リッスン・トゥ・ハー

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Portable Tunes/HARCO

2007-12-31 | 若者的図鑑
胸キュン、キラーチューン!

短いながらなんか気になるCMソングがちりばめられています。
MP3プレーヤーでランダム再生するとき、たまにはいってるとアクセントになっていいですね。

「世界でいちばん頑張っている君に」は一度聞くと口ずさんでしまいますね。
これからもこのポジションで地位を築いてもらいたいです。HARCOさん。

CMソングというのは生活に密着してるから、長く聞けるんでしょうか。
がんばろう、と思ってしまいます。まあそれでもたまに聞くと、ですけどね。
ずっと流してたらそれはそれで飽きてくるんですが、まあ、だから音楽はたくさんあるほうがいいんです。
むやみにCDを買っておけばいいんでしょうね。損になることなんてありませんよね。

カレンダーボーイ・カレンダーガール

2007-12-30 | 掌編~短編
「カレンダーを僕はめくっている。1日1ページのタイプの手のひらぐらいの大きさのカレンダー。書いてある情報は数字のみ、無駄を徹底的に省いてある。それを僕はめくっている」

「いったい誰のために?」

「もちろん今がいつであるのかを正確に、あるいはあいまいにでも把握する為に」

「今がいつであるのか把握することはそんなに重要なことだろうか?」

「それは人それぞれで、あまり重要でないと考える人もいる。僕はとても重要なことだと考える」

「でも、君は今がいつであろうと同じではないか?」

「その通り。僕には関係ない。僕がカレンダーをめくるのはふたりの人間の為なんだ」

「ふたり?」

「そう、分かっているだけでふたりいる。ひとりはおそらく20代の女の子、まだ上京して間もない本当の名前は知らない、彼女のことを本当の名前で呼ばないから。その必要がないから。姫という」

「ここは東京でしたか」

「ここは東京、若者が二人で暮らしている。もうひとりが彼女よりも少し年上の男の子、彼は少し前から、二年ほどか、ここに住んでいる。ふたりは恋人同士だ」

「名前は?」

「彼の名前はニーチェ、彼女がそう呼ぶから。そしてニーチェは彼女のことを、姫と呼ぶ」

「ニーチェとその姫のために君はカレンダーをめくるわけか」

「そういうこと。それが僕の仕事で生きる全て」

「それは少し寂しいな」

「そうでもないさ、最初から何も望まなければそんなものさ、と笑い飛ばせる。結構充実だってしているぼくの毎日は」

「それがなにより」

「たとえば、姫は面積の小さな下着をつける」

「面積の?」

「とても小さな。とても実用的じゃない奴。ニーチェの為かと思うけどそうでもない、彼は忙しいんだ。姫の面積の小さな下着を鑑賞する暇があったら」

「あったら?」

「たとえば鹿の人に会いに行く方がいい」

「よくわからないが。少々変わった人だというわけか、しかし浮気相手は誰だ?」

「違う違う話が飛躍しすぎだ。姫は自分のために面積の小さな下着をつける。姫はきれいな子だ。と僕は思う。町ですれ違ったらきっと振り返ってしまうだろうな」

「君の趣味は怪しいからな、でもまあそのきれいな姫が自分のために面積の小さな下着をつける意味がよくわからないのだけれど」

「あまり深く考える必要ない。ただ、自分の体を覆っている布を出来るだけ少なくしていたいんだ、そうしないと死んじゃう」

「って言ったのか本人が?」

「言ったわけじゃない、僕がそう感じた」

「それは思い込みという奴ではないか」

「いいや違うよ、僕のそういう勘は結構当たるんだ。こないだもニーチェの好きな音楽の」

「いやいいやその話はまた次の機会でところで」

「うん?」

「君誰?」

「こちらのセリフ」

おうどん、2杯と半分

2007-12-27 | リッスン・トゥ・ハー
熱いおうどんが食べたい、とおばあちゃんがつぶやいたが、それを気にとめるものは誰もおらず、もう一度熱いおうどんが食べたい、とつぶやいてもやはり家族は無視している。何も虐待をしているわけではない。おばあちゃんは意識がはっきりせずに、きっと自分でもなにを言っているのかわからない状態で、つまり痴呆症にかかっていて、うどんを食べたいと言い出すこともしばしばあるし、うなぎを食べたいとはしょっちゅう言い出す。それをいちいち叶えていたら、うどんをしょっちゅうかいたさないといけないし、うなぎをさばかなければならないし、何よりおばあちゃんはそれを本当に欲しがっているのではないということである。つぶやくときには本当に欲しがっているわけであるが、少し様子を見ていればそんなことは忘れてしまい、鼻歌を歌いだしたり、おもちゃをいじったり、ということを繰り返すいつもの行動に戻る。だから、最初のなれなううちにはおばあちゃんがそうつぶやくたびに母は調理し、用意してやったが、出来上がることにはおばあちゃんはそう望んだことを忘れており、ぼんやりとあさってをみて母を悲しませた。

魚飼い

2007-12-24 | 若者的詩作
魚飼いはふふんと鼻で笑った。

私が能垂れたからか、安易に能垂れて魚飼いのおそらく知らないことだろうと検討つけての能垂れて沸くし立てたことをへとも思わずに鼻で笑って涙を流した。
涙を流したのは意外だったが、ほんの一瞬、あくまでも一瞬でまたすぐに鼻で笑った。

やいやい言いながら、それから魚飼いはさびしそうに笑った。
さびしそうなのは気のせいかもしれない、私は思った。

そういう旅だったつまり。

鹿よ 続々

2007-12-24 | 掌編~短編
「鹿は電車に乗れない3」


 鐘は私たちが公園に着くまで鳴り続け、そのたびにニーチェがまだおこっとる、まだおこっとる、これは楽しみにしてたプリン食べられたからや、とか他愛のないことを言い続けた。思わず笑ってしまう自分が嫌いでない。
 人通りがほんの少し増して、公園らしき場所にたどり着いて、鹿が群がっている。
「鹿の人や!」と林は叫んだ。
「いや、あれ鹿でしょ?」
「いや、鹿の人や」
「鹿とどうちがうの?」
「近くで見て、話してみれば分かる」
「たぶん言葉通じないと思いますけど」
「鹿にはね」
 ふふん、とニーチェは馬鹿にして笑った。
 池のそばにある木陰の元のベンチに私たちは腰掛け、遠くにいる鹿の人を眺めた。鹿の人は観光客が与えるしか煎餅を貪欲に食らい、どこまでも貪欲に食らい、していた。
 その様はたしかにあんな貪欲なのは鹿でない、鹿の人や、と思ってしまった。でも鯉だって麩をやり続けるとあほほど貪欲になるし、そういうもんか。
 ほら、鹿の人を見てごらん、とニーチェは幼児に諭すように言った。
 なーに先生、と私は見る。
「鹿の人はせんべいをもらったあと、お辞儀するだろう、あれは鹿にはできない芸だ」
 鹿は煎餅をもらった後にお辞儀して、それがお礼をしたように見える。しかし、それは鹿が長年かかかって人間の喜ぶような仕草を身につけただけで、だからって鹿の人と言うわけではなかろうに。
 鹿の人はこの暑い日に偉いなあ、ニーチェはしみじみと言う。
 そうね、それは確かにそう思うわ。
 鳩が鹿の食いカスを狙って這う。ちょこちょこと実に猪口才なやつである。
 立ち上がり、鹿の人のほうに向かってニーチェが歩き出す。ちょ、待てよ、と私は追いかける。
 彼は露店のおばあさんが売っているしかせんべいを購入し、鹿の人にせんべいを見せる。鹿の人はやはり貪欲にせんべいに向かって迫ってくる。それも一人ではない、3、4人固まって一斉にやってくる。ニーチェはひるむ様子なく鹿の人に向かってせんべいを掲げ、こっちですよ、どうぞこっちにおいでください、と敬意を示している。鹿せんべいを売ったおばあちゃんはどうしていいものかと戸惑っている。きっと鹿に敬語を使いながらせんべいをやる人はあまりいなかったのだろう。見てはいけないものを見るようにまったくこちらをみない。
 私もニーチェからせんべいをもらい掲げる鹿は体当たりをするように私に向かって、林に向かって、そして私は、ニーチェはそれを奪われてなるものかと、鹿が接近しようがせんべいを与えることなく耐えている。観光客グループが、変な目で見ている。子どもがケチ、とつぶやいた。ケチも糞もあるかガキがっ、と私はにらんでやった。
 鹿に周りを囲まれて、鹿の親玉らしき奴が遠くから、こいつらかけちな客は、と言った感じで見てきたので、そろそろやるか、とニーチェはせんべいを差し出し、
「ご苦労様です、どうですか美味いですか?」と聞いた。
 せんべいを食べ終えた鹿の人は、うんうん、と2度頭を下げた。 
 鐘が鳴る。

鹿よ 続

2007-12-22 | 掌編~短編
「鹿は電車に乗れない2」


 駅に到着し、電車を降りる、改札口を通り抜ける、駅から出て奈良を見渡す間もニーチェは鹿の人を探している。いつもだったらこの辺にいても可笑しくないはずなのに、やっぱり休日だからか、ひとりごとを私に聞こえるようにつぶやいている。その執念深さが可愛らしいと感じる。だから、私は彼に惚れている、と確信してしまう。
 「ほら、いくよ」と手を引き、ニーチェを連れて改札口から町に降りる。公園に向かって歩こう、とニーチェが言う。私は市バスで行くつもりだったし、この日差しなんだからちょっとは考えてものを言いなさいよ、と思ったが、まあ今日は彼の提案でここにきたのだから、最後まで従ってみることにした。
 奈良の日差しは観光客に対して二割増しに降り注ぐような気がする。
 ゆっくりと歩いていると、彼はなおもおかしいなあおかしいなあとつぶやいている。ハイハイ、すぐに会えるからちょっと落ち着きなさいよ、と私は彼の手を引く。ニーチェと手を繋いで歩くのはちょっと嬉しい。蝉の声が高らかに空に響いて、そのすき間をぬって遠くの方で鐘を突く音が聞こえた。
「趣あるねえ」
「そうか?」
「奈良にきたって感じがしない?」
「いや、でもあれ、一番偉い人が怒ってると言う自己主張やで」
「は?」
「偉い人シャイやから、怒ってるってことを鐘を突いて知らせるの」
「町中に?」
「そう、わいは怒ってんねんで!」
「わい、て」
「たくさん鳴るほど怒ってるわけ」

鹿よ

2007-12-20 | 掌編~短編
「鹿は電車に乗れない」


「鹿の人に会いたい」とニーチェが言った。
「鹿ではなくて?」私は聞き返す。
「鹿ではなくて」
「鹿の人とは?」
「まあまあそんな恐れんでも、後ろ足で蹴り飛ばさんし、ただの鹿の人やし」
「決して恐れてませんが、鹿ではなくて?」
「鹿の人」
 むぅ、と考え込んでしまう、この男は一体何を言っているのだろう。
 私が頭をかかえていると、
「いくのかい?いかないのかい?」とニーチェは実にダンディーに迫ってきて、思わず「行きます!」と答えてしまった。
 ニーチェは私の扱いがとても上手なのだ。

汗よ

2007-12-19 | リッスン・トゥ・ハー
この汗は誰の汗。

というぐらい近い場所に色々な汗の匂いが立ち込めている。
むっとするような、酸っぱい匂いは鼻につくしかし、
私の汗も同じように誰かの鼻をついているのだろうだから、
何も言わない。

べたべたになる下着が、尻の割れ目に食い込んでくる。
非常に気持ちが悪いがあからさまに直すわけには行かぬ、男もたくさんいるし、はしたない、やめなさい、と母親によく怒られる、たしかにはしたないというか、隙を見せすぎだ。その隙は時に有効に作用するが、この場面で作用させても、今の私に何のメリットがあると言うのでしょう。

私は、畳1畳半ぐらいあるパネルの端を持ちながら、とりあえず便所にでもいきてえ、と悪態をついていた夏の記憶。