友人がアップリンク吉祥寺でいい映画やってるよと教えてくれたので、行ってみました。
「丘の上の本屋さん」(クラウディオ・ロッシ・マッシミ監督 2021年)
これがまたいい映画でした!
イタリアの映画で、BSの「小さな村の物語」みたいなアットホームな映画です。
イタリアの丘の上にある小さな古本屋が舞台で、この古本屋と近所の公園や路地、たまに織り込まれる美しい丘の風景だけで物語が進行します。
古本屋の店主リベロは、戦争の頃の記憶もありそうな世代。
ある日、店の前に置かれた本をじっと見ている少年にリベロは声をかけます。
どこから来たんだ?
少年は「ブルキナファソから」と答えます。アフリカの小さな国です。少年はそこからイタリアに来た移民の子のようです。
本が欲しいけどお金がないと少年は言います。するとリベロは、貸してやるから読んだら返せばいい、といって漫画本を彼に貸し与えます。
以来、少年は毎日のように本を読んでは返しにきて、また新しい本を借りていくようになります。
最初は漫画本だったけれど、「次はこれを読んでみなさい」といって、リベロは活字の本を渡します。少年はそれもすぐに読み終えて返しにきます。
「どうだった?」とリベロが聞き、少年が感想を言います。
こうして、リベロはこの少年に次々と本を貸していくのです。
「ピノキオの冒険」「イソップ物語」「星の王子様」「白鯨」「アンクルトムの小屋」「白い牙」・・
少年が返しにくると、リベロは感想を尋ね、そしてまた次の名作を手渡します。
この少年が実に賢くてね、与えられた本を次々読破し、吸収していく様子を見るのは楽しい。
並行して、本屋の隣のカフェで働くニコラという青年も登場します。彼は、時折やってくるキアラにぞっこんで、何とかキアラとデートをしようとする。
また、ゴミ箱に捨てられた本を拾っては売りに来る男や、自分の本を探している大学教授、ナチス関係の本を探しているちょっとヤバい男など、いろんな人たちが本屋に出入りします。
大した事件も起きず、淡々と物語は進んでいきます。
そして、私たちの日常と同じように、平穏な日々にもやがて終わりの日がやってくる・・
最後にリベロが少年に贈った本・・
これを知ったとき、彼の真意が理解できるようになります。
この映画はささやかな日常の中に潜んでいる小さなトゲ、けれども普段は気づかずに通りすぎてしまう景色を、きっちりと切り取って、私たちに見せてくれます。
本を読むことで得られるかけがえのない経験、物事を深く考え生きていくことの大切さを、この映画は印象深く描いて見せてくれます。
ハートウォーミングな映画だけど、それだけじゃない。
そして、昔少年少女だった人たちにとっては、なつかしい本がたくさん登場します。
ああ、私もあの本読んだわ、と思うこと必至です。
秀逸な映画なので、ぜひ、劇場で観てほしいと思います。
アップリンク吉祥寺で上映中です(5月18日まで)。
(アップリンク吉祥寺って、パルコの地下、以前本屋があった場所です)
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