1.ハワードの田園都市構想
2.田園都市論の現代的意義
3.日本型田園都市構想
4.和歌山市都市計画と学園城郭都市
5.近代ニュータウンの系譜
-理想都市像の変遷-
6.世界遺産登録に向けた取り組み
7.街道と湖上交通と都市形成
8.観光の現況と近未来
8-2-1 旅行の科学
関西学院大学の研究グループの「観光地での経験評価が旅
行満足に与える影響─観光動機と旅行経験の観点から」(
関西学院大学 社会学部紀要 114号 2012.03.17)では、①
観光動機と②過去の旅行経験の相違によって、③旅行満足
の規定因がどのように異なるのかを明らかにしている。
従来の研究は、①観光資源や、②観光施設に対する評価か
ら、旅行満足を捉えようとする研究が多かったが、経験評
価が、旅行満足に及ぼす影響を明らかにすることを目的と
している。
休暇前調査では318 名、休暇後調査では298 名を調査対象
者とし両調査で対応がとれた81 名のデータを規定因の分析
に用いる。
【要約】
- 経験や動機に関わらず、「新奇体験」「健康回復」
「ポジティブ活性」が旅行満足に影響することが明
らかになった。 - 観光動機が強い人は、ネガティブ活性の高まりによ
り、旅行満足が高まることが示された。 - 過去の旅行経験が多い人は、自己拡大の評価が高ま
ることによっても旅行満足が高まることが示された。 - これらの結果を踏まえて、旅行には①一時的な効用
によってもたらされる満足と、②持続的な効用によ
ってもたらされる満足があることについて議論して
いる。
【鍵語】
※ 旅行満足:観光資源だけでなく、観光地での経験を旅
行者自身がどのように評価し、満足に至る
のかというプロセスを包含する概念。
※ 経験評価:観光地での経験に対してなされた意味づけ
や価値判断。これを①機能的評価と、②情
緒的評価の2つの側面に区別。
※ 観光動機:「緊張解消」「娯楽追求」「関係強化」「
知識増進」「自己拡大」の5次元特性で構
成される動機概念(下表の6つの観光動機
の因子項目のうち、主に第2、5、6因子
重複する項目で「娯楽」に該当するもの)。
※ ネガティブ活性:情緒的評価の因子で。①びくびくし
た、②驚いた、③スリルのある、④不安な、
⑤緊張したなどの覚醒度が高いネガティブ
な感情を誘引する第4因子のこと(事例:
月旅行、ジェットコースター、登山)
※ ポジティブ活性:同上、第1因子は、覚醒度が高いポ
ジティブな感情である5項目が高い負荷量
を示したことから、ポジティブ活性と命名。
※ 新奇体験:機能的評価の因子で、第6因子が、変化や
刺激を経験できたことに関する5項目が高
い負荷量を示したことから命名。
※ 健康回復:同上、第3因子は、心身の疲労回復に関す
る5項目が高い負荷量を示したことから、
健康回復と命名。
しかし、この調査結果は、下の3項目に渡る問題を割り引
いて考えなければならないと結ばれている。
- 調査対象者が大学生に限定されており、サンプル数
も少ない。 - 観光地での情緒的評価と機能的評価との間に重複す
る内容が含まれている(→情緒的評価と機能的評価
を統合した尺度を作成し、経験評価の構造について
も再度検討する必要がある)。 - 観光動機や旅行経験といった個人差要因の指標化の
必要性。
以上、今回は数理統計学から旅行動機と満足に関して科学
し解析事例を学んだ。一見地味なようではあるが、ビック
データ時代にあって、このような手法のスパイラル・アッ
プが、「観光交流」という消費行動を通し、地域が活性化
し、最大多数の人々の充実した生活や社会の安定(=幸福)
に貢献していくだろう。次回は、具体的な構想をのケッチ
に移る。
この項つづく
● 海外の旅行先ランキング第一位:アメリカ
【脚注及びリンク】
-------------------------------------------
- 訪れてよし、迎えてよし、地域よしの「観光・三方よし」
滋賀県「観光交流」振興指針 2013.12.27 - 平成 27 年度 滋賀県「観光交流」振興指針 アクションプ
ラン 2016.04.28 - 平成22年度 地域新成長産業創出促進事業 観光を手
法とした地域経済活性化に関する調査報告書 日本交
通公社 2011.05.30. - 世界観光機関アジア太平洋センター
- 日本を観光立国にするための3つの課題:日経ビジ
ネスオンライン 2016.11.17 - 世界観光機関アジア太平洋センター
- ツーリズムと観光の定義 佐竹真一 2010.03.23
- 企画展示「湖の船」開催記録 びわ湖最後の船大工・
松井三四郎大いに語る 琵琶湖博物館研究調査報告
19号 2012.03.21 - 古代の都支えた湖畔の製鉄炉 古きを歩けば(49)
源内峠遺跡 2013.03.12 NIKKE STYLE - 鉄鉱石の採掘地と製鉄遺跡の関係についての試論―
滋賀県の事例を中心に―」(大道和人 滋賀県文化財
保護協会紀要 No.9 2012.06.08 - 淡海文庫 「信長 船づくりの誤算―湖上交通史の再
検討」用田 政晴【著】1997.07.20 - 世界遺産の保全と住民生活-「白川郷」を事例とし
て-」才津祐美子、福岡工業大学、環境社会学研究
(12)、 23-40、2006-10-31) - NPO法人 彦根景観フォーラム 第4回世界遺産を目
指す彦根の課題 2008.02.29 - 世界遺産所在自治体の保全と観光活用に関する取組
事例集 国交省観光庁 2014.10.24 - 世界遺産登録による経済波及効果の分析 えひめ地
域政策研究センタ 2007.01.11 - 世界遺産登録と持続可能な観光地づくりに関する一
考察『地域政策研究』(高崎経済大学地域政策学会)
新井直樹 第11巻,第2号,2008年9月 - 世界遺産を活用した観光振興のあり方に関する研究
運輸政策研究所 第35回 研究報告会 小室充弘
2015.08.05 - 世界遺産登録に向けた取り組み(2014年度)彦根市
- 世界遺産に登録されるまで|世界遺産検定 NPO法
人 世界遺産アカデミー - 高句麗平壌城の都市形態と設計 閔徳植、 国際日本
文化研究センター学術リポジトリ - 松本市の都市計画 松本市
- ひこにゃんがいてもダメ? 彦根城はなぜ世界遺産
になれないのか 週刊朝日 2013年6月28日号 - 利用者が“便利”だと思えるパーク&ライド ECO
JAPAN インタビュー前編 2007.03.02 - 利用者が“便利”だと思えるパーク&ライド ECO
JAPAN インタビュー後編 2007.03.09 - 第1回 ポストケインズ派経済学とは何か 佐々木
啓明 2011.10.05 - 第2回 ポストケインズ派経済学とは何か 佐々木
啓明 2011.10.07 - 第3回 ポストケインズ派経済学とは何か 佐々木
啓明 2011.10.19 - 第4回 ポストケインズ派経済学とは何か 佐々木
啓明 2011.10.26 - 第8次彦根市交通安全計画 2012,03.22
- Core Strategy (2013) - Milton Keynes Council
- "The New Towns: There Problems and the Future”
Department for Communities and Local Government,
2002.11.21 - 日本エシカル推進協議会(Japan Ethical Initiative) -
エシカル日本 - 明治期廃絶城郭の公園化について ―史跡の保存活
用の前史として― 佐々木孝文 2015.06.26 - 都市とは何か 都市計画なぜ必要か - 東北大学
奥村誠 2015.10.15 - 和歌山市都市計画マスタープラン 和歌山市
2017.01.12 - 和歌山市立地適正化計画 2016.12.22
- 日本型田園都市構想―イギリス田園都市と比較し
京田辺市を見直す―2001.12.11 西村利也 - 田園都市とエソテリシズム 吉村正和 2004.03.05
- 田園都市論の現代的意義 中井検裕 家とまちなみ
45、2003.7.8 - 住宅地計画論 1.ハワードの田園都市構想園都市
- 都市思想の二人の巨人、ジェイコブズとハワード:
宮﨑洋司市 - 近代ニュータウンの系譜―理想都市像の変遷-、
佐藤健正、2016.06 28 - 近代ニュータウンの系譜―理想都市像の変遷-、
佐藤健正、2016.07 26 - 近代ニュータウンの系譜―理想都市像の変遷-、
佐藤健正、2016.07 26 - 近代ニュータウンの系譜―理想都市像の変遷-、
佐藤健正、2016.07 03 - 平成 28年度 主要事業 彦根市
- 都市づくりの基本方針(全体構想) 彦根市 橋梁長寿命
化修繕計画による対策橋梁について滋賀県 - 彦根市都市計画道路網見直し検討調査
- 「まちづくりはひとづくり」をめざし 市民主導の
まち創る-近世城下町彦根市本町地区の2例の場合
-(これからの都市づくりと都市計画制度全国市長
会) 中島一 2005.05.09 - 中国城郭都市社会史研究 川勝守 著 汲古書院
- 都市計画の世界史、日端康雄 講談社現代新書
- ドイツ流 街づくり読本 水島信
- 続・ドイツ流 街づくり読本 水島信
- 完・ドイツ流 街づくり読本 水島信
- 都市計画1 日本の都市計画制度の概要 大谷英一
- 都市計画2 都市の歴史と都市計画 大谷英一
- 都市計画の理論 系譜と課題 高見沢実編集
- 彦根市都市計画道路網見直し指針
- 地域別のまちづくり方針(地域別構想)-彦根市
-------------------------;------------------------
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます