リッスン・トゥ・ハー

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ふたつめは今宵の月が僕を誘っていること2

2006-12-01 | 東京半熟日記
(沖縄編11)

階段を下る。低い天井、丸い形の通路をひたすら下る。長い。
わたしは、とある事情でミクロサイズになり、いわゆるミクロレディであり、どこかの偉い医者に乞われて出向き、人間の内部に入っていく、特別隊なのです。みたいな気分で下る。阿呆である。

玉泉洞。日本第二位の長さを誇る鍾乳洞です。沖縄の水、潮水が石を削り、作り出した原始のアート。その人工的に開いた入り口から鍾乳洞の内部へ足を踏み入れる。

途端に異空間。潮の甘い匂い、足元は通路が補整されているが、潮でぬめぬめと濡れていて、おそらく微生物の宝庫、靴底の面積内に20億匹ほど微生物がいるんでしょう。歩くたびスニーカーがキュキュと音を立てる。長いつららみたい、珊瑚礁からできた柔突起のような無数の鍾乳石に囲まれる。ここは静かで、時々聞こえるのは、観光客の足音、波の音?コウモリの嫁入り、行列をなし、闇で彼らはハネムーンにでかける。わたしは背景で、黒く短い髪を揺らす、いうなれば木のようなものなの。君が主役さ。星座のように、様々な形をした鍾乳石が名づけられている。だって人間は、色んなものに名前を付ける生き物だし、名前があるということは、恐怖が半減するような気がするから。だから、名前を付けたがる。わたしはそれを母なる愛とか、そういうもので包み込んであげるから心配ないのです。

「昇竜の鐘」が出迎えのベルを鳴らせば、「岩窟王」は湯を沸かす。湯を沸かすのは、産婆が沸かせとにかく沸かせ、そして男は部屋から出て外でまっとれ、と言ったからだったけどそれはこの際黙っておく。合図だ、と暗闇の中の生き物が活発にぞろぞろ。「かぼちゃ石」の上にシンデレラが乗ってら。乗って舞踏会に向かってら、向かって、継母と義姉らの嫉妬を買ってら、買ってだけどあの美しさなら仕方ないわねおめでとうシンデレラロードは続くよどこまでも。