リッスン・トゥ・ハー

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昭和15年/上半期/直木賞

2008-03-30 | 二行目選考委員会
(河内仙介作/軍事郵便/一行目は)

――明治四十二年十月○日―雲。―


「めいじ、や。もういっぺんやり直し」明治四十二年「ちゃう。ええか、めいじ、や、お前が言うとるのは、めいじ、や」どうちがうんすか、師匠「イントネーションがぜんぜん違うやないか」そのイントネーションおかしいですよ


その6(台風レポーター編)

2008-03-27 | リッスン・トゥ・ハー
「その6(台風レポーター編)」

では現場より中継お願いします、というアナウンサーの言葉をきっかけに画面は暴風が吹き荒れそれに雨が混ざり荒れ狂う海のそば、波高く、コンクリートを飲み込もうとしている。イアホンをつけマイクを持ったマグロが強い風にあおられ上体をまっすぐ保てないでいる。マグロは苦痛の表情でそれでも置かれた状況を伝えようと必死になっているように見える。スタジオからの音が途切れ、暴風にもだえ打つマグロの姿だけが淡々と流れている。映像が乱れてノイズ、砂嵐の後、映ったのはマグロがでかい波に飲み込まれていく様子。かすかに見えたマグロの口元は微笑んでいるように見えた。
マグロが海に入ると、神の怒りがおさまったように、風はやみ、波は落ち着き、太陽が現れた。人々は、マグロを救世主とあがめたて、海の良く見える丘にマグロの銅像を立てようと考えていた。単に台風の目に入っただけだったが、すぐに同じ状態に戻ってしまうのだが、マグロはそれによってその地方で永遠なる存在となった。人々はマグロを食べることを、60日間自制した。当初は永遠に止めよう、と話していたが、マグロなしでは我慢ならず、10年、5年、3年8ヶ月、1年、話し合いのたびに短くなって、ちょうど60日たった寄り合いの最中、むさぼるように食った。結果的に60日自制したことになった。だってマグロ美味しいもん。それでよいのである。

その5(ゲームマスター編)

2008-03-25 | リッスン・トゥ・ハー
「その5(ゲームマスター編)」

会場は燃えていた。
ゲームマスターたちの気合とテクニックに熱くなった会場はごおごおと燃えていた。
会場の一角にいるマグロは、ひときわ目立っていた。
当然である時価にして300万はするであろう立派な黒マグロであった。
マグロの周辺だけは人々が垂れ流したよだれのせいで温度は若干低かった。
マグロはその前足の指先を、穴子のごとく変幻自在に動かして、高度な技を繰り出した。
その度に、流れるよだれが会場を冷やした。マグロは対戦相手を寄せ付けることなく勝利した。
次の対戦相手である女の子がマグロを指差して言った。
「シゲ子さん、魚介類が触った後のコントローラーはぬるっとしてる」
マグロだと認識されなかった自分を恥じたのだろうか。
あるいは確かにぬるっとしているがそれは穴子のぬめりであると主張したかったのだろうか。
あるいは自らはヴァーチャルリアリティーであり、そろそろ夕飯の時間が来たので帰るのだろうか。
マグロはコントローラーの「一時停止」ボタンを押し、と博打場の仕切り役のように「よおござんすか?よおござんすか?」とあたりを見回し、巨大スクリーンに飛び込む。マグロは飲み込まれて画面の中二次元となり、降ってきたゲージ回復アイテムのほっかほっかご飯に醤油と生卵をかけて大変美味そうに口に運んだ。マグロのくちゃくちゃと咀嚼する音がサラウンドシステムの巨大なスピーカーから延々と流れた。

ケータイも持った最初縮まった君との距離4

2008-03-24 | 東京半熟日記
(日帰り舞鶴編4)

牛肉を堪能し、海を見ると船が横切り、波が光る。
光、まさに春、風はゆるやかに枝を揺らしてはつつ、つつ、と風景を次のシーンに運ぶ。

油断していればはやデザートに移行します。





チョコレイトケイキに苺、ベリー、そして、からめるあいすです。
からめる、苦さが絶妙で、すっかり大人の味を演出してます。
なめらかな舌触りのアイスを口に含みつつ、チョコレイトに手を出してみますと、ほろ苦さが増して青春、




苺の戦士は、アイスクリームの海に乗り出す。向こう岸にあるのは希望か。絶望か。
アイスクリームに対してあまりにも無防備だ。この裸の味、すっぱさは苺の飾り気のなさに、感動すら覚えて噛み締めてみた。




そうか、わかった浄化するエスプレッソ、黒い液体を流し込んで世界とひとつになる儀式みたいな役割があったのだ珈琲には。山羊の排出物を食う猿のテンションが上がってて、それはどういうことだと試してみたくなるのが人間、偉い。





あえてそのままその香り、味をしっかり刻み付けて日常へ戻るわけ。

ケータイも持った最初縮まった君との距離3

2008-03-23 | 東京半熟日記
(日帰り舞鶴編3)

さてすでに、料理に負けているわけですが、次はメインです。
6種類の料理から選んで、わたしは、牛肉のクリームマスタードソース添えです。
ヴォリュームありそう。おなか減ってますから。





ライスがついています。ソースがたいへん濃厚、マスタードも嫌味でない程度にぴりりと香る。牛肉の肉汁がソースににじみ出ていますからそれを逃がさずわたしは絡めとって食べます。ブロッコリーの緑も鮮やかに光る。牛肉柔かく煮てありまして食べやすい、重要ですからね、食べる人のことを考えてある料理、手軽に食べる事が出来るそういうのが細かいポイントとなってあとで効いてきます。山椒のように効いてきます。

ああしかしよう考えたら海沿いですし、魚介類を食べたらよかったじゃないか、まあよいわ。




チェックのテーブルクロス、ワイングラスに水を注いで。

ナイフとフォオクを並べてくれる給仕の、1ミリ単位もずらさぬそろえる姿勢、それは一見すると神経質すぎるかな、とも思えるんですがプロフェッショナルの流儀なんです。その姿勢がかっこいい。よいか、何も聞くでない、心配するな仕事はする。

ケータイも持った最初縮まった君との距離2

2008-03-22 | 東京半熟日記
(日帰り舞鶴編2)

前菜でこのくおりてーならば期待できるではないかぬほほ、と笑う。
水を継ぎ足しに来る給仕、瞳はどこまでも清んでいる影のむこう、海に船ぶおおんと汽笛は聞こえんがその溶け合った風景にいる人々も、わたしのために動いているおもちゃみたいな自己中心的な思想、それをあえて持ってきて楽しむ余裕を同時に味わっているんです。

料理のたびにテーブルにやってきてかんたんにメニュの説明をしてくれる、なんとなくそれいい気分。
たまにはね、こんなのもね。

続いてスープです。





アサリのクリームスープ、貝!きた貝、だしが溢れんばかりにじみ出ると言う食材、貝、それをそのまま煮込みよってクリームスープにしたもんだからもうバファリンの半分もアサリだしでできているはずなんです。
さてスプウンですくう、と、みじん切りにされたベーコンやらじゃがいもなんかの野菜(何が入ってるのかよくわからなかった)なんかがころころとでてきて、以外にも、食感で楽しめるタイプの人です、彼女。ころころと表情の変わる君は春の空に置いてきた雲、を丸め取って食う。色んな食材が混ざり合ってクリームスープにあり、旨味というものが深い深い、そこにきて、一歩も譲る気がないアサリのだしがああ、しっかりと効いてて、これはいい仕事してます。アサリの身のむちむちとした食感も忘れずに楽しむ。

ケータイも持った最初縮まった君との距離

2008-03-20 | 東京半熟日記
(日帰り舞鶴編1)

ロックを生業とする俺そんな甘っちょろいもんいらーん、などと言うパンクロッカーもきっと頬緩みますよ、この美味いランチにゃあ。
ちょっといい店、おでかけ休日のランチもうすっかり春です。
一枚一枚、重ねた服を減らしていく時期です。
気分が浮かれてるうちに海の見える洒落たレストラントについていたのです。
どうも久し振りの東京半熟日記カテゴリーを使用する時がやってきました。
春ですから・・・管理職はどんどん外にでていくの方向で。
おっさんやないか!(BYモンスターエンジン)

こちら京都府舞鶴市、鶴の舞うと書いて舞鶴市なんと美しい名前の町でしょう。きっと鶴が空多い尽くして、青いとこみえないんで、海の青さでちょうどいいバランス、海があるってお得ですね。それだけで髪の毛2割増やから、いや気分的にね。海がないと、てっぺんのへんが薄く安易にお辞儀できない。
まあ、その舞鶴市に精神障害者が働ける施設としてあるんですけれど、大人気、行って納得だって質の高い料理を出してくれる。丁寧な接客でもてなしてくれる。しかも比較的低料金さあみなのもの食べておしまい。

ちょっと豪華なコースを注文しました。まずは前菜です。





シンプル、シンプリーな料理だけに実力が出るサラダ。
グリーンアスパラが見事な湯で加減でもってしゃきりり凛と立っています。
プチトマトの甘味、海老のぷりぷり感、中に隠れている半熟卵、むむむって唸らせますね。オリーブオイルかな、がささっとかけてあって魚介類の、野菜の本来の味を味わえるわけです。それぞれがそれぞれの一番いい部分を見せ合って、本領発揮してる。ほのかに磯の香りがしたのはそれは海が近いからでしょうか。