リッスン・トゥ・ハー

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ユッキーナ×フジモン=フッジーナ

2010-08-31 | リッスン・トゥ・ハー
「どうもフッジーナです」

「誰ですか?」

「ユッキーナ×フジモン=フッジーナです」

「ふたり?」

「ふたりではありません、ふたりが合わさったフッジーナです」

「ふうん、で、なんなの?」

「お祝い金をもらいにきました」

「なんで、身も知らない君にわたしがなんでお祝い金をあげないといけないの?」

「めでたいからです」

「なにが?」

「結婚するからです」

「誰が?」

「ユッキーナとフジモンがです」

「それでフッジーナと何の関係があるのよ」

「合わさったのがわたしです」

「どっちにも似てないけど」

「全く別の顔が生まれたからです」

「そうだとしても、なんでお祝い金が発生するの?」

「めでたいからです」

「いや、さっき聞いたけど、わたしユッキーナもフジモンも知り合いじゃないから」

「国民的カップルの結婚ですよ」

「だいたいさ、お祝い金て強要するもんじゃないでしょ」

「困っています」

「何?」

「お金に困っています」

「それで、なんでわたしがお金出すの?」

「いけませんか?」

「いけませんね」

「どうしてもですか?」

「どうしてもだね」

「じゃあ、仕方ない、こんな手は使いたくなかったが」

「何?その大きな鎌は何?大きく振り上げて何?」

「許せ、なもなき通行人よ」

「振り下ろして何?首をかっ切って何?いったいなんなの?」

「時分が首を切られたことにも気付いていないのか」

「それで終わったと思ったかフッジーナよ」

「ほざけ」

「ぐはははははっははははっはは」

「通行人の首から身体が生えて、首から下からも首が生えてきて、通行人が二人になった!」

「うへへへへへ、わたしは不死身よ」

「なんなんだ、この!この!この!これでどうだ、8つにしてやったぞ!」

「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄!」

「ひやあ、どんどん増えていく!」

「さあ、どうやっておしおきしてやろうかな」

「ごめんなさい、お祝い金ならいりませんから許してください」

「ぐへへへへっへへへへっへへへ、決めた」

「何をですか?」

「こちょばしの刑で」

「こちょばしの刑?」

「8人でこちょこちょするの」

「やめてください、もういらないって言ってるじゃないですか」

「開始ー!」

「いやだー!」

「こちょこちょこちょこちょこちょこちょ」

「あはははっはははっははっはははっはははっは」

「どうだまいったか」

「まいったまいった」

「じゃあ」

「え?お金?」

「あげるよ」

「なんで?」

「お祝い金よ、めでたいもん」

「通行人って金持ちなの?」

「もってるもってる」

「そっかあ」

「だから、気にせず」

「じゃあ気にしませんよ」

「では」

「ああ通行人8人が横並びで去っていく」

「お幸せに」

「あいよ」

股間のタトゥーのおかげ

2010-08-31 | リッスン・トゥ・ハー
股間のタトゥの効果、プライスレス。計り知れない価値。股間を見る状況になって初めてその効果がわかる。それまでは誰も知らない、自己満足の代物であるが、股間を見る、ということはつまり、性交渉にいたる場合ということに他ならない。それ以外だと医者ならそれも可能かもしれない。またマッサージ師や、スタイリストなどもあるいは見る機会があるかもしれない。しかし、タトゥの場所は完全に股間、局部とも言える場所であるため、特殊な場合を除いて性交渉のときとするのが正しい。さて、見たものはだれも、ひっ、と声を上げる。ひっ、と声を上げて、天を仰ぐ。おお神よ、なぜに、あなたは地上に人間という生き物を創造したのでしょうか、人間は様々です、様々で、意外とキュートです。キュートなのに邪悪な雰囲気醸し出してる。なんて罪深い生き物なのでしょう。さあ、では、その大きな魔物、でかい魔物を教えてもらいましょう。そーれそーれそーれ。そんであっちゅうまに玉の輿。これ何のため?なんのためのタトゥだっけ。玉の輿に乗るためのそれだっけ、ちがうって言ってほしい、けれども、それもいいかあ、て専業主婦になって昼間からビール飲んでの転がっている今は思うんだよこれが。しあわせてなんだろう。

ミレニアム/図鑑/くるり

2010-08-31 | 若者的図鑑
これ、秀曲であります。

不規則的なる様々乙が織りなす不協和音、ともいえるグルーブ感。
うーん、なにか身体が持っていかれそう。身体があの世かどっかにもっていかれそうだから、やめてくれ、て叫びたくなります。叫んだところで持っていかれることに変わりないから。しかし、とまりません。

次第に心地よくなってくる。なんだろう、持っていかれてしまったのかな。あれだ、これ、ハーメルンだ。笛吹きですよ。ハーメルンの笛吹き。あれ、笛を吹いてさ、子どもをもろとも連れて行くじゃない、ふらふらって自然についていっちゃう感じ。もうどうでもいいやってついていっちゃうんでしょね。意識はあるんですよ、なんかやばいところに連れて行かれそう、ああ、俺やばい、ってたいていの子どもは感じてるんですよ、でも身体が言うことをきかない。それに近いです。
まさにハーメルンです。

裏声コーラスはばっちり決まってますねえ。なんでだろうな、文句が言えない。

波みたい。なんか波みたいだし、複雑ですよ。よく聞いてると、凝ってますよ。だいたいそうですよね。くるりってシンプルなことはしたくないっていう方針なんでしょうか。ほんまにいろいろやってくれてます。素晴らしいです。

井上靖 1991年1月29日 その(日本死人名辞典)

2010-08-30 | 若者的字引
靖が5時間にも及ぶ手術中になにを見たのか、彼がなくなった今となっては誰もわからない。

手術後の彼は人が変わったようだった。
実際変わっていたのかもしれない。手術によって、総入れ替えが実行された。脳以外、すべてを入れ替える。顔もよく似たものをつれてきて、脳死状態にし、入れ替えた。そんなことが可能なのか。検証はできない。誰も実行すらできない。

しかしそれを想像してしまうほど、靖は変わった。

以前よりもおとなしくなった。以前であれば、朝食に納豆がないだけで激情した。納豆は基本だろう、と彼は叫んで、妻ふみの髪を引きちぎっていた。誰も彼を止めることはできなかった。まるで暴走列車だった。それが手術後は仏のように穏やかに、くるものすべてを、諦めなさい、と諭した。
諭せばすべてわかるさ、皆兄弟なのだから、としかし納豆を食べた。

それから彼は音楽を聞くようになった。
いぜんには音楽など聞いてやるかと、突っ張っていたのに、喜んで聴くようになった。これさえあれば俺はなにもいらないとさえ言う。あきらかにおかしい。

靖に何があったのか、我々は想像するしかない。

マーチ/図鑑/くるり

2010-08-30 | 若者的図鑑
エモーショーン。こんな気分わああああ、春一番に乗って消えていけばいいのに。
消えていきますよ。あとで振り返ったときにあれ、なんやっけ、わからんけど、まあいいかあ。て思う。

がたんとおとなしくなったかと思えば、またぐうううんと上がってせわしないわ。

アルバムの2曲目に持ってきてますねえ。
なんというか勢いにのってきました。全然売れてないけど、売れへんやろうけど、まあ、この辺で勘弁しといてやるわ。

歌詞は意味わかりません。

ノイズに近いギターですが、それもそれですよ。ノイズでも何ら困ることなどありません。
音楽は度量がひろいんです。こんなにもひろい度量でどーんとやってるんです。なんでもありじゃい。

で、マーチてなんなんでしょう。今ひとつわかりませんけど。まあいっか。

意味のあること一つも言ってないけど、まあいっか。そういうときもある。毎回?そういうこともある。

文句はうけつけません。基本。

相手を傷つけずに、ワキガを気付かせる方法

2010-08-28 | リッスン・トゥ・ハー
「あの」

「なんですか?」

「なんというかさ」

「はい」

「匂いってあるよね?」

「匂いですか?」

「そう、匂い」

「ありますが、それがなんですか」

「たいせつだよね」

「もちろん、大切です」

「ぼくはね、その匂いを研究しているんだ」

「そうすか」

「そしてひとつの結論がでた」

「なんでしょうか」

「匂いには2種類ある」

「たった2種類ですか」

「そう、小手先でいろいろあっても、真ん中で分けたら2種類」

「どんなものでも真ん中で分けたら2種類でしょ」

「ひとつは」

「もう、この末っ子体質が」

「納豆」

「ピンポイントじゃないですかそれ」

「納豆の匂いが一翼を担う」

「大丈夫?ひとつ納豆で大丈夫?」

「少なくとも世の中の半分の匂いは結局納豆を根源としている」

「なんて存在感のある保存食なんだろうか」

「そしてもうひとつ」

「はい」

「それが脇臭」

「悪臭?」

「そう、脇臭がもう一方を担っている」

「それは衝撃的ですねえ」

「ふたつが混ざりあえばどのような匂いにでもなる」

「そらノーベル賞ものの発見さ」

「ぬぬぬ!」

「なんすか?薮から棒に」

「脇臭に偏った反応」

「俺すか?」

「そうそう」

「そっかあ」

「で、匂い成分の混ざり方がね」

「そうかあ」

「そのバランスがとても重要なのさ」

「そうかあ、脇臭かあ」

「まずい、脇臭に引っかかってる」

「脇臭の偏った匂いかあ」

「大丈夫、ほとんど気にならないから、大丈夫」

「世の中の半分の匂いに俺は偏っているんだなあ」

「それうそだから、世の中の半分はにんにくだから」

「俺はなんのために今ここにいるんだろうか」

「人生の意味を問うている」

「俺は脇臭を放つ猛獣なのかあ」

「誰もそんなこと言ってないから、立ち直ろう、いっしょに立ち直ろうプログラムを組むよ」

「俺は脇臭を放つモンスターなのかあ」

「ちがう、安心しなさい、君は脇臭を放つ天使だ」

「天使?」

「そう、背中に羽が生え、白い布をまとって薄着で、頭には輪っかがのっていて、脇臭を放つ」

「天使かあ」

「みんなから愛される天使さ」

「それならそれでいいかなと思える自分が好きです」

「ミッション・コンプリート!」

Long Tall Sally/NIKKI/くるり

2010-08-27 | 若者的図鑑
なんとなくこのアルバムは2極化が進んでいるんじゃないでしょうかね。

すごくスタンダードな曲、シングルとしてばりばり出していきたい曲と、そのB面にいてその良さが発揮されるような曲。
見事に別れています。中途半端な曲はあまりないのではないかな。
その両極端な選曲がくるりのバランス感覚を感じます。

この曲は後者で、展開とかメロディとか、詩とか、予想外。
予想できない方向にむけて放たれて、油断してたらすぐ上にあって、凄い音を立てて降ってくる。
降ってきて、致命傷を与えるのが得意。その襲撃をわたしたちは楽しんでいるのです。
楽しませてもらっているのです。
ありがとうございます。
感謝したくなります。そのためにいかなる代償をも払ってもいいと思える。

くるり憎いバンドです。なんとも憎い。

海に向かって叫んでもらいたい

2010-08-27 | リッスン・トゥ・ハー
「心の底から声を出してね」

「海に向って?」

「そう波にも負けずに」

「なんのために」

「いいか、姿勢を見せるんだよ、先方にこんなに必死になってやってますって」

「はあ」

「そしたら自然に契約も取れるって」

「そんなに簡単なものでしょうか」

「意外とこう言うのは雰囲気に流されるものだ」

「そうですかねえ」

「こっちのペースに引き込むこと」

「ペースに」

「海は広い、その海に向って叫ぶなんざ正気の沙汰ではないだろう」

「節目節目によくあるんじゃないですかね」

「ひそかに海に向って叫んでもらいたがっているんだよ先方は」

「ひそかに」

「決して表立って叫んでなどとは言わないが、心のどこかでは常に思っているのさ」

「なんでですかね」

「それは自分が何かドラマの主人公になったような気分になるからだろうよ」

「主人公」

「ああ、もちろん誰だってそれぞれの人生の主人公であることにはちがいない」

「いいですよ、その青春のフォローはしなくても」

「海に向って叫ぶことなんて、正直なんでもないことだし、叫んだところで何も変わらない」

「そうですね」

「しかし、それをされると、ほろっときちゃうんだね」

「ほろっときますかね」

「間違いなくくるよ、そこを狙う」

「凄い自信ですね」

「人生かけてるものの輝きってやつさ」

「松村さん、人生かけてるんですか?」

「その覚悟だよ」

「お見それしました」

「では、叫んでみようか」

「お願いします」

「お箸つけましょうか?」

「次!」

「お弁当温めましょうか?」

「次!」

「ありがとうございまーす!」

「いい!」

虹色の天使/NIKKI/くるり

2010-08-26 | 若者的図鑑
一転して、スタンダードロックの疾走感です。
ずずだだだだだだずずだだだだだだと駆けていきますね、あれは京都ロフトにむかっているのでしょう。

もう新しくなりますので、間に合うかな、間に合うかな、って周りの人はおもってしまうのですが、間に合わなくても間に合ってもどちらでもいいんですね、何も買わないわけだし、ただロフトに向って駆けてるってことが重要なんです。

振り切って、ついてくる欲望とか、しがらみを振り切っていく。爽快感、これは炭酸水の爽快感。人工甘味料のあまったるさなんて、捨てろ捨ててしまえ、サイダーの昔からあるサイダーの甘さだ、爽やかな甘さだこれは。

胸が痛くなる。急に走り出したから。とまっては行けないと言われたから。誰に。わかりません。でもとまったらそこで終わりだよって言われた気がした。
天使も大変なんですねえ。よく言われます。

虹色の天使なんですから、正気か、と思いましたよ、このタイトル。メルヘンすぎるやろ、と。内容もあんまりひねってないような。いやあんまり読んでないんで詳しいことはわかりませんけど。
しかし、この駆けてく感じが虹色の天使そのものじゃないか。実際には天使じゃないか、年頃の娘さんですね。

短い曲が多いですが、それは正解なんですよね。この物足りなさが、何度も聞いてしまう所以。

好きやわあ。

キーンランドCガルダン

2010-08-26 | リッスン・トゥ・ハー
キーランド・C・ガルダンは弱虫だ。しかし、誰もがそうは思っていない。いわゆる世間とのギャップに彼女は苦しんでいた。誰も見ていないところでそっと涙も流す。愚痴を言う相手もいないので、ぬいぐるみ相手にぶつぶつつぶやいている。世間のイメージは屈強な戦士、どんな敵にも向かっていく姿勢、恐れなど皆無である、という強く燃えたぎった目、大鎌を軽々扱う肉体。人類はじまって以来の戦士、との呼び声は高い。キーランド・C・ガルダンがひとたび動き出せば、風が吹く。嵐だ。これは嵐が、がんがんに吹き荒れる。雨、強い雨が頬を打ち、稲光はガルダンに落ちる。電気をうけて、雄叫びを上げる。ぐおおおおお、彼女は痛みを感じていない。苦しみも感じていない。ただ、自分の本当の姿を知ってほしいと言う思いがわき起こって、とまらなくなる。どうしようか、どうしようか、と彼女は言った。稲光が彼女の芯を打ち、本当の姿、が出現したのだ。それ、は彼女の皮を破ってばりばりばりと出てきた。馬だった。そして、ひひんと吼えて山に。

命の連鎖つづる映像美

2010-08-26 | リッスン・トゥ・ハー
「命をつなぐって大切じゃない」

「大切ですよ」

「だから映像に残そうって気になったの」

「なるほど」

「たいへんだった、なんせ命なんだから」

「そうですか」

「しかも連鎖ときた」

「連鎖ときた」

「いったいどうやって映像に残せばいいのか」

「わかりませんねえ」

「だからわからないことは専門家に聞くのが一番と思って」

「賢いやり方ですね」

「聞きました、あたし」

「どうでしたでしょうか」

「連鎖というぐらいだから、らせんを表現したらいいのだと言われました」

「らせん?」

「つまり遺伝子ですよ」

「まさにらせん」

「しかしそれを映像として残すには様々な壁が立ちはだかります」

「そらそうでしょうよ」

「しかしなんとか残せましたよ」

「すごいですねえ」

「ねつ造とも言いますよ」

「言わなくていいですよ、たとえそうだとしても、今はそんなこと聞きたくなかった」

「プロジェクトチームが作り上げたのです」

「それは価値があるのかないのかよくわかりませんね」

「いいんです、ねつ造でもいいんです」

「いいですよ、そんなことならどんどんねつ造してください」

「それを本気でやっている姿が何より美しいわけ」

「それは美しいことでしょう」

「けなげさだよね」

「儚さとも言います」

「その映像を見て見ましょう」

「わーい」

「どうぞ」

「あれ、これ、ひたすらマッシュポテトを食べている映像だよ」

「隠喩」

「日本の文化隠喩」

「誇るべき文化」

Ring Ring Ring!/NIKKI/くるり

2010-08-25 | 若者的図鑑
荒々しいギターリフだぜ、といいたくなります。
ハーモニカのなんて陽気な歌心。

いやあファンキーなサウンドだぜ。

軽々と飛び越えていく、どんどん飛び越えていきますよ、羊。あの羊頼みもしないのにどんどんうちにやってきてわ柵を飛び越えて出て行きますね。野性味あふれてますね。こういう輩は飼いならせやしない、けれど懐いてくるので始末に負えない。まったく困った困った。ちょっとしたいろんな吐息がアクセントになってまして、飽きませんよ。繰り返し聞いてもちっとも飽きませんので、お得ですねえ。お得感がありますねえ。シスコーン並ですねえ。シスコーンキャラメル味でました。うますぎて飼うのをためらってしまいます。でもやっぱりチョコレートがいちばんおいしいです。わたしはそれが好きです。牛乳とあわさるとチョコミルクになるところがいいですよね。はい。リンリンリン、この音感の良さ。叫んじゃいそう。思わず叫んですれ違った人が振り返って、目が合って、まあまあ。

このアルバムいいですねえ。わたしはあまり聞いてなかったけれども、改めて聞いてみるとあらなんていいのでしょうか。

いや、わかります。わたしの中でくるりはなんでもあり。
くるりであればすべて許されるという領域にあります。だから無条件で信じきってしまう傾向にあります。
しかし、信じきって何が悪いというのですか、何も悪いことはありませんよ。

この2ふん35びょうの疾走感を聞きましょう。

トップ10:シューマッハ事件簿

2010-08-25 | リッスン・トゥ・ハー
シューマッハがやらかした。落とし穴を掘っていた。通る人々はどんどん落ちている。かなり大きな落とし穴だ。シューマッハは一人で掘ったと言う、なんという根気だろう。さすがはシューマッハだ。落ちた人々も別に悪い気ではない。むしろ光栄だと胸を張る。シューマッハが掘ったのだから、落ちてやるのが礼儀だろう、という中年の男性もいる。シューマッハの落とし穴を一目見ようとわざわざこの浅草までやってきたものもいる。わお、とか、わんだほー、とか感嘆の声を上げている。肝心のシューマッハは、ここにはいない。次のいたずらを考えてその用意をしているのだろう。稚内、あたりにいくという風の便りが届いていた。シューマッハは稚内でいったいどんなことをやらかすのだろうか。わくわくするなあ、と先ほどの男性は言う。そもそもシューマッハはどうしていたずらをはじめたのだろうか、その理由を彼はインタビューで答えている。「ははん、その疑問は当然だろうな、もともとおいらはレーサーなんだから。正気か、という人もいたよ、必死で止めてくるんだ、おいらが言うことを聞かないと怒りだす奴もいて、おいら、それに耐えたよ、がんがんにこん棒で殴りつけてくるのに耐えたよ。もう何度もやめようかと思ったよ、でもね、待ってくれる人がいるんだ、おいらのいたずらを待っていてくれる人がいるんだから、おいらやめることができねえ。もともとは神の啓示ってやつ?降ってきたの、シューマッハよいたずらをせよって、それが最初かな、へへん」

飛ばないボールを開発しました

2010-08-25 | リッスン・トゥ・ハー
「全く飛びませんよ、まあ見てなさい」

「なんのためにだ、なんのためにそんなボールを開発したんだ」

「それは依頼を受けてのこと、そこに深い意味などありません」

「プロ野球界は混乱するぞ」

「わたしの知ったとこではありません」

「なんてことを」

「さあ、そんな後のはなしは置いといて、このボールの性能を見てください」

「こいつは何もわかっていない」

「ピッチャーはプロ野球で活躍するダルビッシュさんです」

「そんな無駄にプロ野球選手なんか連れてきて」

「おーい、投げて!」

「こいつは何もわかっていない」

「で、打つ方はと、えー、そこのティッシュ配ってる君、よろしく」

「そこのティッシュ配ってる人が打つのなら、それはもともと飛ばないでしょうよ、というか打てないでしょ」

「いや、いい身体してるから、きっと飛ぶよこの子はやる子だよ」

「じゃあ、見せてくださいよ」

「はい、投げてー、そう、投げて、打つ、ほらライトフライ」

「素人がダルビッシュから打って外野まで飛んだ!」

「でも定位置だよ」

「それでもダルビッシュから打ってるじゃないですか、ほらダルビッシュ肩を落としてる、ペナントレースに影響でるじゃないですか」

「ダルビッシュも人間だからね」

「ほら素人ガッツポーズですよ」

「やっぱり彼できる子だよ、ぼくの目はたしかだった」

「いや、ボール飛びますやん」

「いやいや、彼だからこそよ、ティッシュ配りの彼だからこそライトフライよ」

「全然説得力ないですけど」

「じゃあ、バッター交代だ、今度、そこの黒板吹いてる彼女」

「女子ですか」

「いや、彼女のポテンシャルはなかなかのものだ」

「何となく展開が読めてきましたが」

「じゃあ、ダルちゃん、投げたって」

「ダルちゃんて、あんた何様」

「ダルちゃん振りかぶって投げた、低めのインコースいっぱいに食い込むスライダーかなんか」

「ダルちゃん本気やん」

「彼女、打って、ライトフライ、定位置より若干前!」

「やっぱりライトフライ!」

「定位置より若干前!」

「そこヒューチャーしてもあかんから」

「やはりぼくが見込んだだけあるよね」

「ほらダルちゃんがっくり」

「そら女子に打たれたんだからね」

「もう、今シーズン絶望でしょうよ」

「ボールのせいかな」

「ダルちゃん、絶不調なんですよ」

「ボールは関係ないよね」

「てか前のままでしょ?」

「そのとおり!」

「誇っていうことちゃう!」

冬の亡霊/NIKKI/くるり

2010-08-24 | 若者的図鑑
あれ、どこかで聞いたことあるなあ。
どことなく似ているなあ。これがくるりメロディの特徴的な部分だろうか。

言葉がうまい具合にはまっていますねえ。言葉選びが秀逸ですねえ。

帰ってこい、のところの息を吸わずに歌い上げる岸田さんのボーカルにきゅんとなってしまいそう。
歌のうまさ、ようやく増してきた表現力、説得力、歌声がそれを証明する。
まだ、足りない部分を残しているから、その部分を我々は聞いて、安心する。

その安心させる要素を残しておくことです。それがとてもうまい。くるりは安心させるんです。
聞くものを、大丈夫だよとはいいませんがね、何も言いませんが、目が物語っているわけです。
とてもいい奴な訳です。そうか大丈夫かあ、とため息をついて、熱燗なんかくうっと飲み干しませう。

くるりはね、ヘッドフォンをつけて大きめの音量で聞いてみてください。なんていう、心地よさだろうか。
安心です。

くじけそうになったときに聞いて損はありません。間違いありません。
たとえ突き放すようなこと言われても、それ、嘘ですから、完全に嘘だってバレてますから。
はいはい。