リッスン・トゥ・ハー

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2006-09-30 | 若者的詩作
最終バスは後ろの座席、あたしとあなたはおしゃべり止める

もうようわからん、もうようわからんわ。

あたしのくちびるに触れる

齧る林檎は白雪のような食感で

2006-09-30 | リッスン・トゥ・ハー
老婆に化けた、というよりも激しい憎悪によって老婆よりも老婆らしく成り果てた后、真っ赤な林檎籠の中に携えて、姫の住む深い森のぽっかり開いた野原の先の湖の辺のちいさな小屋に、馬車に乗って一目散。途中、葉の生い茂った木の枝、背高草等にぶつかってはそれを乱暴に揺らし、そのスサスサガサガサが音に敏感な動物達の耳に届き、たちまち森中に回される回覧板、情報が広がる、后が懲りずにやってきたと。必然、姫のちいさいちいさい耳にも届き、自分を殺害するために再度やってきたのだと、この時点ですでに気付いているわけである。そんなこととは露も知らずに3日3晩かけてようやく湖までやって参りましたる后、馬車から降りて、すっかり老婆に化けているかどうかを、湖面にて確認、ぬんと現れたみすぼらしい婆に非常に驚いて腰を抜かしそうになったがそれが自分だと気付いて、いやもちろんビビッてなんかありませんよ、とか独り言ほざき、何はともあれその化け具合に満足気、若干小躍りに「バラが咲いた」なんかを口ずさみながら小屋の戸を、トントントトトトトン8ビート刻む、ように叩く。小屋の周りの木の陰、凶暴な動物達の殺した息遣い。それぞれ手にした鈍器は黒く冷たい光を放つ。姫曰く、いきなり襲うことなかれ、じわじわいたぶる、まず我が応対する、と。はっ、私が指示すればこの婆なぶり殺しの運命、その命、我が手の中に。ふいに、生じた憐れみ、感じたことのない彼女に対する憐れみ。やれ社交パーティだ、やれ流しそうめん大会だ、やれ大型の台風がやってくるだのとにかく何かイベントごとに威張り倒していたあの后がみすぼらしくてバタ臭くてどこか懐かしい匂いのする老婆に成り果てて、その運命が今や我が手の中に。これなんという気持ちのよさ。その憐れみの優越感に永遠に浸っていたいから、差し出された赤い赤い、というかもうすでに変色しとるんで赤黒い林檎を、ああこのちいさなちいさなお口で、シャクり。

話は変わって今年の夏は暑くなさそう1

2006-09-29 | 東京半熟日記
(42)

浅草をあとに東京メトロ銀座線に乗る。東京駅へ。だいぶ慣れてきたから、すすすすすすすすすすとスムーズに到着。東京ステーションは、巨大なひとつの街です、そこにいろんなものが存在する。その地下ってのも、一度はいってみんしゃい、というスペースなのです。そこで、わたし、地下にやってきました。どうも、こんにちは。やってきましたところは、テレビ各局のアンテナショップがあるエリア、いろいろ見たかってんもん。NHKショップに、キャラクターようけおんねやね。あら、かわいらしいわ。おでん君なんかがトレンドなの?トレンドなの?ま見るだけなんですけれど。フジテレビショップ、ああ、ゴリエさんが全面に押し出されて、めちゃイケとか、そういうバラエティキャラものが多いですこと。TBSショップはアニメが強いかな、渡る世間ものもございますね。ま、へえ、てなもんで見るだけでも十分に楽しい地下。ふっと開いたスペースに、海外の有名絵本作家の期間限定展示販売コーナーがありました。コラージュの毛虫絵本を作る人です。そういえばこの絵はみたことがございました。うわーいっぱいあるなあ、買っちゃおうかな買っちゃおうかな、結局かわへんかったけれども。その壁に大きな模造紙が張ってあって、真ん中ぐらいに毛虫の顔があって、手前にある机の上に折り紙・のり・はさみが無数に置いてある。切り貼りして、コラージュ体験、だそうです。みんなのコラージュ、落書きをするように切り貼りして毛虫を完成させてください。ということで、はっときました。円。

ビバーク

2006-09-27 | 若者的詩作
今宵風は冷たく、踏みしめた土の匂い
息を大きく吐きます、にじむ足元の空
やさしい気持ちで君に触れたら
次の季節だって分からなくなる
所以そんなしかめつらすんなって
そう笑えよ

超えたはずみで近づいた、ずっと離れえぬ友愛数
残るわずかな時間を惜しむように抱き合ってた
かすかな願いがかなうとしても
偽る弱さに気付くだけでしょう
あなたをずっと忘れないように
呼びかける声は届いてるのかな
裸足になって、手をつないで
迷わずに駆けろよ空を

氷のように目を閉じたままで
涙はすぐに乾いてしまった
やさしい記憶の君に触れたら
過ぎる季節だって分からなくなる
いつまでだって、こうしてたいよ
とろけそうな言葉をかけて

君が素敵だった事、忘れてしまった事4

2006-09-27 | 東京半熟日記
(41)

で、壁際に積んである浅草のりを、う~んう~ん言いながら、見ていると、おばちゃんが、おいしいよ、と突然声かけてくる。突然だったのでわたしはびくっとなってしまい、そしてためらいがちに振り向いて、そうなんすか、と返す。で、いくつかのりがあるわけなんですが、この値段が違いは、どういうことなのだろうとか思いまして、「これらはどう違うのですか」「やっぱり高いのはおいしいんや」関西弁?「はあ、やっぱりそうなんすか」「まあ、なんやかんやいうてもそんなかわらへんねやけど」どないですか「同じですか」「どれもおいしいわ」「なるほど」とても不毛な会話をしているような気がして、実際してるんですけれども、ではこれを、と1000円のを買って店を後にしたわけです。あ・・・・した、と野球部のように略したありがとうございました、を背に再び人ごみにまぎれる、そろそろ疲れてきたので、寝床へ帰るか、とか思いながらです。

君が素敵だった事、忘れてしまった事3

2006-09-26 | 東京半熟日記
(40)

あげまんじゅうを食べ終えてああ動くのもしんどいわあ、というふうになった京都人は、それでも浅草にいるんだから、いろいろ物色し始めるわけです。わあわあわあ。友達にお土産買ってかえらなあかんからさあどうしましょ、あ、名前のシール発見、あのぶっとくて大相撲の結果を伝えるときに四股名を書いてある、あのぶっとい書式の名前シール。これ、友達の名前あったら買ってあげよかしら、困るか、そんなシールもらっても困るか。あ、ガチャガチャ、ピンバッチのガチャガチャや。店オリジナルとな。マニア心くすぐるのう。ふおふおふお。とかなんとか。やりつついろいろ買いまして。そや、グランマが東京さいくんだったら浅草のりを買ってきてくれと言ってたなあと思い出し、それを買うために一軒ののり屋に入ったのです。そののり屋は、人盛りができてるほうののり屋ではなく、人が寄り付いていないほうののり屋でして、店員のおばさんは手持ち無沙汰に、テレビを見ながらいすに腰掛けていた。わたしが入っても、流し目をするように目をこちらに向けて、聞こえないぐらい小さな声で、らっしゃい、いや、・・・しゃい、と言った。

ケータイを叩きつける、惑星に

2006-09-26 | リッスン・トゥ・ハー
あんなに心配したのにわたしのことなど何一つ思っていなかったあの人は、今日も彼女のもとへ向かうのでしょうか。着信音。鳴り響くもわたしは泣き濡れて風呂の中沈んでいるんでもどかしや。ああもどかしや、もどかしや。つまり沈んでるし全く耳に届いてない。着信音。あの人は、ゼリーが好きで、あたくしはいつも冷蔵庫にゼリー、用意して待っているのに、それに対して何も言わずに悔しいわ。ちゃんと食べ尽くして帰るくせして、感謝のひとつやふたつやみっつなど言えばいいものを悔しいわ。着信音。この数え3度目の着信音があたくしの耳にようやく届きまして、あの人かしらと湯から飛び出るユリイカ!無性にそんな気がしたんでバスタオルでかきむしる皮膚、赤らむも気にするか。水気を完全ではなくもそこそこ取りましたら、リビングへ漕ぎ出でてみればかすがなる、ケータイ動かずそこにある。ぴっぴぴぴぴぴボタンを押して、メールチェックオーケー?あの人のメールだ、すぐさま開きますと「アホが見るブタのケツ」

私を、フットボールへ連れてって

2006-09-25 | リッスン・トゥ・ハー
わたしが音楽をはじめたのは、いや、まだはじめてなんかいない、スタート地点にも立っていない。そういう弱ささをいつも持っていることを誇りに思え。と、とにかくわたしが音楽をはじめたのは、あるアーチストのアルバムを聴いてからで、そのアルバムはキャッチーでポップでヘタウマなボーカルがしっかり愛らしい愛らしいアルバムだったので、わたしはこんな音楽がこの世にあるなんて、とかありきたりな感動文句であふれてしまった。そのまま家に眠っていたギターを引っ張り出してきて、Gコードを押さえて、そればかり鳴らし続けたのでした。前置き長くなりすぎましたそのアーチストが、ラジオの企画でちょうど今デパートのイベントスペースにいて、マイクを片手にDJの方と談笑をしているというわけです。現在ロンドン在住、パンクな音楽をがんがん作ってるそうで、ああそうか、カッコいいなあ、かわいいなあ、意外と背が高いなあ、半ズボンはいてボーダー着てるイメージやったけどなあ、さすがにもう結構な歳なんだろうから。20分ぐらいでラジオへのゲスト出演は終わり、イベントスペースの裏から控え室に帰る途中を、もしやと思い裏へ回っていたわたしは見ることができました。手を振ったら笑ってくれました。なんか気の利いたこと、声をかければよかったのでしょうか。

君が素敵だった事、忘れてしまった事2

2006-09-25 | 東京半熟日記
(39)

それでも、なんか美味しそうな色合いなわけです。狐色した表面の油であげたてかり。かすかなチーズのそれはそれは香ばしい匂い。そうか、先人は言った、デザートは別腹である、と。その言葉まとこかどうか、我が身で試してくれるわ、わははははははっは。そしてほんまあんまりこれ以上いに食物を入れたくないのだけれど、齧る。溢れ出すジューシーな油、にゅわぁーと広がる、お口の中は草原のよう、黄金の草原のよう、風に揺れて稲穂がささささと音を立てる。カリッとした表面、少し塩辛いチーズ独特の匂い。つうかうま!と若者のような言葉づかいで、感動を一言で表現しておいて、胃のぼうまんかんと戦う。24時間戦えますか?そうでした、もうひとつございますのでした。手で割ってみますと、栗餡はかほかと湯気を上げており、仮に雪山で遭難中であれば、こんなに嬉しい事はないのですが、今は、天丼とチーズあげまんじゅうが入っている胃の内部は、すでに許容量一杯なのであります。しかもその、胸の焼けるような甘い、濃い、餡が隅々まで行き届いたあげまんじゅうで、威勢の良い呼び込みの声を受けながら、激しさの増す人通りに流されながら仕方なく、それを咀嚼することだけが今の私の使命なのでした。・・・・なんかカッコええ。

君が素敵だった事、忘れてしまった事1

2006-09-24 | 東京半熟日記
(38)

サイズはもみじ饅頭のふた回り小さいぐらい。あーあれだ人形なんとか焼きぐらい。2個100円。なんか、高くもなく安くもなくちょうど良いぐらいね。で、色んな味があるわけです。人形焼なんとか、は餡子のみやから、その辺はもみじ饅頭には勝てない理由ともいえるわけですわね。もみじ饅頭なんて、あれ何、チョコレートからクリームチーズから抹茶からカスタードからこしあん、つぶあん、俺、広島生まれ、和菓子育ち、甘そなものはだいたい友だち。てなもんやから偉大だ。あげまんじゅうですけれど、味がたくさんあったわけです。かぼちゃ餡、栗餡、チーズ、餡、チョコはなかったけど、まあまあ、選べる2種類をわたしは、チーズと栗餡、にいたしましたのです。あ、申し送れましたわたし、栗大好き、モンブランさえあれば、向こう3年は冷夏で農作物が不作でも大丈夫という人であります。紙の袋をあけまして、さあほうばろうかしらと思ったその時、先ほど、わたし天丼しこたま食うたいうこと思い出してしまったのです。ああっと、腹、そういえば、あまり減ってない、どころか一杯である。2個も食えんやないか。そのタイミングで、じとーって紙の袋にしみこんでいく、あげまんじゅうからしみ出てくる油。注ぎますねえ、油を。あぁ?

Co.Kerry,IRELAND(世界のドア)

2006-09-24 | 若者的字引
Page2

ドアーのちょうど中心にドアノブがついている。左上にはWelcomeの文字が四角で囲んある。光を取り入れるためのちいさな窓が半円の形ドアーのすぐ上にある。色は赤、深く、燃え盛る炎のような赤いドアー。シンプルな細工、そのドアーの周りの壁、白を基調にポイントに赤、しかし赤が主張をやめようとしないから、赤が強すぎるから、一瞬で目に赤が焼きついてしまったから僕はバスガールに恋している最中なのに女教師に熱を上げてしまい、挙句の果てに彼女にまでふられてああ僕は、とつぶやいている男。

ペーパードライバー

2006-09-23 | 若者的詩作
ハロー僕ペーパードライバー
右も左も猫も杓子も分かりません
パンチの効いたBGM、1、2、スタート
青すぎる空、鮮やかなカラーで走る
だけどあなたを守りたいから
ハンドルを切る二の腕はゆれる

ハロー僕ペーパードライバー
瞬き忘れ、かじるハンバーガー
曲がりストロー噛み潰す摩天楼
青すぎる空、鮮やかなカラーで走る
勇気を出して、ブレーキを踏んだ
なんでもない話をしよう

青すぎる空、鮮やかなカラーで走る

君がいない事、君と上手く話せない事3

2006-09-23 | 東京半熟日記
(37)

仲見世、何か祇園みたいなかんじもするね、日本最古、古い商店街だから、近いものがあるのかもしれませんわね。さてさて、せっかく浅草なんですから、浅草らしきもの、いただきとうございまする。と重ねた着物を引きずり、闊歩しまして、なにやら威勢の良い男の声、そのほう面をあげい、人形焼!まあ要するにつまりもみじ饅頭の形が違うバージョンですよね。焼きたての人形焼、タイムサービス開始しました!いうてはるけど、あんまりねえ、もみじ饅頭たべたないしね、もみじ饅頭なら、広島でしょうが!と一喝ですわ。ふは。縮み上がりよったわ。まあ実際は無関心を装ってスルーですけれどね。そのもうちょっと先に、冷たいお菓子あるよ、わらびもち?冷やし団子?おお、いいかもね、するりと腹に入りそうじゃないか。うんうん。でもまあ、先は長いしもう少し様子を見てね、とものほしそうにスルー。そして見つけました。他になさそう、これは他になさそう、いや、わたしが知らないだけできっとどこかに似たようなのはあるはずだしかし、良いじゃないか、そんなことは知らなくていいんだ。わたしが今、食べた事の無さそうな漢字だったらそれで、いいじゃあーりませんか。魔法みたいな手つきでそれを作り上げていくおっちゃんの前に立つ。それ、あげまんじゅう、いいました。

Dublin,IRELAND(世界のドア)

2006-09-22 | 若者的字引
Page1

白い柱にもたれかかった女。柱は埃を浴びて黄色っぽくなっている。いかにも古い時代の匂いを発しているようである。女は手に持っていたハンドバックを開ける。中から取り出したのは、タバコである。ニコチンの薄い、あたしタバコ吸うなんとなく洒落たスタイル、だとか見せかけるためのタバコ。咥えて、火をつける、ひといき、吸い込んで、女は空を見上げる、吐き出す煙。の向こうに黄色いドアー。白い柱に挟まれてその黄色ははっきりとしている。29、という数字がついている。その数字の少し上獅子の金属製の細工が施してある。丸く、太い、ドアノブが回転してドアーが開く。女はタバコを投げ捨てる。そのタバコが描く弧を、ペルシャ猫が目で追う。

風を切って走る

2006-09-22 | リッスン・トゥ・ハー
向かい風は、厚い壁のようにわたしの身体を入ってこぬように入ってこぬようにと。その中へ、めり込むように進む自転車をこいでいると、何もかも忘れられるのだから、意味なく堤防の上を突き進むのです。その風の厚い壁を切ってどんどん進んでいくのです。ついてくる、中村君は、とてもつらそうな表情でわたしにちょっと休もう、とか泣き言を言ってくるけれど、聞こえないふりして、淡々と進む。僕は、体力がない、文科系だから、と以前言ってたことは本当だったのだ、と思った。ストライプのシャツが、それはわたしが可愛くて似合ってるよと言ってあげたので、頻繁に着るようになったというシャツがはためく。耳に届かない。中村君の声が、遠くでわたしを呼んでいる気がする。風向きが変わります。