リッスン・トゥ・ハー

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いろは

2006-12-21 | 若者的詩作
悲しい話です覚悟はいいかい?

雨は、雪に変わる
でもすごい音楽を作った
ただいまと言うトーストにバターを塗るるるる

目の前に広がるのは誰も知ってる冬の町さ
どこにあるんだろう、どこにあるんだ
今は昨日の朝だ僕は窓を閉めて眠るるるる

ぱーぱーぱーぱっぱぱ
ぱっぱぱ

飛び出せジョニー気にしないで実ぐるみ全部剥がされちゃいな3

2006-12-20 | 東京半熟日記
(沖縄編24)

いたるところに猫がいる。
首里城だけでない。沖縄の、いたるところで猫を見た。
そういえばこの温かくてほわんとした島には猫が良く似合う。海の風を受けて目を閉じている。猫は二アと鳴く。尿のアンモニア臭。野良猫の親子。

のすぐ横をかすめて狭い階段を下りる。

呼びかけ。
「おねえさあん、おにいさん、マンゴージュース、ゴーヤージュースなんでもあります、あります。いかがですか、おねえさん、おにいさん・・・・・」
ずっと同じ音程で、複数の女性が一斉に。ちょっと怖いです。そのうち、お経に聞こえてきます。ゴーヤーアイス食べました。色のあたりがゴーヤーなんでしょうか。

後ろからバイクが対向車線にぐいんと食い込んで、追い抜かしていきます。そういうのにわたしはなんとなく東南アジアを感じます。いいじゃないか、なんなの自己責任なのさ。お鍋に運ばれる肉やじゃがいもや人参や玉ねぎの順番を間違えたからと言って、誰が文句を言うというのですか。どうも、ええ、例え下手ですけど何か?

たこそば、とやらをお昼にいただきます。店長お薦め、らしいので、それよろしく。いうて。冷しパスタでした。まあまあ、「おいしい」とはいえませんが、レタス、トマト、肉、トマトソース、混ぜてまぜて箸で啜る。ぴりりと辛くない。うんと、薄いですなあ。このパスタ。まあまま、タコライスのたれをパスタにかけてみる、というアイディア料理なのでしょうな。まあまま。太陽の光をさんさんと浴びたビキニギャルが、ふくよかなバスト悩ましげに寝そべっているのが尼崎湾という、感じでしょうか。どうも、ええ、例え下手ですけど何か?

つまりまずい。

あんパンとかばの季節2

2006-12-19 | リッスン・トゥ・ハー
かばの季節っていうのは、雪が降り続いてふっと晴れた日のことで、わたしはかばの季節が来るたびにあんパンを齧りながら日記を書く。日記は手書きで、わりと丁寧に思ったことを取り留めなく書き綴る。そのうち、最初の目的を忘れて、妙なタッチの絵を書いている事もある。念のために言えばそれは歓迎すべき取り留めなさだ。絵もできるだけ抽象的な無目的なものが良い。ただそれだけがかばの季節の過ごし方だ。そうこうしているうちにあんパンがなくなると、かばの季節は終りを告げる。突如として終わる、それもまたかばの季節らしくて良い。とわたしは思う。

ハンカチーフは万年雪の底に(後編

2006-12-19 | 掌編~短編
「うち、いっそのこと万年雪の底で死にたいわあ」
「やめてよ」
「だって凍えれるんやで、なんか気持ちよさそうやん」
 その日の日差しがきつ過ぎたのだ。じんじんと痛むほど頬は焦がしていく太陽を恨めしそうに見たあと、幸子は唐突に言い出す。扇いでも扇いでも汗は吹き出るし、確かにもう、凍えてしまいたい気持ちは十分分かる。とにかくいま、現在、何か冷たいものが無性に欲しかった。
「それにや、ずっと昔の雪に埋もれるんやで。なんかロマンチックや思わん?」
「いや、でも死ぬとか、言わんといてよ、ロマンチックやけど」
「なんか、永遠になれる感じやない?」
「あ~、そんな気がする」
「やろ」
「でも、そんなんいわんといてよ」
「いやいや、人間、いつ死ぬかわからんでよ」
「おっちゃんですかあなた」
「いや、ほんまそうよ」
「そうやけどなあ」
 幸子がとても遠くに感じてしまう。こんなに近くにいるのに、同じ空気を吸っているのに、同じ風を受けているのに、全然違う場所にいるみたいに、遠く遠くにいるみたいに感じる。とても不安になって、幸子の目をじっと見る。幸子は目を遠くに空のほうに向けている。その目が澄んでいて、とても綺麗だった。私よりずっとしっかりしてて、兄弟も多く面倒見がいい彼女は、頼られて今まで生きてきた。
「あんな、ハル」
「何?」
「うち、あんたに出会ってよかったよ」
 こんなことを真顔で言う。だから幸子は偉大だと思う。私は所詮照れ隠しに明け暮れる日々で、
「何よ、いきなり」
「なんとなく、言うときたかったの、万年雪の底で死ぬ前に」
「その機会はないから安心ですわ」
「わからんよ~」
「もう、本気で怒るで」
「怒ってもいいんや、これが青春なんや」
「あはは、まったく」
 ずっと友達だ。なにがあっても私たちはずっと。うん。


 私たちの学校にも、他の学校と同じように(といっても他の学校の事はそんなに知らないのだけれど)、一年を通して、音楽会や運動会や映画鑑賞会など色々と行事があって、その中でも生徒達に人気があったのが美人投票だった。美人投票はまず学級ごとにひとり選んで、その次に学年、最期に全員で、と勝ちあがりみたいな方法で、一番の美人を選ぶというもので、最期の投票はとても盛り上がった。応援演説みたいなことをし出す子もいて、例え選ばれなくても、いや、変に選ばれないほうが楽しめた。クラスごとに、選ばれたものはおやつを奢らなければならない、という面白い決まりもあって、まあ、おやつは結局先生が用意してくれるのだけど、でも、みんな、おやつをたくさん食べれるから喜んでいたというよりは、毎年やっている伝統行事を今年も行えるということ自体が嬉しかったのだ。もちろんおやつは大好きなんだけど。つまりみんな盛り上がりたかっただけなのかもしれない。なんていったって思春期なんですから。
 その美人投票が今年は中止になる。という噂が立った。そりゃ当然だろうなと思う。音楽会も運動会もそんなことをしている場合でない、という理由で次々に中止になっていたし、だいたい戦争中に、美人である事なんて関係ない。贅沢は敵だ。だけど、やっぱり誰もが、あーあ寂しいな、と思っていたように、私も寂しかった。口にこそ出さなかったが、それは、その話題を話すとき、間が持たずすぐに終わってしまう事が意味していた。誰だってあまりに寂しい事には触れたくない。ずっと続いてたのにな。まあ、仕方ないけどさ。米兵め。米兵め。米兵め。と私たちは見たことのない敵を憎み罵った。罵ることで何とか気を紛らわせた。
 それが単なる噂で、やっぱり例年通り開催される、と聞いた時には、私も幸子も思わず悲鳴を上げて抱きあったし、やっぱり楽しい行事の一つだったから、誰もが嬉しがっていた。キミという、普段おとなしい子など、嬉しくて廊下を走り歌うように大声で学校中に伝えてまわり、先生から大目玉を食らっていた。要するに、みんなそれぐらい嬉しかったのだ。かなり大袈裟だというかもしれないが、人生捨てたものじゃないとさえ思えた。


 沖縄は要所として有効な場所である。そこを拠点に、日本へ、中国へ、アジアへ、進行することができる。だからまず、次第に劣勢になる日本を、徹底的に打ちのめす為に、米軍は沖縄を占領する必要があった。
 日本としても、本州に進行する米軍に十分対応できる準備を整えるためにも、沖縄で足止めを食らわせたかった。沖縄で食い止めている間に対米の防御体制を築けると考えていた。この時点でもまだ、ほんの一握りの者以外日本の勝利を疑っているものはいなかった。
 いわば沖縄は、捨て駒にされたわけだ。日本の勝利の為なら沖縄ぐらい。そもそも日本でなかったわけであるし、日本になったのはごくごく最近だ。だから、捨て駒として使う、そうしやすい場所であった。そのための準備も着々と整えられていた。
 そして米軍が沖縄に上陸を開始する。


 美人投票は当日は、背の高いさとうきびがなんだかやけに揺れていた。
 単に風が強かったからで、だけど、風の強いのはいつものことだったし、さとうきびが揺れるのもいつものことだったから、私は特に気にも止めなかった。ただ、いつもよりいっそう強い気がして、うわあ、今日は風つよそうやなア、と寝ぼけ眼で驚いてしまった。そして、ああ、今日は美人投票だなあ、誰に決まるのかなア。
 寮での朝の忙しなさはいつもと同じで、私は寝坊をしてしまったし、幸子は櫛がない、といって騒いでいたし、薄いお粥を食べて、あんみつなんかをおなかいっぱい食べたいなア、とかぼやきつつ幸子と学校までの道を走った。学校は全寮制で、私たちはすぐ近くの寮で生活していた。「今年は新入生の子は綺麗な子が多そうやからね、わからへんわ」「そうやなあ、は組の栄子さんなんかどう?」「ダメダメ、あの子、椅子に座るとき、よっこらへ、って言うから」「よっこらへ?」「そうそう、この前自然によっこらへって」「あはははっは」「あははは」とか笑いながら私たちは寮から学校へ、そして、廊下をささささと控えめに走り、教室の扉を勢いよく開けた。ガラガラという音がやけに大きく聞こえた。
「おはよー」その挨拶だけがこだまするように、教室はいたって静かだった。美人投票のための投票箱や、誰が候補になっているかが黒板に書かれていることもなかった。投票箱の替わりに、普段時間がすぎてもなかなか教室にやってくることはない三段先生がすでに立っていた。先生は、事態を飲み込めない幸子と私を見て「席に着け」と小さく言った。そのひときわ小さな声でさえどこまでも響いていきそうだった。いつもだったら、こんな風に遅刻したらきっと笑い声に包まれているに違いないのに、誰もおしゃべりしていないし、笑ってもいない、教室の空気は張り詰めていた。
 しばらくして、厳しい表情で先生がクラスメイトの名前を読み上げる。動員命令だった。生徒の誰もが表情はなかった。最初は何のことか分からなかった。動員て?と幸子は前後左右の子に尋ねた。誰もが死んだように動かなかった。だって、三重にに嫌な事が起こったんだから。美人投票がなくなったから。戦場に行かなければならないから。卒業式は延期、もしくは中止だろう。一瞬にして不幸のどん底みたいな気分になった。そりゃ、射撃訓練はしていたし、天皇様のために戦うことは喜ばしいことだけれど、けれど、けれど実際私たちまで、戦う事になって日本は大丈夫なのでしょうか。とはいえ、君たちの役割は負傷兵の看護、食事作り運び、水汲みなどの雑用係だ、と三段先生は説明され少しほっとした。まあ、最前線でなく、後ろのほうで兵隊さんのお手伝いをするのかあ、と少し安心した。大丈夫、兵隊さんがすぐに米兵なんて追っ払ってくれるから、日本軍の兵隊さんは恰好よくて優しいんだから、そう信じていたからこそ、誰も悲観せずに動員を受け入れることができた。というよりも、そうやって自分を無理やり納得させた。

 すぐに実家に帰る。両親は家にいて、すでに話を聞いているのだろう。準備をしていてくれた。父がなんとなく寂しそうにしていたので私は陽気に言う。
「あたしだってぶっ倒したるよ、射撃訓練だってしてるんやから」
「女の子がぶっ倒したるなんていう言葉使っちゃいけません」
 母が口を酸っぱくして言う。
「そんなんええやん。女の子やからとかいうとる場合違うし」
「理屈だけは立派なんやから」
「へへへ」と笑うと、
「ハル、気をつけろよ」と黙っていた父がつぶやいた。
「わかってる」私はできるだけ明るく返す。

 動員された誰もが、ちょっとお手伝いをするぐらいで、ちょっとした暇に勉強はできると信じていた。だから、文房具を荷物に入れて、持っていった。普段勉強なんて嫌いだと言っている幸子でさえ、このときばかりは文房具を荷物につめた。いつなんどきも、身だしなみを整える事は、ひめゆりの学徒として当り前のことだったから、櫛などの日用品も持っていった。幸子はお気に入りの小説を持っていこうかと最後まで悩んでいた。結局、重いし、読んでいる場合ではないからという理由で、持っていくのは止めたようだった。
 ちゃんと無事帰ってきてこようね。そしたら康成かしたげるから、と幸子は誰にも内緒で言った。そして私たちはお互いのハンカチーフを取替えっこした。これお守り、絶対なくしたらあかんよ。私たちずっと友達だからね。分かってる。その台詞、私のほうが早く言ったし。口には出してないけどネ。


 配備された場所は土の中だった。建物はない。自然にできている、あるいは、土を掘り返して作った簡単な穴倉だった。すぐに泥だらけになる。名誉の汚れ、とか言って笑い飛ばす程度ではすまなかった。あれ、名誉の汚れと言って笑っていた頃はいつだっけ。ずっとずっと昔のような気がするけど。着替えても着替えてもすぐに泥だらけになる。それでも、ひめゆりの生徒たるものは、と泥のついた着替えを少し乾かして着る。穴の外ではひっきりなしに銃声が響いていた。燃える音。ごうごうと燃える音。燃やし尽くされていく音。夜になっても朝になってももう一度夜になっても音は鳴り止まなかった。波の音なんて聞こえやしない。負傷した兵隊さんが次から次へと、やってくる。私たちは兵隊さんを泥だらけのベットの上で、泥だらけの包帯で手当てして、手当てしてに明け暮れて、そのうち眠る間もなくなっていく。食べるものも水もなくなっていく。水を汲みにいくのは危険な外を歩かなければならなかった。怒声、蛆の這う音、何がなんだか分からなくなる。眠気など全く起こらない。爆発音。夜などない、昼でも壕の中には太陽の光など届かない。
 そして、ろ組で水泳が上手な米子さんが、ひめゆり最初の犠牲者となる。泣いた。みなが泣いていた。感情は伝染する。兵隊さんだって、泣いてくれた。全員が全員ではないけれど。
 二人目、三人目、先生方も、そのうち、誰かが死んでも悲しくなくなった。次は自分だ。次は。やはり感情は伝染する。人間は醜い、いや素晴らしい、死に慣れてしまったんだ。いや、悲しかったが、悲しんでいる暇などなくなってしまったということもある。何せ次から次へと重症の兵隊さんが運ばれてくる。水をくれ、水をくれ、痛い、学生さん、俺を殺してくれ、いっそのこと俺を殺してくれ。この痛みがお前にわかるものか。いつしか、死はそのうち当然のようにやってくるものとして、受け入れることができるようになる。死に対する恐怖はだんだんと薄くなっていく。その機会が早く訪れるように願うこともあった。長く生きているだけつらい思いをする。人のことなど、だんだんどうでもよくなっていく。時間が流れるの感覚がなくなっていく。


「解散命令」が出される。「君たちは今日まで良く頑張ってくれた。今日からは自分の判断で行動するように」と、敵の前に放り出される事となる。自分の判断って?誰も何もできない。私は途方に暮れた。実質死ねと言われているようなものだ。まだ銃声が響いていたし、誰がどこにいるのかもわからない。隣の壕に誰がいるのか、誰がすでに死んでしまったのか。もう情報も何も流れてこない。いちいち把握している暇はなかった。水が飲みたい。なぜこんなにものどが渇くのだろう。もっともっと飲んでおけばよかった。排泄物の、腐った死体の、泥の、とかあまりなじみのない匂いは、潮の匂いだけじゃ覆い隠せない。もう、感覚が麻痺している。麻痺しない子はとうに死んでしまった。麻痺していなかったらこんなところで耐えられる訳がない。手榴弾で自ら命を絶った。ただ、私はひたすら、もう一度幸子に会いたい一心で、必死にしがみついた。変な話、家族よりも幸子だった。ほかに何も考えなかった。もしかしたら幸子も同じことを考えているのかもしれない。そう考える事が私の生きる理由となった。

やがて夜は明ける。同じように太陽は狭くちっぽけな島を照らす。温めて、すぐに暑くなる。汗が滴り落ちる、ぽたぽたと泥を湿らす。ああ、私はまだ、生きている。ふらふらと歩いていく、どこに?私はいったいどこに向かえばいいのでしょう。目の前に影。白い。誰?幸子?ガンジー?ねえ、返事してよ。ガンジーでしょ。あたしと、また、康成の、万年雪の話をしようよ。ねえ、幸子。


 泥まみれになって転がっている幸子の眼鏡を拾って私は、交換したハンカチーフでそっと包む。そして私の鞄の奥の奥に、絶対になくさないようにそれを沈めておくのです。太陽も届かない私の鞄の奥の奥は、きっと万年雪の底ぐらい冷たいはずだし。



我に返る。
いつの間にやら老婆のまわりに人はいない。目が合う。老婆は何かをわたしに語りかけようとしている。胸が高鳴っている。苦しくて、わたしは怖くなって逃出す。今にも甦ってくるんだ。夢じゃない。わたしには受け止めるだけの体勢がなっていなかった。彼女はきっと話しても話しても話したりないんだ。今、頭の中を巡った事は、もちろん私の想像で、ディテールは知らない。でも、もしかしたらこういう女の子が戦場にいたのかもしれない。わたしの知らない沖縄の方言でこんなふうにおしゃべりしていたのかもしれない。

わたしは戦争を知らないし、完全に平和ボケであって、戦争の脅威など微塵も感じない。そんな奴が想像で好き勝手に書きやがって、実際は、そんな生易しいもんじゃない、と怒り出す人がいるかもしれないけど、でも、わたしはこの話を一人でも多くの人に読んでもらいたいと思った。こんな事があったかもしれないということを知ってもらいたいと思った。

外に出るころには、鼓動は落ち着いている。とたんに日差しが照りつける。ああ、万年雪に触りたいなア。祈念記の前、あいかわらずの修学旅行生のシャッター音にどきりとなる。

壕がまた、口を広げる、気がしたんだ。

パンチパーマを俺に植え付けろ(直訳)

2006-12-18 | 若者的詩作
パンチパーマはキュートな天体
本当に?
聞こえるパーマの叫びが
「父さんどーです、まま一杯」「いやいや」

ママは押入れから出した冬物のパーマを
あたしにそっとかけながらそう教えてくれた

ありったけのパンチパーマを俺に植え付けろ!
そしたらお前にもパンチパーマをおすそ分け
なかば必然的にネ

俺、パンチ生まれパーマ育ち、悪そなパンチはだいたい友だち
だけど悲しくなる時もある俺を癒してくれパーマ

パーマパーマパーマ。
街はパーマであふれ、ピカピカ光って綺麗だった

ありったけのパンチパーマを俺に植え付けろ!
そしたらお前にもパンチパーマをおすそ分け
なかば必然的にネ

ハンカチーフは万年雪の底に(前編

2006-12-18 | 掌編~短編
ぽっかりと空いた空間に響いていく修学旅行生のシャッター音。
きっと何枚も何枚もシャッターを押され続けているに違いない。もちろん、それ自体、どうこういうような問題ではない。花を供える。手を合わせる。普段は何も信じていないのに、自分の都合で手を合わせてみたり、拍子を打ってみたり、忙しない日本人である事を受け入れる。すると日差しが途切れる。届いたのか。木や植物が生い茂っている、日差しが届かないところにきた、それだけのこと。蝉が鳴いている。気がする。壕がさらに大きく口を広げる。気がする。戦場へ動員された亡くなった200余名の名前が刻んである。その石に太陽が反射して光っている。

資料館に立ち寄る。数々のパネルの前をゆっくり歩く。壕を復元したものがあるそばにしきりに沖縄の言葉で説明する老婆がいる。ギャラリーはその説明を聞いてうなづいたり、低く唸ったり、ひどい、とつぶやいたりする。ギャラリーが膨らむごとに熱を帯びてくる老婆がいる。この資料館では、当時を知る人が直接そのときの様子を語ってくれる。時々分からない言葉が混じる。でも、その息づかいや、身振り手振りで語っている様子は、わたしを当時に送り込む。戻る。ここまで、資料館の内部にまで、湿った壕の奥まで、響いてくるのは蝉の鳴き声か、傷づいた兵隊さんの悲鳴か、爆弾の爆発する振動か。歌声。「海ゆかば」の少女たちの斉唱が響いてくる。戦場で?爆弾の発着音が響くたびに2本のロウソクの炎が揺れる。ロウソクは少女たちの頬を弱々しく照らしている。戦場で、4日遅れの卒業式が執り行われている。



1945年。



「あかんわ、康成が、あかんわ」
「なに?康成て。どうしたん?」
「だから、あかんねんて、面白すぎんねんて」
「はあ」
 幸子は勢い良く教室の扉を開け、中に入る。
 どっかどっかと存在感を示しながら教室を進み、席につく。とても乱暴に坐るので眼鏡がずれる。彼女はそれを人差し指で慎重に直す。その仕草はみんなからおっさん臭いといって笑われているが、どうも無意識でやってしまうらしいのだから仕方ない。あらあらまたやってるわ、と思いながら私も席に着く。もう春の強い日差しが窓から差し込んで、少し汗ばんだ額を手の平で拭う。教室を包み込んでいるのは少女たちの汗の匂い。教室の乾いた木の匂い。食べたばかりの昼ごはんの匂い、はとても薄い。

「違うて、そんな軽いもんじゃないて」
「何が違うんよ」
「つうか康成てうちの細胞に組み込まれとるみたいなとこあるやん?」
「いや、知らんけど」
「あんねんて、ほんでな、つうかあんた雪国読んでんねやろうな?」
「読んでへんけど」
「阿呆は嫌いじゃ」
「阿呆て、容赦ないなあ、頭良くないけどさあ」
「ほな、ええからいっぺん読んでみって雪国」
「雪がでてくんの?」
「まったくこれだからガキは、大人な人間ドラマやで」
「はいはい、で、でてくんの?」
「そらそうやね」
「雪て白いんやろなあ」
「そらそうやろなあ」
「ガンジーは見たことある?」
「いや。ハル、あんたは?」
「いや、ないけどなあ、なんかめちゃ冷たいんやろ?」
「うん。寒いことは一年中積もってんねんて、万年雪とかいうて、ずっと昔に積もった雪がのこっとるらしいわ」
「へえ、ずっと昔の。ちょっとロマンチックやね」
「一度でええから触ってみたいなあ、雪」
 そう言って幸子はふうと息を吐き、何気なく黒板を見る。
 ほお杖ついていた私もつられてそちらに目をやる。
 クマゼミが鳴き声を張り上げる。

 撃ちてしやまん
 
 日本書紀から引用された「敵を撃ち殺さずにおくものか」という意味らしい。
 白いチョークで書きなぐるようにその文字は並んでいる。そこだけ浮き出ているように見える。なんというか、黒板と私たちの間の空間に存在するように見える。つまり、私たちの意識に貼り付けてあるように思える。まっさらの黒板消しでぬぐってもぬぐっても消えやしない。永遠に、いや永遠ではないかもしれない、いずれ日本がこの戦争に勝って、平和になったなら、古びた黒板消しでも簡単に消えてしまうのかもしれない。みんなで何度も何度も、声がでなくなるまで読み上げた。だから眠っていても読むことができる、幸子はそう言っていた。誰もが実際そうだった。そうして、その気持ちを遠く戦場で戦う兵隊さんに届けるんだ。そうすれば、必ずこの戦いに勝てるのだから。
 私はため息をつくようにあさってを見る。いや日本の勝利を疑っているわけじゃないし。ちょっと、うんざりしただけ、これはいわゆる青春特有の憂鬱だし。そうだ、そうに違いない。青春とは迷う事である。幸子と目が合う、にこりと笑う。私は、少し焦って、やや遅れてにこりと笑う。どうしてか幸子が遠くにいるように見えたのだ。もちろん気のせいだったけど。教室ではクラスメイトの話し声が、こんなにも楽しそうに響いている。いつもどおり何ひとつ変わらない。
 次の授業、昼休み後の5時間目は、郊外の練兵場で射撃訓練だった。

 振動にはすぐに慣れた。
 最初は怖かった振動も何発か打てばすぐに慣れる。意外と簡単に機関銃は操れる。もう、ちょっとした射撃手のつもりだったしあたしなんて。誰もがそう感じているのかもしれない。まだ力の弱い、物資も不足し、ろくに栄養だって摂っていないので、体力もない女学生でも簡単に操れるようにできている。目をギラつかせて、狙いを定め、引き金を引く。米兵め。ズドン、ズドン、と響く。この振動だ。身体の底にまで響いてくる。この振動はこれから奪う命の震えなのかもしれない。ぐるんと身体を揺らして命を奪う。一瞬だけ何も聞こえなくなって、耳が痛くなる。すぐに蝉が鳴きだす。ほんの少しだけ恍惚感も感じる。的をバラバラにしたときに、なんともいえない快感が体を包む。周りのみんなが褒め称えてくれる。米兵を沖縄に上陸させるな。沖縄は私たちが守る。わたしたちに怖いものなど何ひとつないし。なんだってできるし。なんにだってなれるんだ。
 セーラー服が機関銃の錆や土で汚れてしまう。低い体勢になって撃つのだから仕方ない。それは、名誉の汚れだ、ということにしている。みんなほんとは汚したくないくせに。なんでもない汚れを、名誉の汚れだといって喜ぶ。このセーラー服にあこがれて学校に入ってくる子だっているんだから。セーラー服は上級生が下級生のために縫うのが伝統だった。あこがれの綺麗なおねえ達が私のために縫ってくれるなんて。ああ嬉しい、嬉しい。誰かは、入学までの間、何度も何度も出来たてのセーラー服を着て、お母さんに怒られたとかなんとか。私も文学好きの幸子だって例外ではない。できれば綺麗にしておきたいに決まっている。みんな強がっているんだ。仕方ない、これは戦争だから。これは戦争だから。贅沢は敵だ。汚れが何だ。兵隊さんは、泥まみれで戦っているんだ。それを思えばちょっとの埃ぐらい、泥ぐらい、錆ぐらい。何かあるごとに大人はその言葉を口にする。だから、名誉の汚れだあはは、と私たちは笑う。笑顔を決して絶やしたくない。だってまだ箸が転げても笑う年頃なんだし。楽しいことがこれからいくらでも待ってるんだし。だからちょっとぐらい、セーラー服が汚れるぐらい我慢してあげる。
 最近では授業はなくなった。学校ですることといえば、たいてい陣地構築だった。その合間に農業をして食料を作る。それから看護訓練、たまに射撃訓練、どれもまあ戦争に関すること。本当はもっと勉強がしたい。私は教師になりたいのだし、私の恩師の島袋先生のような、素敵な先生になりたいのだし、そのためにはしっかり勉強しなくちゃ。戦争が終わったらこの分を取り返さなきゃ。うん。

「やめーい」
 という三段先生の号令で私は我に返る。あかんわ、ぼうっとしてた。
 皆が射撃を止める。額に汗が滴る。埃まみれの額を手で拭う。空は青く、ちいさい雲がひとつだけ、ゆっくりと優雅に流れていく。ゆらゆら泳ぐくらげのような形をしている。拾い海の上に浮かぶ小さな島のようにも見える。なんとなく危なっかしいや。あの小さな島は、弱々しくてすぐに消えてしまいそうだ。そう思うとなんだか急に不安になる。消えないで、ずっとずっと消えちゃダメだから。そんな乙女心分かっていただきたい是非。強い風が吹いて、前髪が舞い上がる。先生は「よし」「終了」とつづけて短く言う。

 訓練が終わって私たちは学校に戻る。次の時間は卒業式の練習だ。楽しいことのひとつ。まぎれもなく楽しいことのひとつ。一度しかない卒業式、あまり派手にできないことはわかっているけど、それでもちゃんと卒業式をしたかった。みんなで「別れの歌」を歌って、手紙とか好きなものを交換するの。できることなら、そういうちゃんとした、ずっと昔からあったような、卒業生として涙のひとつでも流せるような卒業式をしてみたいなア。あこがれなんだ、みんなと歌って泣いて卒業。でも、あーあ、もう卒業なのかア、とかそんなことをつぶやいていたら、誰からともなく歌い出す。いつものことだ。本当は歌など歌ってはいけないのだけれど、ましてや英語がでてくる歌など。歌を歌っている場合ではないのだけれど、射撃訓練の帰り、誰からともなく歌い出す。やがて合唱になる。ハローもグッバイもサンキューも言わなくなって。そのうち、誰かが手を打つ、手拍子が、丘にたんたんたんと鳴る。踊るように私たちは、歌いながら歩いていく。この歌も兵隊さんに届くのかしら。みんなで歌うのだから、届くのかしら。でももし届いたなら怒るかしら。いいじゃない、いい歌だもの、いい歌だなあ、て目を細めてくれるような人と結婚したいなア。うん。それ重要だし。ふふ、幸子ったら、眼鏡ずれずれだし。「ガンジー、眼鏡」て教えてあげる。「あらあら」と直す姿はとても可愛らしくて、キュンてなる。幸子が「これ誰にも言わんといて、うち、好きな人ができてもた」と私だけに告白してくれた、その相手、三段先生は後ろ、少し離れて歩いている。私たちの歌が確実に聞こえているはずなのに、この、射撃訓練の帰り道で歌う事に関しては何も言わない。それどころか、誰も歌いださない日など「今日は静かだな」とつぶやいて、歌うのを促したりする。そんな時少しだけ三段先生の事がわからなくなる。どうして先生は歌っちゃいけない、とか、歌っている暇があったら訓練のひとつでもしてみろ、とか注意しないんだろう。そりゃあ歌ってたら楽しい、けど先生だし。そんなところが幸子は好きなのかなあ。まあいいけどね。こんなにもすれ違ってそれぞれに歩いていく。今日は風が強すぎて歌があまり聞こえないや。めずらしく雨が降るのかな。


息継ぎをする金魚

2006-12-17 | リッスン・トゥ・ハー
前略

あなたのお気に入りのゆらゆらとゆれる海ぶどうがちょうど熟れてきました。ひとつつまみプチプチという音を立てて噛み潰します。塩辛くて食べれたもんじゃない。
だいぶ慣れましたが水温が高すぎて、鱗もろともを脱いでしまいたい気分です。
嫌われ者のツノザメがやってくると、騒がしい海は静まり返る。
そういうときに差し込む太陽の光は、とても美しい。

憶えてないですか?そういうささいなひとつひとつを忘れてしまいますか?

なんとなく息が詰まりそうだから、このきらきら光る宝石みたいな水面から顔を出し、息継ぎをしようと思います。そうしたらまた深く深く潜っていけそうだし。

潮の流れが突然変わって、いつか、また会うことができたら、それはとても素敵な事ですね。

飛び出せジョニー気にしないで実ぐるみ全部剥がされちゃいな2

2006-12-17 | 東京半熟日記
(沖縄編23)

係員は誰も彼も琉球衣装に身を包み、記念撮影でもしようものなら率先して手伝ってくれます。
改めまして首里城。何の変哲も無さそうで、意外と細部に琉球だね。なんでしょうか。しかしわたしにはここがなぜ世界遺産に指定されているのか分かりません。昨日行きました、今帰仁城跡ならわかります、あの石積みはいかにも価値がありそうだし。それに比べるとここ首里城は、地味というか、おとなしいというか、いたって普通。のように思えるのです。きっと、戦争でなくなった、というところが選考員の心の琴線をはじいたのでしょう。その建築様式が貴重だといわれましても、分かり難いです。観光客はあふれんばかりやけど。

歴代の王の絵がずらっと並んで飾って在ります。順を追って、時代を追って、王が坐っている、周りに囲む家来。不思議な事に、時代が新しくなるにつれ、王様の大きさが大きくなっていきます。初代は家来と同じぐらい、それでも気持ち大きいかな、というぐらい。に対して、最期のほうなんて、3倍ほどあるでよしかし。どんだけええもんたべて進化してんねんな王。きっと権力の象徴として大きくあるべきだという考えにいたったかな。神だ、王は神だからつよいんだぞーでかいんだぞー。これを見ると昔のほうが何かアットホームな雰囲気だったのかもしれません。あるいは、家来のほうが縮んだのかもしれない。ええもんを王様に全部食い尽くされて、栄養が足りず、縮んだのかもしれません。うんそうか。

王様が坐っていたという場所。
どういう風に坐っていたのか、坐り方は分からない、と係員の人が解説してはります。
あぐらだったのか、足を立てていたのか、正座だったのか。

あ、わかりました。体育座りです。
で、家来からなんかの報告がありますよね。
「・・・・ということです、王様、これでよろしいでしょうか?」
「うん!」
すっごい素直な良い返事しそうやん。
何にもいわんとただなんか言われたら「うん!」と体育座りの鼻垂れ坊主。

そら、滅びるわ。

飛び出せジョニー気にしないで実ぐるみ全部剥がされちゃいな1

2006-12-16 | 東京半熟日記
(沖縄編22)

ダニエルのクルーがおるー。
ダニエルのカルーがTV撮影でそのクルーが首里城におるー。
ダニエルのカリーはインド風カリーでルーのスパイスーがようきいとるー。

タレントのダニエル・カールさんが首里城で撮影されてました。
ダニエルやダニエルや、と50回ぐらいつぶやいてミーハーなところをアピールした後、何事もなかったような顔して、首里城登る。ダニエルがついてくるー。ちょっと男子こっちこんといて。ダニエルは普通の洋風カリー風のおっさんでした。

首里城年間パスポートて!リピーターがおんねや!わたし一生に一度で十分そうですけど。なんかイベントでもするのでしょうかね。だからでしょうね。そういうてたら、今日も踊りがあるそうで、優雅な舞いみせてもらいましょう、テント風でぶっ飛びそう。がたがたいうとるから怖くて集中できんよ。琉球舞踊に。
四つ竹、という舞いを見る。ふたり女性がゆっくりと舞台中央へ、さんしんの音、そして、綺麗な衣装を身にまとい、手にカスタネットみたいな小さな打楽器を持ち、スローモーションで、動く。口元には常に微笑を湛え、ええ、問題なく優雅です。ひざと手の一部の関節しか動かしていないように、ロボットのような自然の動きじゃない。カチンカチンと鳴らす打楽器はきっと貝が閉じる音を表現しているのだと思った。波が寄せては返すように、繰り返し、優雅に帰っていった。殿様のためだけにこれを舞うのだったら、さぞ優雅なものでしょうね。

日本、琉球、中国の建築様式が融合したという城の内部へ。
ダニエルのクルーもつづいてくるー。
口元に微笑湛えてるー。

何かでっかい事してやろうきっとでっかい事してやろう2

2006-12-15 | 東京半熟日記
(沖縄編21)

小高い丘のホテルの一室には、小さなベランダがついていて、見晴らしがいいのでした。

遠くに光るあの灯台は、わたしが登った灯台でしょうか。光をまわして舟を誘う。向うの少し固まった光はちゅら海水族館のあたりでしょうか。小さな光が点々と、点々と、どこまでもどこまでも、空はあいにく雲が出てて、でも雲間から月が綺麗にほぼ満月。ほのかに温かい潮風。ふいにほんの少し切なくなります。いや、たまらなく切なくなるのです。センチメンタル過剰。半ば必然的にね。

この旅も、いつかは終わってしまうのかな。そりゃそうだろう。でも、大切なものを見つけたような気がするし。閉じ込めた想いみたいだ。ふらふらと回っている灯台の守も眠る。暴走族が走る。けたたましいエンジン音をたてながら。風が思い出させる。そうだ、あの時確かにわたしは聞いた、ひめゆりの塔で、透明少女の声が聞こえたんだよ。笑っていた。楽しそうに笑っていたわたしたちと何ひとつ変わらない笑い声だった。透き通って見えるのだ。狂った街角きらきら、憂いてる俺は夏だった風景、早足で染まっていく。

なんだかずっとこうしてたいや。
ベランダの隅にうずくまって石みたいにじっと固まってしまいたいわあ。

とか言いつつ風邪ひくからすぐにひっこみましたけど。
大人やから。

何かでっかい事してやろうきっとでっかい事してやろう1

2006-12-13 | 東京半熟日記
(沖縄編20)

生活感の漂う昭和薫るホテルへ。
だって、ゲームコーナーがあるんですよ、インベーダーゲームとかありそうな年季の入った。フロントのすぐ横に。それはビーチのそば、ちょっと小高い丘の上にありまして、さらにすっごい高いところの部屋でして、しかも、なんか広いやん、うわ、ちょっと得した気分。で、寝転んだあと、ビーチ沿いの小さな繁華街へ、繰り出せ飲めや歌えや踊れやのために。

どこに入りましょうかしら、てくてくと歩いていきますと、なんだか雰囲気の違う、居酒屋がありました。創作居酒屋。店のお兄さんが、どうですか、見ていってください。メニュー見てください。現在アフリカの太鼓ライブやってます。だって。へえ、そういえば、とんとことんとことんとことんとこ。聞こえてくるよ。この音は、この町のどこから聞こえてくるの。沖縄料理とイタリア料理の融合だ。では、ちょっとお邪魔致しましょうか。と、案内されるままに、坐りました座敷。たいこがものごっつでかい音でなり続けています。店員さんがなんか説明してはるけど、何も聞こえません。わたしが注文しますと、人の良さそうな店員さんに「あ?」言われた。ぼそぼそ言うもんやから。まあまあ、では泡盛ですなあ。ようわからんけど水割りで。そうだ、名物の海ぶどうを食べてみよう。プチプチの食感が心地よい。それと、タコライスとかいうやつ。結局タコスのライスなのかな。なんか響いてくる太鼓の音で味分からんよ。泡盛薄いよ。わたし酒弱いのに。薄いよ。

で、なんか全体的に中途半端なまま店出たよ。誰のせい?

ちょっと、中途半端だったので、そのあと普通の居酒屋に行って、ソーメンチャンプルー(かなり気に入った)だの、豚足だの、おまちかねのとうふようだのを、たっぷりいただきました。40度の古酒をいただきました。これがとろんとしててかっとくるんだけど、後味がすっきりしてて、美味しい。上手に酔えますね。食も進む、御酒も進む。飲めないのに。

あれあれ、あたし、結構酔ってしまったの、誰のせい?
ぢゃ、かえる。

つけて続くフューチャー鳴らす(久しぶりだぜ)

2006-12-11 | 東京半熟日記
(沖縄編19)

選挙カーが動き出している。島中響き渡るマニフェスト。
かかっかと笑いながらわたしはフューチャーを鳴らす。
確かに、鳴らしたんだ。アクセルを踏み込め。


なきじんじょうあと。今帰仁城跡。世界遺産。石を積み上げただけでこの高さへ。いつの時代に誰が作ったのか不明。ただ、城跡だけが残っている。
猫が左右に並んでいる入り口。奴らは侵入者を観察しているんだ。眠そうにしているのはカモフラージュなんだ。そうだそうに違いない。油断したらのどを掻っ切られるぞ!
堂々たる石で組まれた城跡。夕方の閉館時間ぎりぎりに飛び込んで、その頂から眺める広がる海。そこを治めていた殿様も、こうやって、ワインを片手に、ペルシャ猫をなでながら、眺めていたんでしょうか。ワインは泡盛かもしれません。でもペルシャ猫は決して譲りませんからそのつもりでよろしく。

閉館時間近いこともあって、観光客まばらで、数えるぐらいしかいない、自然に生まれる一体感。この城を守るためにわたしたちは集められたわけで、ほら、そこ、一年、ぼやっとしとんちゃう?たらたらしてると、ヤキいれるよ。マジで。みたいな部活の先輩後輩となりて。わたしとそこらへんあるいてるおっさんとは。
お父さん、お母さん、女の子と男の子、4人が織り成す家族。お父さんはカメラマニアでしょうか、様々な角度から、固定して、一眼レフというやつでしょうか高そうなカメラのシャッターを切る。あっちむいて、こっちむいて、あれ背景に、これ背景に。日本人ぽいなあ、なんか愛らしい。子どもが飽きもせず、表情を作る。お母さんももっと笑って、なんかいっちゃって。時代はデジカメでいかに自然な姿をそのまま切り取るれるか、に明け暮れるわたしたちなのに。わたしはデジカメもってないけど。彼らは今なお、一瞬の輝きを信じて、固定に明け暮れる。素晴らしいじゃないですか。妙に感心したのです。うん。好き。

おっぱ牛乳。とても気になるネーミングの牛乳。
いや、そのへんの地名がおっぱていうことそれだけですよ。

月見団子を炬燵に上に

2006-12-10 | 掌編~短編
毎年そうだけど私は寒がりで炬燵が大好きだから、まだ昼間は暑さが残る秋のはじめに私は炬燵を出す。半ば儀式みたいに決まって同じ頃に。
出すといっても狭い押入れの底にある炬燵用布団を出してきて、年中部屋の中央にある炬燵机に、組み込むだけなのだけれど。時間にしてほんの10分ぐらいな、あっという間に出来上がる。
そういうわけで、ギンガムチェックが可愛らしい一人用炬燵がそれから約半年い座る。
炬燵があると、たいていの夜はそのじっくりとしたぬくもりの中で眠ってしまう。気付いたら2時や、3時になっていて、もう動きたくなくてそのまま朝を迎える。自慢じゃないが私は炬燵にあたりながら眠る方法を心得ている。ちょうどいい温度の場所を探し当て、炬燵布団に包まって眠る。だから風邪も引かないし、関節も痛くならない。実家にいるときには、そんなこと知るよしもない母なんかに「風邪を引くから布団で眠りなさい」などとうるさく言われたものだが、ひとり暮らしに邪魔ものはいない。堂々といつまでも炬燵で眠れる事が冬の私の数少ない楽しみなのだ。
炬燵は温かくて、そして、どこか懐かしい匂いがして、その上に色んなものを置いて、かなり大袈裟だけどまるで世界の中心みたいな気がする。

十五夜を迎える、というニュースが流れる。
それでも今年は遅いほうだ。いつもならもうすでに炬燵で眠る事を日常としているような時期なのに。何があったというわけでもない。炬燵を出すきっかけが逃してしまったということかもしれない。
私は無類の炬燵好きだが、意味なく、理由なく炬燵を出したりはしない。毎年何か炬燵を出そうとするに値するきっかけがある。
例えば、2年前なら、その時私には恋人がいて、彼が私の部屋にやってきていて、まああれこれあってふたりともちょうど服を身につけていなくて、さむいなあ、とつぶやきあったから。
例えば、去年なら、海に来ていて、ヤドカリをみつけて、彼あるいは彼女をとてもうらやましく思って、私もどこかに篭りたい、と思ったから。
今年は、なんだか寒いわねあらそういえばまだ炬燵出してないや、と思い出したことをきっかけに今用意している、こんなに遅くなってしまった。だから何というわけではないのだけれど。わたしにとっては珍しい事なのだ。実家にいた時だって、何らかのきっかけがあってまだ早すぎるという家族の反対を押し切って、おせっかいに自室はおろか一階、二階の居間の分、とにかく存在するだけ出していたのだ。

天気予報士は晴れをしきりに嬉しがっている。満月が見えます。日本中のどこからでも満月を拝む事ができます。誰もが満月のことを待ち望んでいるかのように、嬉しがっている。私は満月が好きでよく見に行くんですよ。今日ももちろん出かけますよ、みなさんも出かけてみてはいかがでしょうか、呼びかけてくる。

炬燵はすぐに用意できて、暖かい火が灯る。久々のゆっくりとしたぬくもりを満喫しながら私は満月でも見に月に行こうかしら、そんな途方もないようなことを考えながら、うとうとと、なっていた。テレビを消す。やってくる眠気に全く逆らわずに、うとうととなっていた。少しの間私は社会的に引き篭もろう、探さないで下さい、必ず帰ってきますから。あんまり気持ちが良かったのでそう決めたほどだ。


ふと気付くと、二匹の兎が並んでちょうど向かい側で眠っている。
真っ白いのとこげ茶色の。どちらも小さいけれど、やっぱり耳がぬんと長くて、すーすーと寝息を立てている。手というか前足をだらんと広げ、こたつに覆い被さるように、うつぶせに眠っている。その様はとても人間臭く、また、兎たちがあんまりすやすやと眠っているものだから、まるで、生まれた時からずっとそこで生活しているみたいにすやすやと眠っているものだから、私は特別驚くということはなかった。なんだ、きてたんだ、と親しい友人に対するぐらい軽い気持ちであっさり二匹の兎を迎え入れた。これは夢なんだ、夢の中では兎も亀も炬燵で眠るんだ。だってこんなに気持ちいいのだから。みんな兄弟なのだから。だから、もう少し眠らせて、と誰に断るでもなくつぶやいて、私も兎と同じように、こたつに覆い被さるようにうつぶせに眠ってみた。背中は少し寒かったが、そもそも何もなくとも過ごせるぐらいの気温なのだから問題ない。意識がふわふわとしてなんだかとても気持ちが良かった。

少しして目覚め、前に目をやると、二匹の兎はさっきと同じように眠っていて、幾分はっきりとしてきた意識の中で私も、いや何か変だこれは異様な事だ、と思い、でも、やっぱり兎があんまり気持ち良さそうなものだから、音を立てないように兎を見ていた。こんな風に気持ちよさそうに眠れることは一種の才能だと思ったぐらいだ。
不思議と見飽きないもので、随分時間が経った。時計の音がちちちちと聞こえる他は何も聞こえない。時々外のクラクションの音や、ブレーキ音が聞こえるぐらいだ。
と、真っ白の兎が突然びくっ、となったかと思うと目覚めて恐る恐る顔を上げた。それは怖い夢、例えばどこか高いところから落ちる夢を見ていて目覚めるあの痙攣のようだった。兎も夢を見るんだ。
白兎は私に見られていることに気付き、ばつの悪そうな顔をして、口を開いて「失礼してます」と言った。こげ茶の兎がちいさな寝息をたてる。
なんとなく、しゃべるんだろうな、とうすうす感じてはいた、炬燵で寝ている時点でしゃべっても何の不思議はないじゃないか。そうでしょう?ただ、兎の声は私が想像していたよりも低く、落ち着いていてダンディで、私のほうがよっぽど子どもっぽい気がした。
なんとか気持ちを落ち着かせて、未知との遭遇みたいに私は念のためにこう聞いてみた。

「ええと、しゃべれるわけですか」
「そういうことですな」
「なんで、ここにいるのですか」
「それは私にもわかりかねます」
「兎ですよね」
「いかにも」

兎は何か古く格式ばった言葉使いで、私は自分の幼稚さがなんとなく恥ずかしくなった。兎はそんなことを気にする様子はなく、私と話を続ける。そのたたずまいにも深いダンディズムを感じる。紳士の称号を得ているふうなたたずまいだ。

白兎はごそごそとこたつの中をまさぐって、それから、どこに入っていたのかすすきを取り出した。乾いた音、乾いた草の匂いがほのかに近づいてくる。すすきはさらさらと揺れていて、それがこげ茶兎の耳に当たる、こそばゆそうに耳を揺らし、それでもまだ起きない。深い眠りに入っているんだ。とてもいい表情で眠っている。白兎はすすきをこたつの上にばら撒いた。それから私の目を見つめる。白兎は照れることなく、じいっと私の目を見る。まるで珍しいものを見るかのように。そのうち私のほうがなんとなく気まずく感じて目を逸らす。そうすると兎は得意げな表情になってしゃべりだす。

「もし」
「なんですか」
「もし、団子はございませんか、ぞなもし」
「うーん。ちょっとございませんねえ」
「そうですか」

兎はひどく残念そうに、そうですかぞなもし、ともう一度つぶやいた。
その残念そうな表情を見て、私は何とかしてあげたくなってしまい、ちょっと言って買ってきましょうか、と提案してしまった。自分でも不思議なぐらい兎のために何かをしたかった。篭る事に決めたとこなのに。

「よろしいのですか、ぞなもし」
「近くにコンビニがありますから、そこにあるのでよければ」
「けっこうけっこう」
「では買ってきます」
「感謝します」
「お安い御用です」

それで、私はパジャマの上に薄手のコートを着て、化粧もせずに歩いて500歩ぐらいのことろにあるコンビニエンスストアに向かった。ビルとビルの間から月は真ん丸く顔を出していた。まん丸で白くて団子のようだ。ほんとに綺麗だ、いやおいしそうだと、単純に思った。天気予報士がこの月に魅せられる理由が分かる気がした。
ただ、
なんとなく、どこか違っているような気がした。月を詳しく見つめたことはなかったが、今見ている月はいつもの月とどこか違う、なんというか何かが足りないような気がする。兎が、うちで炬燵に入っている兎が抜けてきたからかなあ、と考えたりした。
コンビニに入って、無表情な店員のほとんど聞こえないいらっしゃいませを背に、一目散に月見団子を手に持って会計を済ませ、部屋に戻った。

もしかしたら兎は私がコンビニに行っている間にいなくなってしまうかもしれないとか、ほんの少し思っていたけれど、そんな心配というか、期待というか、上手く説明できない複雑な気持ちを、全く気にしていないように、二匹はちゃんと座っていて、こげ茶兎はまだ眠っているし、白兎はテレビをつけ、くだらない深夜番組を高い視線から見て、ほくそえんでいた。総合演出を手がけたお偉いさんみたいにほくそえんでいた。

「おもしろいですか?」
「ああ、おかえりなさい、ぞなもし」
「お団子買ってきましたよ」
「ありがとう、ちょっといいですか」

そういうと兎は炬燵から這い出て、それから私が買って来た月見団子を器用に袋からだし、ラップを外して、ひとつ、手に取る。兎はやはり兎だったし、とてもちいさくて、手のひらに乗りそうなほどちいさくて、とてもかわいらしかった。
団子は全部で5個入っていて、それぞれ、中に餡子が入っている。蓬味と普通の白のと二種類あったけれど、兎は白のを持った。そして、じいぃと見ている私のほうを見て「申し訳ございません、ぞなもし」と申し訳なさそうにつぶやいた「人に見られるのが苦手な性質でして」
あらごめんなさい、と私はテレビのほうへ目をやり、遠慮せずどんどん食べてくださいね、と言ってあげた。「かたじけない、どうも見つめられることに飽き飽きしてしまいましてな」と、むしゃむしゃと音をたて月見団子を食べる。

「ところでその、ぞなもし、というのは口癖ですか?」
「最近漱石の坊ちゃんに感銘を受けまして」

兎でも坊ちゃんの面白さが分かるんだ、だから漱石先生は偉大なんだ。私は分からないけど。でも使い方間違ってるような気がするけど。
兎でもといったけど、兎は確実に私よりも博学そうで、知的で、むしろ当然と言っても良かったかもしれない。ぞなもし。

むしゃむしゃとどんどん食べる音が、テレビの音より大きく響いている。
兎は無心に、私はもちろんじぃっと見ているわけではないけれど、無心に食べる。ふと目をやると、さっきまで眠っていたこげ茶兎が目を覚まして、団子を食べる白兎のほうをさもうらやましいという目で見つめている。そのうち、余っている月見団子に手(前足)を伸ばそうとしている。白兎はそれを制して「これ、行儀が悪いことしなさんな」と自分はむしゃむしゃ食ってるくせに。叱られたこげ茶兎はしゅんとなって、手(前足)を引っ込める。そして、コタツの中に手をいれ、むしゃむしゃ食べる兎を、またうらやましそうに見ている。「私は見られるのが嫌いなんじゃ、みなさんな」と言うが、うらやましくてたまらないというような表情で、じぃと見るのをやめない。5つあった月見団子はすでに、いつのまにか2個になっている。すべて白兎が食べてしまったのだ。四つ目に手を伸ばす。どこに入っていくのか不思議になる。兎は口も小さいし、体も小さいし、とてもそんなに月見団子を3つも食べれるようには見えない。というか、月見団子を食べるという事自体信じられないぐらいだ。それでもかまわずにほうばる。すこしづつ千切っては咀嚼し飲み込む。四つ目もすぐになくなる。
こげ茶色の兎は涎をたらしてそれを見ている。もう、たまらない、という表情でそれを見ている。
全く躊躇することなく白兎は五つめに手(前足)を伸ばす。
こげ茶兎は溜息とも、悲鳴とも、思える声をあげる。二匹の関係がなんとなく分かってしまう。
やはりちゅうちょすることなくむしゃむしゃとむしゃむしゃと食べてしまう。むしゃむしゃむしゃむしゃ。

なくなってしまって白兎は私のほうを見る。
「たいへん美味しゅう御座いました」
「それはよかったです」
「たいへん美味しゅう御座いました」
「それはよかったです」
「そちらのかたに団子をあげなくてもよかったのですか」
「ええ、ええ、心配後無用、こやつは腹をすかせておりませんのでな」
白兎は、こたつを叩く、トントントン、とそして
「もう少し入りそうな気分ですな、ぞなもし」
「え、もう少しですか」
「そうもう少し」
そう言って、私のほうをもの欲しそうな表情で見つめる。
「こやつは意地汚い兎でして」そう言って隣のこげ茶の指差す。
「そんなことないですよ」こげ茶は幾分高い声だったが、それでも30代半ばの店長代理みたいな落ち着いた声だった。
「お前はだまっとれ」
「もう少し欲しいともうしております、ぞなもし」
「僕、なんにも食べてないですよ」
「お前はだまっとれと言ったろうが」
「自分がほしいだけのくせに」
「黙らっしゃい」
「あの、もうひとつ買ってきましょうか?」

二匹の兎が私を見つめる。その表情は嬉しくてたまらないといった風。

「かたじけのうござる」
「ありがとうございます」
二匹は同時にしゃべる。
「同じ買いに行くのであれば、あと2,3パック買ってきては?」
と白兎が調子に乗り始めたので、私はそれを全力で制して、さっきと全く同じ恰好をして家を出る。
コンビニの店員さんに、月見団子ばかり食べている女だと思われたら嫌だな、とか思ったけれど、近くにコンビには一軒しかないし、仕方なくそこに向かう。
天然パーマっぽいくりんくりん頭の店員は興味なさそうにわたしの差し出した月見団子をさっさとレジに通した。恥の入り込む余地はなかった。キャツアイ、とほざいたかと思ったら、いらっしゃいませ、のことだった。ちょうど入ってきた面長の女がやけに睨んでくる。


部屋に戻ると、二匹の兎はいなくなっていた。
私は夢だったのか、本当の事だったのか随分の間考えていた。炬燵の上にばらばらにばら撒かれたすすきと月見団子の串があるから、どうやら夢ではなさそうだった。不思議と、というかとても短い間だったし、悲しいという気持ちは全くおこらなかった。私は炬燵が好きだし、ずっとずっと反対側に居座れても困る、というもので、だからどちらかというとほっとしていた。仕方なく5個300円の月見団子をひとりで食べる。月見団子はもちもちとしていておいしかった。こげ茶兎にも食べさせてあげたかったな。ふたつ食べたところでもうすっかりお腹いっぱいになって、熱いお茶を煎れる。ずずとゆっくりと飲むとほのかに塩辛く感じて、私はそれをとても美味しいと解釈した。
どうも炬燵にあたっている気分でなくなった、なんとなく外に出る。
兎がまだ近くにいるかもしれない。せっかく買ってきた団子だってまだ3つ残っているし。
私はふらふらと、兎を探して満月の明かりを頼りに街を歩く。満月は地面を照らしている。
満ち欠けしていない完璧な満月だった。足りないものはひとつもない。もしかしすると兎は本当に月からやってきて、月へ帰っていったのかもしれない。そんなわけはないと分かっている。でも、そんなこと誰にもわからないじゃないか。
ずっと同じ場所から満月が私を、街を見下ろしている。あんまり綺麗だからしばらくじいぃっと見ていると、「そんなに見つめなさんな」という低い声が聞こえた気がした。風が吹く。キンモクセイの香りが漂ってくる。

俺は車にウーハ―を(飛び出せハイウェイ)3

2006-12-10 | 東京半熟日記
(沖縄編18)

ちゅら海水族館に近いエメラルドビーチで砂を蹴り飛ばして走り回る。泳ぐ事は出来ないらしいシーズンオフだ。まだ十分泳げそうだけど、それは大人の事情という奴なんだろう。それでも、足だけ波に撫でられたくなる。だってザザーっザザっーてあきれるぐらい寄せては返しているし。靴を脱いで、おや、パンストはいとるんやん。あかんやん。ええいぬいじゃえー。て、ハーフパンツ風のパンツ履いてたんですけど、それを脱がないままその下のパンストだけ脱ぐイリュージョンをやって見せよう皆のもの。ハイ~、ハイ~。ほら、このとおり、すっか・・・・・・・、アホ、見んな、見せもんちゃうから。向こう行け。座り込んで、無理矢理脱ごうとします、が絡まります。えらい恰好で、もがきます。大脱出ショーみたいになって、動けなくなります。まずいです。けど間一髪、無事脱出成功さ。各関節が妙に痛いけどね。そのかいあって波が妙に優しかった。太陽がさんさん、日は沈みつつあって、ほんと海が光って綺麗。また貝を探してみる。パンプス蹴り飛ばしてさ。

その付近、左右を木に被われたとても沖縄らしい道があるということで、歩いて向かいました。沖縄の人たちの普通の暮らしがそこにありました。この緑のトンネルを抜けたらそこは、豚足の国でした。振り向いたら最後、魔女の魔法にかかってしまって、一生帰れなくなってしまいそう。姿は見えないが鳥が鳴いている。猫が逃げていく。犬が吠える。当たり前に生活する日常を、ふいに思い出した。

あの坂道は海へと続く坂道。遠い空の下君は待っているのだろう。
大丈夫大丈夫とぼやけた太陽。
とか鼻歌口ずさみながら海にでる。
船がずっと遠くで、長い汽笛を鳴らしました。