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人間という商売を長らくやっていて
ふと気がつくと あっちもこっちも傷だらけ。
傷みがひどく だれも買い手がつかない果物か野菜 みたいにね。
箱ごとすてられそうになって かろうじて 逃げ出したキュウリ
さもなければ ナス。
きみもわたしも どこかにそんな面差しをやどしている。
今日は5月で風がすずしい。
・・・と書いて つぎのことばがつづかない。
午後も夏日になるそうな。
その場つなぎの一汗をかきながら
畝起こしをおえて 草の家に帰る。
縁の欠けた 古い茶碗みたいな家へね。
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庭石の下のすきまから、
一匹の雨蛙が のそりと 姿をあらわす。
しばらく見ていると もう一匹。
三匹めは ぴょんぴょん跳ねて出てきた。
三兄弟は似ているようで 少し違う。
のびをしたり 空を眺めたり。
きみはなんのために そこにいる?
意味なんて知るわけはない。
生まれてきたから ここにいる。
自分が雨蛙と呼ばれていることも むろん知らない。
なんにも知らない。
なーんにも ね。
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