ないない島通信

「ポケットに愛と映画を!」改め。

「異人たちとの夏」

2024-08-05 09:58:51 | 映画

Huluで「異人たちとの夏」が配信されていたので観ました。

「異人たちとの夏」(1988年 大林宣彦監督)

1988年と古い映画で、以前も観たのですがなつかしくなって見てみました。

山田太一の小説を映画化したものです。

夏といえば幽霊譚。

でも、この幽霊譚は実にさわやかな後味の幽霊譚です。

最後にはちょっと怖い本物の幽霊も出てくるのですが、印象に残るのはあくまでも主人公の亡くなった両親。

(以下ネタバレ)

シナリオライターの原田は12歳の時に両親をなくし、最近妻とも離婚し一人暮らしを始めたところ。

彼の住むマンションはほとんど空室で、彼の居室と3Fに一つだけ明かりの灯る窓があり、他の住民たちはいないらしい。そもそも都会にそんなマンションがあるのか、と当時も思いましたが、とにかくそういう設定。

で、ある日、彼は浅草の演芸館で死んだ父とそっくりの男を見かけます。男の後を追っていくと、男は気づいて彼を自宅に招くのですが、それは原田が子どもの頃暮らしていた家でした。

そして、男は原田の実の父親でした。

死んだ両親は、死んだときの若い姿のままで、浅草の家で暮らしていたのです。

都会的でクールなシナリオライターの原田とは全く違って、両親は庶民的で暖かく彼を迎えてくれます。その両親に接し、原田は心から癒されていき、何度も両親宅を訪ねるようになります。

でも、彼らは幽霊。こんなことが長続きするはずはありません。

そして、別れの時がやってくるのです・・

もう一人、幽霊が登場します。あの3Fの明かりの部屋に住んでいた女性と原田は肉体関係になるのですが、実はこの彼女は既に死んでいた・・

彼の両親のように、彼を暖かく迎え、温かく見守ってくれている幽霊もいれば、3Fの女性のように彼に憑りついて向こうの世界に連れていこうとする幽霊もいる・・

最後の方は背筋が凍るような幽霊譚になるのですが、

それでも、見終えた後に残るのは、浅草の古い家であり、気さくでやさしい両親の姿なのでした。

こんな幽霊なら出会ってみたい、と本当に思わせてくれる映画です。

大林宣彦監督といえば「時をかける少女」が有名ですが、この映画に登場するのも未来から来た少年でした。

「大林は(中略)「幼少期に感じた死者の気配が映画づくりの原点。私が描くのは虚実のはざま。生きているのか死んでいるのか分からない人が登場する」と語る(wikipedeiaより)

ところで、この映画をリメイクしたイギリスの映画「異人たち」も観てみましたが、

こちらはイマイチ。あの素敵な幽霊譚をゲイの世界の話にすり替えてしまうあたり、どうも納得がいきません。全体のトーンも全く違うし。

幽霊譚を見るなら「異人たちとの夏」は欠かせません。

あと、

「父と暮らせば」もよかったので、また書きたいと思います。

夏はやっぱりこの世とあの世がまざりあう季節なのですね。

酷暑の陽炎の向こうに見えているのは、この世のものではない者たちだったりして・・

 

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