「大ちゃーん」
「ダイちゃぁーーん!!」
場内に響き渡る声援は、まるで悲鳴にも似ていた。
12月25日。長野ビッグハットで行われた、全日本フィギュア選手権男子フリー。
前日のショートプログラムで、まさかの4位発進となった高橋大輔に、もはや残されたチャンスはなかった。
なんとしてでもフリーを制して、世界選手権への出場切符を手に入れてほしい。
最終滑走グループの、6分間練習がスタートしていた。
場内にこだまするコールは、高橋大輔、一色。
観客の高橋に対する並々ならぬ思いが、まるで湧き起こるかのように、静寂をつきやぶる。
この、高橋一色の声援を背中に背負いながら滑ることになる、他の選手達の心境は、いかに、と思わざるをえないほど、興奮は沸点を超えていた。
そして、祈るような面持ちでTV画面を見据える私も、場内で熱い声援を送る観客達と、全く同じ想いであった。
「来年は、世界選手権2連覇を狙いたいですね。」
2010年、バンクーバー五輪銅メダルと、続く世界世界選手権の初制覇。
史上初の快挙を重ねながらも、高橋の目は、既に「来期」を見据えていた。
次期、2011年3月に開かれる世界選手権は、東京が開催地なのだ。
「五輪はこれで最後だと思って望む。」
その後の引退をにおわすような、バンクーバーへのチャレンジ。
だが試合後に、実際高橋の口からついて出たのは、「まだ終わりにするのは、もったいない」。
そして世界チャンピオンになった直後に出たのが、冒頭の発言である。
この、力強い宣言を聞いて、ファンの誰もが興奮し、喜び勇んだことだろう。
高橋ならできる、きっと、やってくれる。
なにより、まだこれからもしばらく、彼の演技が見ていられるのだ。
その、2連覇に挑むどころか、出場さえも危ぶまれるという、全く予想だにしなかったショートの結果に、私は、朝から気が気ではなかった。
そして、不謹慎ながら、
どーしよ!? 出るに決まっていると思ってとってあった、上位入賞者のみで行われるエキシビションのチケット。もしも高橋が出れなかったとしたら、年末の忙しいときを押してまで行く価値がないじゃん、ともチラと思った。
その意味も含めて、高橋には表彰台に上ってもらわなければならなかった。
ほんとうはこの場所に、私もいるはずだったのに、と思いながら(フリーのチケットが取れなかったので)、祈るような気持ちで、TV画面を食い入るように見つめる。
高橋が定位置につくとき、ややふらついたのを見逃さなかった。
体調は、大丈夫なのか。
不安を打ち消すかのように、位置を取り直す高橋。
そして、演技が始まる。
曲は、ビアソラのタンゴ、『ブエノスアイレスの冬』。
昨シーズン世界を制した『道』と同じパスクァーレ・カメレンゴの振付だ。
「新しい高橋大輔を見せたい」と望んだショート(ラテンのマンボなど数曲を組み合わせたものでシェイ・リン・ボーン振付)同様、昨シーズンとは全く違う世界を演じきる今季の高橋の姿に、これまで、おそらくファンならずとも驚かされ、酔いしれた。
世界を制してもなお、挑戦者であり続けようとする、貪欲なまでの向上心に舌を巻く。
結果から言えば、この日の高橋は、鬼気迫るものがあった。
今シーズンのこれまでで、おそらく最高の演技を見せたと思う。
なんとしてでも、世界選手権に出たい。
その、強い思いは、会場の声援にも後押しされて、ファンと文字通り心身一体となって氷上を駆け巡った。
滑り終えたとき、高橋が低い位置で握り締めた力強いこぶしに、私も、おそらく誰もが、確かな手ごたえを感じたのではあるまいか。
結果は、ショートで高得点を出して逃げ切った小塚崇彦に、初の全日本チャンピオンを譲っての3位ではあったが(フリーのみではトータル2位、プログラム・コンポーネント・スコアは、S、Fともにトップであった)、なんとか巻き返して、世界選手権への切符を手に入れた。
結果だけが総てであるスポーツの世界に、「たられば」は禁句である。
が、グランプリファイナル練習中に彼を襲ったアクシデント(それも他選手がジャンプして着氷する際に激突したという災難で、相当なダメージを受けたと思われる)による怪我が、彼本来の調子を阻んでいるのではないかというのは、関係者の証言からしても明らで、それが私も残念でならない。
もしもあのアクシデントがなかったら。
もしも万全な調子で滑れていたなら・・・。
だが本人は、打撲程度のことがあってもやれるくらいの精神力と体を作らないといけないと、あくまでも自己責任を口にしているのが、逆に痛ましい。
そして、おそらく彼の意に反して、高橋が相手選手をかばい何も語らないという、たぐい稀なスポーツマン精神と強い精神力によって今大会(厳密に言えばグランプリファイナルも)を乗り切り、それが我々見る側に、いっそうの感動を与える結果となったのもまた、事実であろう。
ともあれ、ほんとうの結果は3月に出る。
1月にはいくつかのアイスショー、2月には四大陸選手権への出場も決まっているようだが、可能な限りゆっくり休み、しっかりと体調をととのえて、万全を期して世界選手権に望んでほしいと、願わずにはいられない。
* * * * *
と、ここまでは、スポーツドキュメンタリー?風に。
ここからは、ミーハーチック丸出し、“観戦日記”どぇーーーす。
『観戦』とは言わないか。ショーだからね。(^^;)ゞ
さてさて、行ってきましたよよぉーーーん・笑。 v(^^)v
全日本選手権エキシビション。
『2010 オールジャパン・メダリスト・オン・アイス』in 長野ビックハット(12/27)
思い起こせば(って、またですかぃ?(^^;)ゞ)今年3月6日、バンクーバー五輪の興奮冷めやらぬまま、生まれて初めてフィギュアスケートのアイスショー、観戦デビューしたワタクシめですが、その後、世界選手権の興奮でますますヒートアップした私は、大ちゃん真央ちゃん見たさに、4月10日、トーキョーの代々木体育館まで、また2アイスショー見に行ってしまぃまシタ。
それで今回は、アイスショーではなく、試合の緊張と興奮、感動をぜひ“あの場”で選手とともに味わいたいなぁー、と思って、男子フリーと表彰式の日のチケットをとるつもりで意気込んでたら、ものすごい人気でとれず、やむなく『エキシビション』のチケットを、(ホントは暮れの超忙しいさなか、フィギュア見に行かれる身分ではないっすが(^^;)ゞ)思わずとっちゃったんですが・・・。
考えてみたら、アイスショー観戦デビューから考えると、どん2、順に席が悪くなってるんですが、目が慣れてきたためか、今回が一番見やすくて、感動したように思います。
3階の最後列だったのに・・・。
大好きなかわゆい宇野昌磨くんや、イケメンで表現力もバツグンの中村健人(けんと)くん、そして最近ちょっといいかも、のナマゆづる(羽生結弦)を、初めて見ちゃったぞっと。
おばさま、女子にはきびしいが、男子には甘いのっす。(^^;)ゞ
女子はねぇー、同じ女の立場としましては、芸術の域まで高められた、成熟した女性の美しさをこそ見たいので、つぃきびしくなっちゃいますね。申し訳ないですが。
意外とよかったのは、始めて見たんだけど、小松原美里と水谷心のアイスダンスのペア。
今年度全日本ジュニアチャンピオンで、ジュニアとは思えないような、流れるように優雅な踊りを見せてくれました。(もっとも小松原はまだ高校生たが、男性の水谷は21歳だけどね。)
この、水谷心(こころ)が雰囲気があって美しい。なかなか、気に入ったかも♪
あと、鈴木明子は今大会4位に終わり、残念ながら世界選手権の出場は逃してしまったが、真っ赤な布で全身を覆って登場し、途中ヴェールを脱ぐと、これまた民族風の真っ赤な衣装(ちょっとバレエの「「シェ・ヘラサード」や『海賊』「ラ・バヤデール」などにに似てるエキゾチック系ね)が出てきて、思わずドキッ。美しく表現力豊かな、大人の演技を見せてくれました。
圧巻は、ゲストのステファン・ランビエール。
2006年トリノオリンピック銀メダリストで、2005年、2006年の世界選手権金メダリスト。(バンクーバーでは4位)
この選手はかなり好きなので、ナマで見られて本当に嬉しかった。
なんといっても芸術性の高い、美しい演技に惹きつけられるのだが、彼自身も芸術性に対する自信とポリシーを持っており、それが高い評価を得ている。
なるほど。ものすごいオーラを持っていて、
彼の登場で、一瞬にして、その場の空気が変わるのだ。
あちこちからかかる「ステファーン!!」という黄色いコールに、ゆったりと微笑む王子。
バレエの王子役のような、ややクラシカルな衣装は、今となっては珍しいほどで、それが彼には、とてもよく似合っている。(顔立ちも美しいしね(^_-)☆)
その、流れるようなスケーティングは、まさにバレエを見ているよう。←バレエも好きだから言うのですが。
ランビさま、ステキ!!!
バンクーバー五輪フリーの『椿姫』を見事演じきって、拍手喝さいを浴びれば、なんと、客席の4方から、埋め尽くされるように真っ赤なスイス国旗がおどっているではないか!!
ほっ、ほぉーーー。
こんなに応援してもらったら、彼は日本びいきになるであろう、と思えるほどである。
事実彼の人気は、ロシアのエフゲニー・プルシェンコと並んで、日本で非常に高いようである。
今回のショーで、メインのなみいる日本人選手たちをさしおいて、彼の登場が一番盛り上がったのではないかと思えるほどである。
ランビエール、おそるべしっっっ・笑。
すごいぞっ。
そして、今回も、まさかとは思ったが、泣きました。
大ちゃんの『アメリ』で。
これは、彼もリスペクトしているというステファン・ランビエールの振付で、大好きな両者のコラボという、まさに私にとっても“おいしい”作品。
ユーチューブの動画とかで何度も見ているけど、もちろんナマは初めて。
とても雰囲気のある作品で、二人の芸術性が見事融合している、美しい調べ。
とにかく、曲がよくて、劇的なクライマックスでゾクゾクッとして、いっちゃいました。
が、しかし・・・。
今大会3位の彼は、2部の最初のほうで早々と登場。
彼はれっきとした“現・世界チャンピオン”なのに、日本チャンピオンを譲り渡してしまったという、この、妙な現象。
違うでしょ。
いつもトリを締めるはずの彼の、ここは本当の場所じゃないでしょ。
と、思ったら、2日前の世界選手権出場キップ獲得と表彰台に安堵し、喜んでいたときのことは、どこかへ飛んでっちゃって、なんだか、無性に悔しくてたまらなくなった。
私なんかがこんなに悔しいんだから、当の大ちゃんは、きっと、もっと悔しいはず。
でも、続くアンコールでは、ショート・ダイジェストのマンボで、生き生きと、思いっきりはじけ飛んでくれましたけどね。←やはり彼には、こういうノリのいいのが、サイコーに、合いますね。
あと、バレリーナを意識したという真央ちゃんの、真っ白な衣装に身を包んだ、流れるように軽やかな演技にも、魅了されました。
真央ちゃん、ほんとに大人になったなぁー、と今さらかも、ですが思っちゃいました。
それで、真央ちゃんの今シーズンのエキシナンバーが、辻井信行の『マイ・フェイヴァリット・ショパン』からであるとは知っていたんだけど、ちゃんと聞いた(見た)のは、今回が初めてで、冒頭を聞いただけですぐわかりましたね。
だってこの曲は、大好きなショパンの中でも、かなり好きな曲だったから。
もう、奮えがきましたね。
↑ ただし、ショパンの曲は、「英雄」とか「革命」とか、日本名がついていないと、難し過ぎて、作品名を全然覚えられにゃい・・・。
こんなこというとイヤラシっぽいかもしれないんだけど、ショパンは小学校のときから大好きで、いろいろ知ってるつもりではいるんですが・・・。
これは『バラード第1番ト短調作品23』。 ねっ、覚えられないでしょ? (^^:)ゞ
私は、ショパンは「ノクターン(夜想曲)」よりも、激しいやつが好きなんだけど、これはもう、曲を聴いてるだけでも感動的です。
曲調が劇的に変化するクライマックスでは、そりゃぁ、泣くでしょ。感極まって。
←って、私だけか? (^^;)ゞ
(ただし、原曲が好きな私は、途中ブチブチと曲を切ってつなげてあるのが、いいところだけにちょぃ欲求不満になる。演技時間に合わせて縮めなくてはならないのだから、仕方ないけど。むしろ知らない人にはわからないくらいに上手につなげてあるのは見事! これ専用に、わざわざ作って弾いてるんだろぅなぁー。)
真央ちゃんは2007-08シーズンのフリーでもショパンの『幻想即興曲』を使っているので、もしかしたらショパン好きなのかもね。
そうそう、思い出した。
世界選手権後の『スターズ・オン・アイス』で、初めてナマで真央ちゃんの演技見たときも泣いたんでした。こんなに可憐でいたいけな少女が、オリンピックの重圧に耐えて世界で戦ったのか、と思ったら、なんだかね。
安藤美姫にも、心底感動しましたね。
失礼ながら、そんなに好きな感じではなかったんですが、6季ぶり3度目の優勝に返り咲いた、という執念はスゴイです。
そんなこともあるんだぁーと、マジびっくりしたもんね。
試合前のインタビューで、「ベテランじゃないですよ。まだ、若いし。」と笑っていたのが印象に残ったが、そうなのです。23歳なんて、まだ若い。
簡単に“世代交代”などという言葉を使ってほしくない。
女子体操でも最近、田中理恵(23歳)が、遅咲きの妖精、エレガンスと注目を浴びている。
ローティーン全盛だったはるか大昔(恥ずかしながら私が部活でやってたころ、です。(^^;)←コマネチ世代)では、正直考えられないことなので、すごくいいことだと喜んでいる。
なんでも、若さだけが特権とは限らない。
喜びも苦しみも、積み重ねた分だけ、人は強く、美しくなる。
そういう内面の輝きを、私は見たいと思うし、自分でもなれていけたらいいなぁーと、おばさま代表?のワタシは、思うぞ。
パクちゃん、全日本では譲ってさしあげたけど・笑、世界選手権では、負けませんことよ・笑。
さてさて、
全員が登場しての華やかなエキシビションフィナーレが、サイコーに盛り上がって楽しかったのは、いうまでもありません。
スター達の夢の競演て感じですね。
それになんといっても、フィナーレで軽快な音楽に乗って、ノリノリの楽しそうな大ちゃんを見ていると、こっちまで楽しく、幸せな気分になれるのです。
もう、最後にはやっぱり、ランビ様もどっかへ飛んでっちゃって、大ちゃんの姿だけを追ってたってカンジです・笑。
きゃはは。(^^;)ゞ
アイスショー、サイコー!!!