作成日: 2019.03..07|更新日:
❦ くらしを彩る近江の漬け物
❑ 背景と土壌を探る
1 近江の歴史と漬物
☈ 大陸との交易に携わった安曇氏と塩の道
亀井千歩子著「塩の民俗学」によると、筑前糟屋阿曇郷(福
岡県を本拠地とした安曇氏は、宗像氏と並んで、海人族を従
え、大陸との交易、塩など海産物の交易にも携わっていた。
安曇氏ゆかりの土地は各地に存在し、長野の安曇野をはじめ、
近江国にも安曇郷が存在する。日本に塩泉は存在するが量的
には少ない。ほとんどの塩は海水から調達し内陸部へ運ばれ
たので、海人族が活躍し、塩の道がはりめぐらされていった。
海には接していない近江へ、塩がどのように運ばれてきたか
は興味がそそられる。近江には複数の塩のルートが存在した。
瀬戸内海でとれた塩が大阪、伏見を経由して大津に入ってき
たし、近江北部には福井から塩のルートがあり、塩津という
地名も残っている。湖東へは伊勢湾からの塩の道があった。
漬物菜は、十字花植物のアブラナ科がそのうちの大多数を占
める。
十字花植物はアクが少なく、栽培も容易でおいしい漬物とな
る。漬物になる野菜は地中海沿岸、アフリカ、西アジア、イ
ンド、中国を原産とするものが多い。野生種を改良して栽培
化された野菜の多くはシルクロードを経由して、日本にもた
らされた。カブは地中海沿岸または西アジアが原産地で、縄
文晩期に伝わったという説がある。日本はカブの種類が豊富
で、和様と洋種がある西日本は和種が多く、日本にしかない
種類もある。ダイコンは地中海沿岸または中国原産で、日本
へは南支那系のものが縄文期に伝わったとされている。
ほかに縄文期に伝来したとされる野菜にはニンニク、ラッキ
ョウ、ネギ、アサツキ、ショウガ、ニラ、ある、四~七世紀
の古墳時代には中央アジア原産のカラシナ、インド原産のマ
クワウリが伝来したとされている。ナスはインド原産で七世
紀に中国へ、八世紀に日本へ、キュウリ、シロウリ、シソ、
タカナは八世紀頃に日本へ渡ってきたとされてい今の主要な
漬物野菜のほとんどが八世紀の日本にはすでにそろっていた
ことになる。
奈良時代の長屋王(664-729)邸宅跡から発見された木簡資
料は食に関する貴重な記録になっている。野菜など食材が搬
入される時につけられていた荷札、伝票に相当するのが木簡
である。奈良時代初期の木簡資料に登場する野菜は、ナス、
ダイコン、カブラ、チシャ、ショウガ、トウガン、セリ、ジ
ュンサイ、アザミ、レンコン、ゴマ、ゴボウなどである。漬
物の形で搬入されたものも多い。滋賀の甲良町や蒲生町から
も漬物が献上されていた。その頃の日本は、すでに米から酒
や酢が醸造されていたので、漬物は塩漬けだけでなく、粕漬
けや酢漬けも存在した、醤漬け、味噌漬けもあり、漬物技術
はかなり発達していた。
平安期に書かれた延宮武には、宮中の儀式に使われた食品が
記されており、野菜の漬物や馴れずし類も多く記述されてい
る。多様な野菜が漬物にされており、食生活上の漬物の位置
づけが今以上に大きかったことが伺える。古墳時代に伝来し
たウメは、鎌倉時代には全国に普及し、江戸時代にはウメ干
しに漬けられるようになりたといわれている、江戸時代には
『本朝食鑑』など、数多くの食物関係の本が出されている。
江戸の町には漬物を扱う店も生まれ、京都や大阪にも漬物を
行商して歩く人がいた。江戸の町では白米食も盛んとなり、
糠の生産も増え、糠みそ漬けやタクアン漬けが始まった。そ
れとともに漬物は多様化し全盛期を迎える。江戸間後期に出
された『漬物塩嘉言』には漬物の詳しい作り方も記されてい
る。
☈ 明治以後、食生活の変化による潰物の行方
明治時代に入ると、米食が都市部だけではなく、全国に拡大
していく、漬物がご飯のJ番のおかずであり、生産量は伸び
ていった、明治、大正期には精米法が進み、白米で食べる習
慣が全国に
拡大していった。漬物や味噌汁だけの貧弱なおかずと白米だ
けでは、ビタミンB1の供給は追いつかず、この頃は風土病の
ように脚気がはやツタまた食塩摂取量が高すぎて、タンバク
質の足りない東北の農村部では脳卒中が多発した。戦中、戦
後にかけて食料事情が悪化すると、栄養失調は都会部を中心
に悲惨な状態になり、結核も蔓延した。
この項つづく
【エピソード】
【#野菜漬物#岩手県#がっくら漬】
岩手県紫波(しか)郡紫波町片寄
大根は、やわらか方領(ほうりょう)大根を水洗いして
鉈たか包丁でがくがくかくかく。がっくらのこうし漬は、
かいた大根ににんじんを細かく切ったものと、しその実
の塩漬を加え、塩を少し入れて甘酒またはこうじで漬け
る。日がたって水が下がらないときは、水を少し加える。
薄塩で漬けるので、少し酸味が出てくるか、それがこう
じの甘みと混ざり、とてもおいしい漬けものである。し
その香りも一段とうまみを添え、喜ばれる漬物の一つで
ある。長くおくと色が悪くなるので、二、三日で食べら
れる分だけつくる。
甘酒に含まれるブドウ糖は、麹菌によって既に分解済と
なっているため、効率よく体内にエネルギー源を吸収で
き、その他にもアミノ酸、ビタミンB群、ミネラルなど
が含まれ、麹菌は一緒に摂った栄養の消化吸収を助けて
くれる働きがあり、胃腸にも優しく、夏バテにもってこ
いである。また、甘酒には食物繊維やオリゴ糖も含まれ
腸内の善玉菌を増やして腸内環境を整え、便秘の予防・
解消にも役立ち、麹菌は死骸となり腸内にいる善玉菌の
餌となり、免疫活動を活性化させて免疫力を高める効果
もある。さらに、甘酒は、血行と代謝をアップさせ、毛
細血管の隅々にまで身体が求める栄養素を届け、老廃物
を流してくれる。麹菌は、飲酒・喫煙・ストレスなどで
欠乏しやすい、皮膚の状態を整える働きのあるビオチン
を含み、目の下のくま、肌荒れ、しみやくすみにも効果
があると言われている。
【脚注及びリンク】
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- 食べ物の「こく」を科学するその現状と展望 西
村敏英、江草愛、化学と生物、2016.vol.51,No.2,
PP.102-108 - 漬物を科学する 世界に誇るマイクロバイオームフ
ード, Anti-Aging Food Association 2016.08.23 - フローラ健康通信 - NHKでも放送された、今話題
の腸内フローラ!毎日のスッキリと快適生活を維
持する方法とは 2019.03.07 - 滋賀県出身の人物一覧
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