ないない島通信

「ポケットに愛と映画を!」改め。

イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密

2017-02-07 21:09:01 | 映画


2年前に劇場公開されたときに衝撃を受け、劇場に2度足を運び、その後DVDでも見て、今回またHuluで見たので、4度目になります。

2009年、英国の首相が政府を代表して一人の男に謝罪した、という事実が発端となり出来上がったのがこの映画だそうです。
実話に基づいたストーリーです。(モルテン・ティルドゥム監督 2014年公開)

歴史の闇に埋もれていた天才を蘇らせ、なおかつ第二次大戦中のドイツの暗号解読というミステリーを織り込み、時代に翻弄された一人の数学者の姿を見事に描ききっています。

この映画を見て、ベネディクト・カンバーバッチってすごい!と思い、「シャーロック」にもハマったのでした。
私にとっては「シャーロック」に導いてくれた映画でもあります。

でも、なぜかあまりポピュラーじゃない。
ハリウッド映画のような派手な宣伝がなかったせいかもしれません。
そこで、今回紹介したいと思います。(ネタバレです)

第二次大戦中、ドイツ軍の「エニグマ」という暗号を解読するため、イギリスのブレッチリー・パークに、暗号解読チームとして数学者やチェスの優勝者、パズルが得意な人などが集められます。
そのメンバーの一人が天才数学者アラン・チューリング(ベネディクト・カンバーバッチ)でした。
解読チームには、ジョーン・クラークという女性数学者(キーラ・ナイトレイ)も選ばれましたが、当初は女性だからという理由で外されそうになります。でも、チューリングの機転でチームの一員となります。

また、チューリング自身も(アスペルガー症候群と思われる性格の持ち主であるため)他人とコミュニケーションを取るのが苦手でした。
そのために、軍幹部からは睨まれ、チーム内でもうまくいきません。
戦況が悪化する中、彼らは必至で解読を試みますが、毎日暗号のキーが変わるため、一日の苦労はその夜には水の泡となるのでした。

エニグマは暗号制作機械です。機械には機械で対峙するしかない、と考えたチューリングは、チームのメンバーが手仕事で暗号解読しているそばで、一人マシンの制作を始めます。
これが、現在私たちが使っているコンピュータの基礎となる、チューリングマシンなのでした。
しかし、戦時中のこと、マシンの制作には多額の費用と時間がかかり、軍の幹部はこれを理解せず、チューリングに辛く当たります。

最初はチューリングを疑っていたチームメンバーたちも、やがて彼の意見に賛同し味方になります。

苦労の末にようやくチューリングマシンが完成し、ついにエニグマは解読されます。
アラン・チューリングのおかげで、第二次大戦は2年早く終結し、1400万人の命が救われた、と最後のテロップで流れますが、多くの人の命を救ったチューリング自身は、ゲイであるがゆえに逮捕され、ホルモン療法で矯正され、ついに自殺してしまうのでした。

前回の「ブロークバック・マウンテン」に引き続きゲイが主人公の映画ですが、
今からたった70年前に、ゲイであるが故に逮捕され、自殺に追いやられた天才数学者がいたという事実に愕然とします。
彼は、アインシュタインと並び称されるほどの偉大な数学者であり、世界の平和に貢献し多くの人の命を救ったにもかかわらず、ゲイであるが故に自殺せざるをえなかったのです。

イギリスは軍の機密であるチューリングマシンのことを戦後50年もの間公表せずにいました。
そして、2009年にようやく彼の功績が認められ、すでに亡くなって久しいアラン・チューリングに対して、イギリス首相が公式に謝罪したというわけです。

また、女性であるが故に暗号解読チームから外されそうになったジョーン・クラークも、親の無理解のため、再び故郷に引き戻されそうになりますが、それを救ったのもまたアラン・チューリングでした。

これが、たった70年前のイギリスで起きたことです。
(映画なので、事実と異なる部分があるとは思いますが)
現在私たちが常識だと考えている多くの事柄も、今から70年たったら、非常識きわまりないということになるかもしれません。そうしたことが数多くあるにちがいありません。

戦争の悲惨さもさることながら、世界の常識や非常識を一度疑ってみる必要があるのではないか、
そうしたことも深く考えさせられた映画でした。
コメント
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