おかまのよろめき

現役おかまのお店日記&趣味のはなし

2丁目デビュー

2008-10-13 23:09:28 | Weblog
ゲイが相手を見つける場所として

2丁目などの飲み屋か、サウナや映画館、

公園などのハッテン場が挙げられる

私は後者によく足を運んでいた


池袋の安い映画館へはよく通った

いつもの様に座席に腰掛けることなく

壁際で好みのタイプを探していた

そこへドアが開き短髪の男が入って来た

サングラスをかけていて渋い感じだが

薄暗いので年齢までは判らなかった

何人かの間を行ったり来たりした後

私の横に立った

さり気なく腰の辺りに手を伸ばして

私の反応を窺ってる様だった

私が拒否しないのをOKの合図と受け取った様で

「外に出ない?」と耳元に囁いた

そのまま映画館を出て彼はタクシーを停めた

新宿2丁目に連れて行ってくれるというのだ

その頃の私は、2丁目の事を誤解していて

意地悪で口の悪いオカマがたくさん居て

初心者をイビリまくる怖い場所だと思っていたのだ

「大丈夫、変な所には連れて行かないから」と

彼は、不安がる私を落ち着かせようとしてくれた


初めて訪れる2丁目は静まり返っていた

古いビルの狭い階段を、彼の後に付いて上って行った

ドアを開くとカウンターだけの小さな店の奥から

スキンヘッドで小太りの中年男が鼻にかかった声で

「あら久しぶりじゃない」と彼に声をかけた

他に客の姿は見えない

小さな音量で都はるみが流れている

私の中で新宿2丁目のイメージが大きく崩れた

何を飲んだか覚えてないけれど

お通しのかっぱえびせんだけは脳裏に焼き付いている


マスターは特に面白い話をするでもなく

取り敢えずカラオケでもやりなさいと勧める

しかも今の様な通信ではない

レコードのカラオケなので音程を変える事は出来ない

しかも曲数だって少なく演歌ばかりだった

私を連れて行ってくれた彼は慣れた手つきでマイクを握る

美空ひばりの「人生一路」かなんかを歌っていた

短髪でサングラスが似合い、渋くて男っぽいと思っていたのに

ひばりチャンのモノマネみたいな声でフリまで入れて歌っていた

スキンヘッドのマスターも身をくねらせて

「お嬢っ!」と合いの手を入れる

今すぐにでも逃げ出したくなったのは言うまでもない

「アンタも綺麗ぶってないで歌いなさい!」と

マスターが勝手に曲を選んでかける

森昌子の新曲らしいのだが聴いた事がない

「ヒットスタジオで歌ってたわ、良い曲なのよ」と勝手に盛り上がっている


かれこれ二時間ぐらい居ただろうか

カラオケに飽きた彼が「帰るわよ!」と私の手を取った

もはやオネエを隠す事すらしない

やっと開放されると思ってたら

タクシーは池袋のボロアパートに停まった

「ちょっと寄って行かない?」

「いえ、お腹が痛くなったので帰ります」と断わったら

「アラ、随分じゃないのよ!」と腕を引っ張るのだ

とてもそんな気になれず走って逃げた

電車はとっくになかったが

その頃は大塚に住んでいたので歩いても帰れる距離だった


こうして私の2丁目デビューは儚く散った

初体験の2丁目があまりにもつまらない店だったので

それ以降も、私はハッテン場を中心に渡り歩いて行ったのだ

そこには欲望を満たすだけの相手を求めて

夜な夜な多くのゲイが集まって来る

エイズなどまだない長閑な時代だった





























コメント
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