111202
よくぞまあまた来てくれぬ鴨たちよはるか北から苦難の国へ
風立ちて朴の黄葉(もみぢ)はカラカラと青空高く踊り奏でぬ
隣人の知らざるままに燃え上がる桜紅葉の屋根越しに見ゆ
晩秋(おそあき)にな咲きそ咲きそ可憐なるタチツボスミレよイヌノフグリよ
青空に桂黄葉(もみぢ)の風に揺れやさしく歌ふ今はの歌を
人住むや古き家にぞ類ひなき櫨の紅葉は燃え盛りける
夕されば名残惜しみて秋薔薇の赤く咲きゐぬひとり静かに
黄に赤に闇を背おひてもみぢ見ゆ暮れ方早き晩秋の夕
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核含む冷たき雨に色深む野茨の実も桜落ち葉も
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―<七十年目の一二.八にこの国の未来を憂ふ>
誰一人責を取らざるこの国に救ひの道のありやなしやと
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垂れ籠めし鈍色(にびいろ)雲のかき消えて冬空晴れぬ秋雲浮かべ
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―<隣国の稀代の独裁者の死を聞きて>
その死また社会奉仕と湛山のかつて評せり山県の死を
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赤き実の熟れて輝き鳥たちに食はれゆきてぞいのち継がるる
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初冬(はつふゆ)にこの世惜しみぬ空蝉の生けるがごとく葉裏に潜み
季(とき)狂ひ菜花ちらほら咲く野辺に芒光りぬ日の傾けば
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フィナーレを目にも清(さや)かに演じつつ光り舞ひけり銀杏黄葉(もみぢ)の
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恐竜も目にせしならむ丈高き木々の冬陽に紅葉照り映ゆ
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今年ほどおほく聞きたる年はなしわが懐かしきズーズー弁を
この星のなにの狂ひて年の瀬に柳あをめるあはれあはれに
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ひさびさに十キロ走り括りえぬふるさと滅ぶ苦難の年を
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―<浅草吾妻橋で開かれし「オーガヒロフミ 青い十二月 展」(Gallery A Bientot)の詩の朗読会・パーティ・二次会に参加して>
金色のオブジェ仰ぎつ浅草で一夜満たさる友のアートに
*
蝋梅のはや咲き初めし年の瀬をわれ知らざればうろたへ渡る
一本(ひともと)の葦の茎にぞ飛び来たり瞬時に去りし鳥影惜しむ
*
冬の陽のビルの窓をば燃やしつつ年の瀬深く落ちゆきにけり
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―<山形県尾花沢の銀山温泉を訪ねて>
銀(しろがね)の世界を訪へばみちのくの静もる湖(うみ)に冬鳥満ちぬ
いにしへの姿とどむる銀(しろがね)の山の出湯に雪は降り積む
銀(しろがね)が山の出湯の明けぬればものみな深く雪に埋もるる
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昇る陽にスカイツリーの浮かび立つ苦難の年を見納むるごと
いいお年を!
お会いしていろいろお話を伺いたかったのですが、来年に持ち越してしまいました。
お元気で新年をお迎えください。