人気店摘発

昨夜は酷い咳に悩まされた

以前買っておいた咳止め薬を飲んで

速攻寝たら朝には随分と楽になっていた

それでも油断は禁物

さっきもボーイのトシからメールで

風邪引いたらしいとの事

きっとそのまま昼間はコンビニで働いていたのだろう

メールには３８．４度を示す体温計の写真も添えられてある

今夜はそのまま起きられないだろう


昨夜マヤからメールがあった

私が２丁目の某店について訊きたい事があって

その返事だった

彼女も風邪を引いていた

この時期暖かかったり急に寒くなったりと

気温の変化で体調を崩しがちだ

私も気を付けていたつもりだが

先週はホント辛かった

市販の薬と睡眠で何とかこじらせずに済んだが

治りかけの時は更に気を付けなければ

またぶり返してしまう

うがいと手洗いそして栄養と睡眠

店が終わったらとっとと帰って身体を休めよう


マヤのメールで知ったのだが

テレビにもよく登場する２丁目の人気店が

風営法の届出をしないで営業してたとかで

摘発され閉店に追い込まれたようだ

そう言えば去年だか一昨年だかに

３丁目のお店も摘発を受けて閉店した

逞しいママは２丁目に店を移して営業中だ

ただ以前の様なボックスでの接客ではなく

カウンター中心のスナックに変えた様だ

今回摘発を受けた店は本格的なショーも楽しめ

キャストも大勢居たはずだ

ママやチーママをはじめ

インパクトの強いコミック部門まで

みんなの生活はどうなるのだろう

すぐに次の勤め先が見つかれば良いが

この不景気で中々大変なのではないだろうか


当店も昨年辺りから私服警察が数回やって来た

初回は指導を受けてママが警察まで足を運んだが

それ以降は店自体があまりにヒマで

一応書面へのサインをしただけで済んだ

それにしても何度も本名と住所と電話番号まで書かされ

こっちはいい迷惑だ

深夜営業の飲み屋をしらみ潰しにチェックすれば

きっと多くの店が営業出来なくなるだろう

不景気でそれでなくてもヒマなのに

更なる締め付けで夜の蝶たちは益々生き難い時代になった

懲りないサナエさん

今週は風邪を引いたせいもあって

ずっと調子が悪かった

病院を変えてもお肌のトラブルは改善されないし

精神的にも肉体的にもホントにブルー

来週は少しは良い事あるかしら


サナエさんが土曜日に遊びに来た

「アンタ、さっき某店の面接に行って来たわよ」

聞くと中央線沿線の比較的新しい店だ

そう言えば彼女が当店で働く前に

その町の別の店で働いていたので

そのエリアにはお客さんも居るのだろう

「一応電話では歳は３８で

　お銀座の女性の店で働いている

　高めのニューハーフって事にしたの」

お銀座は間違ってないけど

３８ってちょっと無理があるんじゃないかしら？

とは思ったが続きを聞いた


「それでさ、其処のボーイみたいのが面接したのよ

　いきなりこう聞くわけよ」

すぐに呼べるお客さんは何組ぐらい居るのか

銀座の何処の店に居たのか

「明らかに私のキャリアを疑っているわけ

　腹が立ったから言ってやったわ

　“面接でいきなりそんな事聞くなんて失礼じゃないの！”」

数十分後に店長らしき男から

「申し訳ないですが今回は縁がなかったと言う事で…」

と連絡があったそうだ


数年前にドキュメンタリー番組で見た歌舞伎町のキャバ

六本木で働いていた女性が

その店の面接を受ける場面をカメラが追っていた

大きな水槽のある豪華な店だ

店長らしき男は彼女に質問した

「今すぐに呼べるお客様は何組くらい居ますか？」

そして彼女は何人かの顧客にケータイで連絡を入れた

その内の誰かと連絡が取れた様で

彼女はそのまま体験入店となった

連絡を入れた客が来る前に場内指名が入る

お嬢様風味のルックスでスタイルも良い彼女は

早速テーブルに付いて接客していた

その後、連絡を入れたかつての顧客が来店


そんな風に即戦力となる場合は稀だろう

しかし店側として欲しいのは

今すぐに客を呼べるキャストだ

長引く不況で夜の蝶たちも生きて行くのに必死

サナエさんが面接を受けた店の言い分は正しい

ギャラが発生する以上

それだけの仕事を期待するのは当然だ

「週に２～３回だけ気楽に働きたいのよ」

と安易な動機で面接を受けたサナエさんは

思いもよらぬ結果に腹を立て

悔しいからと○○○にも電話を入れていた

「すいませ～ん、そちらで働きたいんですけどォ…」

懲りないわ～










　

　





　

風邪を引いたみたい

一昨日から調子が悪い

どうやら風邪を引いたらしい

数日前の肌寒い日に毛布一枚で寝たのが原因かも

昨夜は営業中に頭痛がして来たので

金曜日の営業に支障がない様に定時で上がった

ボーイのトシも風邪気味らしい

私のがうつったのだろうか


新人のミラー

「先週の金曜日はすみませんでした

　この店に骨を埋めるつもりで頑張ります」と

心構えだけは感心だが

まだまだ接客はアマチュアなのだ

お客様がいらしてもボーッと座ったままだ

新人は誰よりも先におしぼりを持って

お客様を迎え入れるのが普通なのに…

タバコの火の点け方やお酌の仕方まで

一から教えなくてはならないのだ

アンタ本当に歌舞伎町の人気店に居たの？


台風が近付いているとかで

雨が降ったりやんだり

今夜の営業の邪魔をしないでくれると良いのだが

ミラーがまた

昨夜の一番乗りは当店には珍しくゲイのカップルだった

近所で同棲しているハルとマコト

ハルは全くゲイテイストを感じさせない言動だが

マコトは入ってくるなりハイトーンのオネエ言葉丸出し

たじろぐヒデミ

当店ではごく稀にこのタイプのお客様がお見えになるが

結構辛辣で扱いづらい場合がある

リアクション下手なヒデミは簡単にやり込められてしまうので

苦手なのだ


トイレから戻って来たマコトは愛くるしい顔立ちだ

見た目３０代半ばだろうか

ややまったりした喋り方で攻撃的ではない

きっと若い頃は２丁目でモテただろう

「そうなの、店子（みせこ）の経験もあるわ

　アッシ第一印象でその人が好きか嫌いかが決まっちゃうの

　駄目な人とは話もしないわ」

て事は私は合格だった様だ

相棒のハルはマコトより７つ上で男っぽい印象だ

甘えん坊のマコトを優しく見守りながら

たまにツッコミを入れるといったタイプ

昔はアパレル関係で働いていたらしく

マコトのファッションにも手厳しい

「選んでくれるのは彼だけど

　最近はそれらを上手くコーディネイト出切る様になったわ」

マコトの今日のアウターも可愛いデザインだ


其処へこのところ頻繁に遊びに来てくれるアッ子登場

さきほど彼女のダンナ様から

焼きたての美味しいナンを差し入れていただいたばかりだ

そのお礼を言う間もなく彼女が差し出したのは

「閻魔」と言う焼酎だった

「いつも何かしらお土産をいただいてホントに申し訳ないわ

　でもアンタの持って来てくれる物ってハズレがないのよね」

早速ゲイカップルの隣に案内する


マコトの隣に座ったアッ子は

２人とすぐに意気投合

閻魔は彼らのグラスに注がれた

そしてアッ子のファッションチェック

ペンダントの長さやヘアスタイルについて

ハルとマコトはアドバイスする

アッ子もふんふんと頷いている

そしてその後は昭和歌謡のカラオケ大会で大盛り上がり

今夜はむしゃくしゃしていたアッ子は

みんなの手拍子やコールで上機嫌だ

負けずにマコトも明菜で応酬

後期のマニアックな選曲に一同連いて行けず

「あら、でもこの曲売れたのよ～」と反発

かれこれ２時間は歌合戦が繰り広げられた


彼らが帰った後はノンちゃん登場

「日曜日にサーカスカフェに行って来たんですよ

　そしたら金曜日にエドナさんが来たって聞いて…」

手には日出郎さんのＣＤを持っている

よく見ると手書きのサイン入りだ

「隣のテーブルでお話してたんだけど

　私“燃えろバルセロナ”を持ってるんですよ

　と話しかけたら喜んでくれて

　オークションサイトで７万の値が付いたらしいんですって

　だからコレも値打ち出るからと言って

　新曲のＣＤ買ってしまいました」

燃えろバルセロナとは

オリンピックに合わせて出した曲だった

テレビでは何度か見かけたがヒットには程遠かった

ノンちゃんはショーが好きで

ミュージカル映画も結構見ている

間近で素晴らしいパフォーマンスが見られる

サーカスカフェに大興奮した様だった


ノンちゃんの後にはタクシーでわざわざ駆けつけたミニ子

ダンナと別れて年頃の息子と２人暮らしだ

大人しそうな風貌ながら結構イケイケなのだ

ノンちゃんとウマが合ったらしくカラオケで盛り上がっていた

そこへフィリピンパブから流れて来た２人組の男性

彼らは２週間前に初来店で

先輩の方がママの悩殺攻撃にノックアウト

後輩の方はバイである事を告白した

早い時間から飲み歩いているとの事で

先輩の方は眠ってしまったが

可愛い後輩クンと閉店までお話した


ところで先週体験入店したミラーが

また電話をしてきた

「あのう、もう一度チャンスをいただけないかと…」

電話ではとても礼儀正しく好印象だが

「アンタもう睡眠薬は飲まないって約束する？」

「ハイ」

「じゃあ水曜日にもう一度来て」

その日が今夜だ

ミラーにはお水のイロハをしっかり教えてあげなくては…

　

体験入店のミラー

先週の金曜日は速水のパパと待ち合わせをして

食事の後サーカスカフェに連れて行って貰った

この日は通常のショーの後に

ゲストダンサーによるポールを使ったアクロバットショーや

ジーナと良平による「雨に唄えば」

そしてまいたけと紫音による「狼少女」もプラスされ

大変お得なプログラムだった


私たちは７時からの第一部を拝見したが

客席はほぼ満席

ただまだ酔いが足りないのか

それとも一緒に楽しむ術を知らないのか

みんな冷静な眼差しでダンサーの動きを追うばかり

通常ショーが終わった後

これから特別ゲストによる

ポールダンスが行われる事を告げるトオル王子も

「皆どうしたの？まったりして

　ショーパブのノリじゃないわよ！」と煽るものの

お客さんのテンションはイマイチ低いままだった


今回初めてお喋りをさせて貰ったジーナ

ダンス中も最高の笑顔でスタイルも抜群

良平との「雨に唄えば」も

あの名作を思い出させる素晴らしいパフォーマンスだった

お話をしてもとても感じが良く

ジーナのファンが多いのも頷けた


このお店では誕生日の人に

ダンサーを囲んでの記念撮影や

メッセージ入りのスイーツのサービスがある

当日の私はお肌の状態が最悪でマスクをしたまま

記念撮影をしていただいた


サーカスカフェを出た後

私は大急ぎで店に戻りメイクをして再び吉祥寺へ

パパ行きつけのクラブで

綺麗どころに囲まれて私の誕生祝をしていただいた

金曜日のピーク時なのに店内は閑散としており

ママが「平日ヒマなのはまだしも

金曜日がヒマだと休みの日（土・日）に落ち込むんですよね」

とこぼしていた

確かに週末がヒマだと休みの日まで気分が沈む

来週はお客様が大勢いらしてくださるかしら？

このままヒマだったらどうしよう

何かと心を痛めてしまうのである


パパと同伴で店に戻る

パパお気に入りのマリアも一緒だ

店内にはこの日体験入店のミラーが接客中だった

既に一組目のお客様に景気付けで飲まされた様だ

何だかトロンとしていて動きも鈍い

お喋りも得意な方ではないらしい

歌舞伎町の某有名店に居たなんて本当かしら

酔わされた事をさっ引いたとしても

即戦力にはならなさそうだ


パパが帰った後ミッちゃんから電話があり

スティングまで迎えに来てとの事

ちょうどお客様も退けて今なら抜けられると思い

タクシーを停めて吉祥寺へ向かった

スティングでは先日しのぶさんとご来店下さったナオヤちゃんも

奥の席に居た

スーツがまた似合うわ～


小一時間スティングで楽しんだ後

ミッちゃんを引き連れて店に戻る

数分後にはルナ子も登場

さっきスティングで

「今夜は新人が体験入店なのと

　トシが早い時間に一気王子に飲まされて

　かなりイカれているわよ」と

宣伝したのが効いたようだ

新人を紹介しようとミラーをテーブルに付けた

ルナ子はビールを飲んでいるのだが

ミラーはお酌もせずボーッとしていた様だ

５分も持たずにチェンジを言い渡された


今度はミッちゃんのテーブルに付けてみた

私とママも一緒なので大丈夫だろうと思っていたら

早速カミナリが落ちた

ミラーは朦朧としている

ちょっと変なので聞いてみた

「あんた睡眠薬でも飲んだんじゃないの？」

たまにそう言うオカマが居るのだが

営業中に睡眠薬と酒を呷ってラリるのだ

ミラーはコクンと頷いた

速攻帰る様に命じた

すると「私クビなんですか？」と聞く

呆れたけどとにかく日払いを渡して帰る事を促す


数分後、駅まで行った彼女はまた引き返して来た

そして私に顔を近付けて

「私クビなんでしょうか？」

思いっきりラリっている

「夕方に必ず電話をするから

　今日はお帰りなさい」

そう言って何とか帰した

ミッちゃんもママも目を丸くしている


慌しい金曜日の営業も６時半頃に終了し

後片付けをして自宅へ戻ったら９時を過ぎていた

夕方５時にはミラーに電話しなくてはいけないので

とっとと寝る

そして５時過ぎ…

ミラーは既に回復して居て言葉もハッキリしている

「昨夜は酔っ払ってすみませんでした」

相変わらず電話での応対はとても礼儀正しい

しかし次に出た言葉が

「やはり辞退させていただきたく思います」だった

実は当店としてはもう一度チャンスをと考えてたが

彼女の決意は固い様だった

「じゃあ今回は縁がなかったという事で…」

と電話を切った


まあこれから梅雨も待っているし

何とか今居るレギュラーで頑張るしかないわね