リッスン・トゥ・ハー

春子の日記はこちら

Rust,AUSTRIA(世界のドア)

2010-02-28 | 若者的字引
Page3

中央に小さなドアー、それを囲んでいる大きなドアーがある。中央の方のは、子供用ペット用で、大きなものは大人用、そんな風にも見える。それらのドアーの色は黒であり、模様がある。3という数字がちいさくドアー上側についている。模様は、ドアーの中心から広がっていく星型。そして、ドアーを囲む柱、ちょっとした屋根、壁は黄色、左右対称の模様、贅沢でどこか物々しい出窓がふたつ、それも左右対称、ドアーのすぐ上にある。やがてその窓が開く、向かって右側の、いや、左側の窓が開くゆっくりと、ぎぎぎぎぎと音を立てながら。完全に開く、がそこには誰もいない。続いて開きだす向かって右側、やはりぎぎぎぎぎと音を立てて、完全に開く。誰もいない。部屋の中は暗すぎて見えない、差し込む光だけでは、部屋の中をはっきりと照らすには頼りない。逆に暗闇が漏れてくる。そんな気がするぐらい向こう側は暗い。と突然、左の窓にむっくりと立ち上がる人影。彼が、あるいは彼女が、何かを投げる。その白いものがふわりと風に乗り、すぅっと流れていく。と右の窓にむっくり立ち上がる人影。ふたつの影が近づいて窓枠から消えて、中央に重なる、ぐらいの時、近づいてくるものが、やがて紙飛行機だと気づいて僕の足元に見事に着陸したんだ。

Hobart,Tasmania,AUSTRALIA(世界のドア)

2010-02-28 | 若者的字引
Page6

白地に薄いブルーの枠、濃い緑の観葉植物が植えてあるその先にあるドアー。緑に埋まっているドアーを掘り出して見つけた、隠れ家、そういう印象を受ける。ドアーのすぐ上、光を取り込む為の窓があり、ドアーのすぐした、木製の踏み台、古い気を使っているようで、年季が入っている。周りの綺麗な建物と対照的で、だからよけいに魅力的に思える。踏み台に、置いてある、というよりも、落ちている、という方が近いかもしれない、ナイフと何枚かの紙幣、コイン。そして、ドアーの中央には53という数字。それらが後に重要なキーワードになろうとは、そのときの僕は全く想像もしていなかったわけで。

Martina,Franca,Puglia,ITALY(世界のドア)

2010-02-28 | 若者的字引
Page8

垂れ下がっている無数の細く長い紐、柔らかなクリーム色のドア-を柔らかに包んでいるのれん。風が吹くとさらさらと揺れて、猫が通るとさらさら揺れて、その音はとても耳に優しい音だ。ドア-は二枚あり、内側のドアーは暖簾の向こう側、外側のドアーはのれんより外、外側のドア-は常に開かれているのか。外ドア-はのれんと同じクリーム色、ホワイト板チョコレートのような形。ヘンデルもグレーテルも、匂いにつられて、ふらふらと近づく、そしてまずはじめにこのドア-を齧ったはずだ。だから向かって左側の下のほう、ほら少しかけてるところがあるだろう?

WARUNORI

2010-02-28 | リッスン・トゥ・ハー
アイスホッケーの決勝戦は壮絶であった。その祝賀会も負けず劣らず壮絶であった。選手どもは氷上で胴着のまま暴れ回った。たしかに試合は終わったのであるから、試合会場がどうなっても支障はないのであるが、選手どもは氷をたたき割り、それをがりがりと食らっている。まるでガリガリ君である。さらに胴着のまま、くんずほつれず、抱き合っているのか絡み合っているのか、それは見るものを複雑な気持ちにさせた。クレームは世界中から寄せられ、電話コーナーの職員はてんてこまいであった。24時間対応であって職員数も予算削減の結果5人でやっていたものだから、休む暇もなく対応し続けた。ナンシーはその一人で、安い賃金に文句を言いながら対応に右往左往した。ナンシーの恋人ケーシー高峰が彼女の携帯に連絡してきたがナンシーは出ることができず、それがきっかけになって二人は別れ、ナンシーは嘆き苦しみ、選手どもに対して裁判を起こした。

メルボルンや、お前の名前はメルボルンや

2010-02-28 | 若者的詩作
世に聞こえる僧侶がゾウにつけた名前はメルボルン
メルボルンは僧侶を踏みながら俺はメルボルンなのかと問う
そうだ、とつぶされながら僧侶は応える
なぜメルボルンなんだとさらに問う
メルボルンに行ってみたいから
メルボルンに行ってみたいから
憧れの地メルボルン
メルボルンが吠えるメルボルンにむけて

北緯26度24分 東経75度48分(365日空の旅)

2010-02-27 | 若者的字引
(インド ラージャスターン地方の町ジャイプールで、サリーの布を干す風景)

インドの空を飛んでいる。1月5日。緑色の大地を包み込んでいるオレンジの布。いくら包んでも包み足りないほどの大地。干されてよく乾いたその布を折り込んでサリーとするのであろう。女たちはそれをまとい、光る目で、社会を見る。布は恐ろしい力を持っている。社会性をかき消し、存在をかき消し、悪意や熱意など感情もかき消し、ただ従順な個のない女とすべく、サリーは働く。そのためのエネルギーを発する。インド中の女という女を包んでも包んでも足りないほどの強いエネルギー。それは情熱ともいえる。エネルギーがいったん放たれると治めることは難しい。サリーの思うままに任せていると秩序はない。だから包んでも包みきれない大地を行ったん包ませることでサリーの力を沈め、女が安全にまとえるように昔の人々が工夫の末生み出した儀式。

Twitterの面白さが分からない!?

2010-02-27 | リッスン・トゥ・ハー
これでもわからんのか、これでもか、とじいさんは妙な踊りを踊りながら迫ってくる。80年代にはやった踊りのことじゃろうが、と迫ってくる。手足をかくかくと動かしている。リズミカルで軽やかで見ているだけで楽しくなってくる。みんなやってる。楽しそうな表情で、また真剣な表情で、ダンス会場中がひとつになっている。そうかこれがツイッターか、と西田はつぶやく。

50回転ズのビリビリ!!/ザ50回転ズ

2010-02-25 | 若者的図鑑


なんだかよくわからない人たちです。海外での公演も成功させているそうで。ワールドワイドな活躍が期待。

容姿や、名前、曲名、演奏スタイルはコミックバンドかと思うところですが、その音楽性は、メッセージ性の強い歌詞、メロディはストレートで、物足りないぐらい。ひねりが足りない。それは悪い意味ではなくて、あくまでも選択しなかっただけのレベルの高いものに思えます。

これは懐の深さです。懐の深さを感じさせる間を、曲間に感じて、演奏し終えて、わたしに与える衝撃は、見せたくないのだけれど、隠してしまいたいけど思わず吐き出してしまいそうな。それを成り立たせる確かな技術があるという。3人で作り上げる空気感、それは技術を凌駕して、あまりあるということですつまり。

一見、なんでもないような世界観、どこにでもありそうなメロディ、でもちょっと距離を置いてみると、とたんに輝きだす。

独特の魅力を放つバンドとして地位を確立し、そのまま突き進んでいってほしいですね。

22222

2010-02-25 | リッスン・トゥ・ハー
宏はミルクをコップにつぎ一気に飲み干した、ミルクは冷えていて、腹にすとんと収まる。部屋の中には宏以外にもうひとりの人間がいる。もうひとりは息をしていない、心臓も動いていない。宏が殺したのではない。仕方なかったのだ。彼女は宏に詰め寄り、あの女と別れなさい、と叫びながら頬を何度も打った。それでおさまるのならいくら打たれてもいいと宏は無表情にじっと彼女の目を見ていた。それが気に入らなかったのだろう、彼女は宏に体当たりし、よろめく宏にさらに体当たりをしようとして全力で頭をむけてつっこんでくる。宏はかろうじてバランスを取り、それをよける。彼女はそのまま棚にぶつかる、ものすごい音がして彼女は倒れ込む。棚に入れてあった包丁が落ちてくる。下に倒れた彼女に刺さる。彼女はうめき声もあげずに動かなくなる。まいったなあ、と宏はつぶやく。ミクルは腹を冷やし、ぐるぐると腹が低く鳴る。まいったなあ、もういちどつぶやく。宏がふと見る、デジタルの時計が表示していた22222。

宏の浮気相手、杳子はフライパンを洗っている。宏に食べさせるために今朝ホットケーキ焼いたときに使用した。フライパンを洗いながら杳子は幸せをかみしめる。宏は現在の彼女、いずみと別れ自分とつきあう、と昨日話してくれた。決意も固いという。信じてもいいような気がした。宏との出会いは勤めている歯科だった。杳子は歯科衛生士をしていてそこに患者として宏がやって、杳子は一目で好きになり宏が2度目に訪れたときにそっと手紙を渡した。そこにかかってくるまではとても長い時間だったけれど、かかってきてからは早かった。その2日後にはふたりははじめて治療室以外で会い、その日のうちに体を重ねた。はじめ遊びだったという宏も会う回数を重ねるにしたがい次第に杳子に惹かれるようになる。そしてその半年後、昨日宏はついに決意してくれた。杳子は宏との生活を想像し、ぼうっとしてフライパンを落とした。フライパンはけたたましい音をたてた。やだ、と杳子はつぶやく。それから117で時報を確認すると22222。