多い。このため次の①~④が
参考になる。

①最初は給本を活用しよう。
②学術図鑑は、専門用話で解説し検索よる形態
 分類が中心である。用語の理解にも時間を要
 し、初心者が見分け方を習得するには不向き。
 子ども向けの科学絵本は、見分けるポイント
 を平易で的確に表示し初心者にもわかりやすい。
③しぐさの違いから
 類似した同属生物は、ミルンヤンマやヨシボ
 ソヤンマのように後者が擬死する性質を持つ
 こと、隠れる際にオンプパッタ幼虫は草本の
 葉裏を使い、やや細身のショウリョウバッタ
 は直立した草本に掴まることなどが同定ポイ
 ントになる。
③すみかの環境から
 類似した形態を持つ同属生物では、シオカラ
 トンポは明るく、オオンオカラトンボはやや
 日陰のある環境を選択する。成虫や幼虫の生
 息環境が同定のポイントになることが多い。
④卵や種子から育ててみよう
 主旨や卵から植物や昆虫を育て、成体までの
 期間、形態や色合いの変化に加え、植物では
 分枝状態や土湿の要求度など、生物では隠れ
 処や食べ物の選択性などをスケッチや写真・
 メモなどに残し見分ける力を五感で体得する。

オンブバッタ

セミの抜け殻の見分け方

形態や抜け殻が見つかった環境が見分けるポイ
ント。アブラゼミやクマゼは樹林が少ない市街
地でも生息。ニイニイゼミは関東以北では平地
に生息せず低山地の樹林に限定

トンボの見分け方



クロスジンヤンマ、カトリヤンマ、シオヤトン
ボ、マユタテアカネ、リスアカネなどは、丘陵
地の水辺や湿地に多いクロスジギンヤンマ、シ
オヤトンボなどは春期~夏期に出現するなど、
形態に加え発見した生息環境や時期がポイント



ビオトープ考Ⅰ

2010年04月05日 | ビオトープ





Ⅰ ビオトープとは


❸ 生活空間のビオトープ化


例えば、ビル屋上ではコンテナを使って果樹の
小林や水辺ビオトープなどを設置できる。1年
もすると水辺にはショウブやカキツバタなどの
水草が成長し、サンショウやブルーベリー、キ
ンカンなどが収権でき、しかもシオカラトンボ
やアカトンボの仲間など生物が定着し、小さい
ながらも生態系が再生する。戸建て住宅では、
お庭や家庭菜園、駐車場、軒先など対象範囲が
広がる。家庭菜園園や果樹、ビオトープ池、堆
肥場、樹林地などをつくれる。家主は野菜や果
物を生物達と分かち合うことができる。また、



食う。食われる関係から成り立つ生態系の再生
を願い、面積は小さくとも小林や果樹園、業園、
草地、水辺、堆肥場をセットでつくることが重
要という。都市公園では、水生の植物や生きも
のが豊かな池沼、餌になる果実を付けるガマズ
ミやコムラサキの食樹になるヤナギ類などのブ
ッシュ、ヤブキリの生息地やキジやホオジロの
営巣地になるウツギやススキなどの茂み、スズ
ムシやキリギリスなどが生息し、ススキやワレ
モコウ、オミナエシなどの野革が混生する季節
感豊かな草地などが提案されている。生きもの
の生息環境に多様性を持たせる上で、ノシバや



コウライシバなど、単一種の芝が植裁された芝
生広場は、チョウやバッタがすみ、タンポポや
ニガナ、ハコベなどの野革が混生する低茎の草
地へと転換することも課題である。幼稚園や小
中学校、高校などの教育機関では、生徒、教職
員、保護者、地域の市民が連携して学校ビオト
ープや園庭ビオトープを実践し、自然を再生す
るだけではなく、教科教育のなかで活用するこ
とにより、生徒の自然環境に対する思いや考え
方を醸成することができ、最近では、優秀な学
校ビオトープを表彰する制度も充実し、2年に1



回コンクールが実施されるようになった。農村
では、安全安心で生物を育む無農薬無化学肥料
栽培を実践することでビオトープを再生できる。
兵庫県豊岡市ではコウノトリの試験放鳥を契機
に、農民、市民、行政が一体となって、魚道な
どによって河川と水路、水路と水日間のビオト
ープネットワークを回復させ、無農薬栽培や中
干しの延期、冬期湛水田にしていくことで田ん
ぼビオトープを拡大しているという。大食漢の
コウノトリ1頭で1日、500~ 700gの生物を
食べる。このような水田ではドジョウやカエル、



タイコウチやミズカマキリなどの水生生物が多
数発生し、コウノトリの胃袋を満たすことにな
る。このような稲作は、コウノトリを問わず食
の安全性や地域絶減に向かっているタガメやゲ
ンゴロウ、ダルマガエルなどの各種の動植物を
守るため、一般営農水田でもぜひ展開する必要
がある。また、機械化が進まず、農民の高齢化
が進む谷戸では、耕作放棄地が増える一方であ
る。新潟県上越市や和歌山市山口地区では、市
民と農民が連携しトノサマガエルやニホンアカ
ガエルなどの地域絶滅を避け、安全安心なお米



を作るために、休耕田を復田して無農薬無化学
肥料で昭和30年代の稲作を実践しはじめた。ヒ
トを除く生物はうそをつかない。我々人間の努
力に応じ、このような水田が様々な市民と農民
の連携により、休耕田を復旧。無農薬無化学肥
料で昭和30年代の稲作の実践を開始する試み自
然再生水田で育つ生きものたちな生物を多数育
むことを教えてくれる。伝統的稲作は、世代を
越えた人の交流により、生きていくための技を
次代に伝えるフィールドにもなる。食品リサイ
クル法が施行されたとはいえ、日本の食品廃棄



物は年平均1136万トンにのぼる。毎年日本国内
と沿岸にこの有機物が堆積し続けている。外国
からの窒素、リン酸、カリ肥料などの輸入を抑
制し、食品廃棄物を堆肥として循環させ、でき
るだけ環境に対する負荷を抑制する必要がある。
食糧自給率は、カロリーベースで40%に過ぎない。
自分が食べるものはできる限り自分で作るよう
心掛けることも重要である。昭和30年代までの
里地里山では、①酸素の供給や水の循環は、勿
論、②生物の多様性を維持し、大古の昔より伝
承伝されてきた③人と自然とのつきあい方、④
身の安全や危険に対する認知の方法、⑤再生可



能な食糧、燃料など生きる糧となる自然など、
徹底循環型生活の技を教えてくれた。まず、こ
れらを学び次代に伝える活動を持続的に展開す
ることが課題として取り上げられている。人と
の生活と共に歩んできた里山の自然環境は今や
荒れ放題である。しかし、少し手を加えるだけ
ですばらしい環境が甦り、キンランやギンラン、
メダカやタガメなど絶滅危惧に陥っている動植
物の自然環境も再生できる。里山再生に携わる
団体は、全国各地に無数である。インターネッ
トのWebで検索すれば皆さんの最奇りにある活動
拠点を検索できる。民の力だけではなく行政が
一役も二役も応援している活動も少なくない。
最初は顔を出すこところから参加し、自分の五
感にあった仲間と活動を始め、次第に視野を広
げてみてはいかがでしようかと本著者は勧誘す
る(養父志乃夫著『ビオトープづくり実践帳』、
誠文堂新光社)。

【注釈】

考察の途上だけれど、緑信仰というものがある
かどうかしらないが、緑に囲まれていれば安心
とか、趣味や造園業の延長でビオトープがある
わけではない。つまりは、対象環境領域での物
質収支(material balance sheet)とかエネルギー収
支(energy balance sheet)の科学的裏付け、数値
化されていなければ「ビオトープ」運動として
の意味は薄れる。それこそ事業仕分けの対象に
なるのではと危惧する。勿論、トンボやドジョ
ウが帰ってきた心理的効果やその影響で生産性
が向上したとか、精神的安らぎや文化価値の向
上の実効性の観測、測定を入れなければ公正で
ないということを踏まえての話しにはなるが。



ビオトープとは

2010年04月02日 | ビオトープ






Ⅰ ビオトープとは

❶ ビオトープという考え方

Bio」は生物、「Top」は空間や場所を指し、ビ
オトープは、地域の野生の動植物が生息する空間
を意味する。雑木林や草原、池沼、河川、溜池、
土手畦、田畑、果樹園、庭園、菜園、公園緑地、
屋上やベランダ、屋根、壁の緑化地など動植物が
生息可能な、または生息することを可能にしか空
間をビオトープという。いわゆる「トンボ池」の
ような小さな池だけを指す用語ではない。



Oryzias latipes(Hamamatsu,Shizuoka,Japan,2007)-1.jpg

メダカ:環境省絶滅危惧II類

「約50%は里地里山に依存!」

 ビオトープが話題となる理由は

近年、各地の学校や公共施設、個人の庭にもビオ
トープを整備する方々が増えている。これには、
都市の拡大による自然環境の減少、化石燃料の大
量使用に伴う大気中CO2 濃度と気温上昇、これに
伴う気象変動など、環境問題が日常的になり、昨
今は地球レベルにまで達し将来の生活環境を危ぶ
む声が高まったことが大きく影響している。さら
に食品偽装や残留農薬問題などを背景に食の安全
安心を願う市民の気持ちに加え、農薬や化成肥料
を伴うガーデニングや菜園づくりに抗する市民の
気概、自然志向が大きな支えとなっている。ビオ
トープづくりはまさに自然再生を意味する。環境
省によると、わが国で絶滅、または野生絶滅した

表 絶滅危惧種
ほ乳類    42種
鳥類     92種
両生・は虫類    52種
汽水・淡水魚類    144種
昆虫類    239種
貝類    377種
無脊椎動物    56種
維管束植物   1,690種
維管束植物以外    463種


 

 

 

 





※環境省「第三次生物多様性国家戦略」から引用

動植物の種数は既に百種を越え、適切に保全しな
いと将来、絶滅の危機に陥るとされる「絶滅危惧
種」「準絶滅危惧種」の種数は3200種を越えた。
この背景には里地里山利用の変化、大規模な造成
工事などが影響した。国土交通省によると、わが
国では昭和46年から平成11年までのわずか約30年
間に丘陵地や農地を造成し計約37万ha、毎年約12,
750haの宅地などを建設した。農林水産省によると、
花粉症で名高いスギ、ヒノキ人工林の面積は、天
然林の伐採や農地転用によって、昭和41年から平
成11年までのわずか33年間に約200万ha、毎年平均
約6万haずつ増えた。これによって農地面積は昭
和36年の約620万haに対し、平成6年には約508万
haになり、33年間で約110万ha、毎年約3.3万haず
つ減少した。



トノサマガエル:和歌山県準絶滅危惧

近年、「里地里山」が日常の話題に上がるほど人
気ある環境になってきた。里地里山は「水と空気
土、カヤ場や雑木林から屋敷、納屋、牛馬小屋、
畑、果樹園、竹林、植林、溜池、小川、水田、土
手、畦など、一連の環境要素が一つながりになっ
た暮らしの場」と定義される。この暮らしの場は、
ヒトだけではなく多様な動植物の暮らしの場であ
り、食物連鎖を基軸とする生態系を育んできた。
植物の生産活動を基盤に、これを摂食する生物、
さらにこれらの生物を捕食する生物、さらにこれ
らを餌とする肉食の大型鳥獣が生活できた。まさ
に生物同士の食う・食われるという関係によって
成り立っていた。

クリックすると新しいウィンドウで開きます キキョウ:環境省絶滅危惧II類

昭和30年代まで目本の自然環境は、農・林・魚の
生業の営みとうまく共存して生きづいてきた。し
かし、ヒトの生活活動によって育成されてきた里
地里山は、燃料や肥料の石油原料への転換、農業
生産の基盤や従事者の減少、化学農薬や肥料の導
入、都市への人口の集中などによって著しく貧化
してしまった。メダカやタガメ、ギフチョウなど
が絶滅危惧種に指定され、コウノトリやトキなど
の鳥獣が野生絶滅するなど、各地で生物多様性が
急激に減少した。いずれの種も国外から親鳥を譲
り受け野生復帰に向けた取り組みが真最中である。

クリックすると新しいウィンドウで開きます サギソウ:環境省絶滅危惧II類

絶滅した生物を野生で繁殖できる状態まで育成す
るには、個体の増殖だけではなく餌場や隠れ家、
営巣地などを再生する必要がある。これには長い
年月と予想も付かないほど多額の費用と知恵、労
ノJを変する。次代を担う子どもたちの自然感や生
活感、価値観、人間観が大きく変化している。①
あいさつに加え、仲間づくりができない。②遊び
や物をすべてお金で入手する。③自然を知らない。
こわがる。④農や林、漁の生業を知らない。⑤命
の大切さを認知できないなどなど……。いわゆる
ヒトの「人工化」が進んでいる。持続的に生きて
いくための技をいかに次代に伝承していくのか!
 学校ビオトープづくりや市民による里地里山保
全の活動は、この現実に向かっての行動でもある。
生態系の掟を遵守しない場合は、経済社会も持続
しないといわれる。生態系の掟を守り、持続可能
な環境社会を実現するためには、生物多様性を維
持し、植物連鎖を基礎とする生態系を守る必要が
ある。平成5年に「種の保存法」、平成14年に「
新・生物多様性国家戦略」が効力を発し、平成15
年には多様な主体の共同参画によって自然再生を
進めていく「自然再生推進法」が施行された。ま
さに自然再生の世紀に入った(養父志乃夫著『ビ
オトープづくり実践帳』、誠文堂新光社)。

【注釈】

放っておいていいこと、人間が手を入れなければ
ならないことを判断するのは本当に難しい。しか
し、琵琶湖の水質変化の推移を見る限り間違いな
く手をかけて良かったと思う(そうして、もっと
レベルの高い目標を立て環境保全をした方が良い
のではと思いつつあるが)。程度のものだが、科
学的裏付け(根拠)が不全であったり、過剰な思
い込みであったりする。科学がすべてでもなく科
学もまた宗教ということもある。後に残るものは
<実存>という高村光太郎の『道程』の詩のだけだ。
   
                         
---------------------------------------
【生物保護】

生態系の保護は昨今の時代の流れであるといって
も過言ではない。その活動は政府レベルから市民
運動のレベルまで様々である。先述の通りビオト
ープはこれらの活動と平行する形で普及してきた
概念であり、密接な関係にある。

しかし、前述のような誤解や、ビオトープの概念
の難しさなどと相まって本来のビオトープ概念に
は該当しない、あるいは矛盾する活動も見られる。
ホタルやトンボ、ツバメ、メダカ、アユなど象徴
種を守ろう、という「ビオトープ保護活動」とい
うものがある。象徴種はその名の通り「一般の人
にとっての自然を代表する生物種」であり、それ
らを保護する意義は少なくない。しかし、ビオト
ープの考え方では「その種のみ」を保護する事は
不可能であり、その種が生息する環境・生息空間
全てを保護する必要があるとする。前述のツバメ
の例を言えば、『ツバメは保護したい。しかし蛾
などの虫は駆除したい』という事例を考える。し
かし、ツバメのビオトープにはその餌となる蛾が
必要であり、蛾のビオトープのためには蛾が生き
るための環境が必要になってくる。よって、この
ような事例は現実には不可能であるというのが、
ビオトープの考え方である。



さらに、例えば生態系としては完結したビオトー
プを目指していても、外来種を導入する場合は注
意が必要である。すなわちビオトープで育ててい
る外国産の魚類や植物を外部に流出させれば当然
生態系のバランスは崩れる。また国産の動植物で
あっても、何らかの理由でビオトープが維持でき
なくなった場合に周囲の自然環境に戻すような事
は望ましくない。例えば国産の野生種メダカであ
っても、その遺伝子系統は地域によって多様であ
り異なる地域のメダカを放流すれば当然地域固有
の遺伝子は汚染され悪影響を及ぼす危険がある。
これは公共施設の大規模なビオトープに限らず、
個人所有の睡蓮鉢や水槽といった小さなビオトー
プから流出させた場合でも同様である。何故なら、
流出量は微量でも環境条件が整っていれば増殖し
被害が拡大する可能性があるからである(「 フリ
ー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より)