リッスン・トゥ・ハー

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夜行列車と烏瓜/もしもし

2008-02-28 | 若者的図鑑
くるり初のライブアルバムに収録されました。

くるり初の1000枚限定CDに入っていた一曲です。

吸ってみたいな君の丸くて大きなおっぱい、というフレーズはたぶん何の意味もなく大学生だった当時のリビドーにしたがったまま表現した感じです。
青い。青い。欲望持て余してます。
打上げで盛りあがっちゃって、ホテルや!ホテルいこかねえちゃん!
ええんや、学生やから、モラトリアムや、心配ない。
とその場の勢いで、全部済ましてる、それが許される時代、にじみ出てます。

その投げやりさが癖になる、一枚なんですね。
変化してきた過程のくるりからすればなんかびっくりしちゃうほどの曲ですね。
こんなバンドだったんですよ、まあ、後で知った事だけれど。

坂道/ファンデリア

2008-02-25 | 若者的図鑑
その付近、左右を木に被われたとても沖縄らしい道があるということで、歩いて向かいました。沖縄の人たちの普通の暮らしがそこにありました。この緑のトンネルを抜けたらそこは、豚足の国でした。振り向いたら最後、魔女の魔法にかかってしまって、一生帰れなくなってしまいそう。姿は見えないが鳥が鳴いている。猫が逃げていく。犬が吠える。当たり前に生活する日常を、ふいに思い出した。あの坂道は海へと続く坂道。遠い空の下君は待っているのだろう。大丈夫大丈夫とぼやけた太陽。とか鼻歌口ずさみながら海にでる。船がずっと遠くで、長い汽笛を鳴らしました。

ゆっくりと、刻むリズムに全然大丈夫、まだ帰ってこないからおばさんは。
だからもう少し、縁側で、潮の匂いいっしょにかいでようね、って言った。

焦る必要ない、もう少し待っていよう。

東京や虹やモノノケ姫や、そんなくすんだ色の(その色こそ味ですが)初期の名曲の中にあって、決して忘れちゃいけない大切な一曲です。

RADWIMPS4~おかずのごはん~/RADWIMPS

2008-02-24 | 若者的図鑑
かなり広いっす、あの一年、守備範囲めちゃ広いっす、須藤さんレギュラーやばいんじゃ・・・。っるせー、俺が守り続けてきたショートをそう簡単にわたしてたまるかか

レギュラー覚悟しといた方がええかもね。

オーダーメイドのような曲を生み出した彼らが、そのちょっと前にこんな名盤を出してたんだ。これはこれは。捨て曲なし、何処をとってもシングルにできる隙のなさ、このお得感。いいじゃないですか。

まあ音楽は比べるものじゃないと、最近分かってきたんだけど、バンプオブチキンのようであり、アシッドマンのようであり、ヒップホップもひっくるめて、いやいや、そんなんじゃないや、今までにないところに足突っ込んでる。
途中、赤ん坊の声が入っているという奇跡ですよね。そんなん入れて成り立つ音楽があるなんて。ロックで。ほかに不自然じゃないのデーモン閣下ぐらいじゃないの。

この切ない声、自分の勝負どころを理解してる。つぶやくように流れを引寄せて、突き放す。無防備に、突風の前に立って、向こう側を見ている。
叙景が覗えます。このバンドは売れるますわ。売れますわ。

もう売れてるって?

その3(回転寿司編)

2008-02-22 | リッスン・トゥ・ハー
向こう側を回る大トロの握りを狙うように見つめながら、ずずーっとマグロはお茶をすすった。
決してカウンターのみの職人がいる寿司屋には行かない、というのがマグロなりの流儀だった。入ってもよい寿司屋は皿が回っている寿司屋のみ。それは単に金銭的な理由からそうしていたのかもしれない。
マグロが来店してから、当の回転寿司屋の人気皿大トロは全く食べられなくなった。
当然である、時価にして300万の立派な黒マグロであった。
マグロを見た後では、目の前を流れる得体の知れぬ大トロがとても貧相に見えた。
寿司屋の大トロを食べるものは、もうマグロだけだった。マグロは醤油をほんの少しつけ、トロの甘さを舌で味わうように噛み、飲み込んだ。
隣に座った家族連れの中の女の子が、マグロを指差して「シゲ子さん、魚介類は、お箸の持ち方知らんのね」と言った。
マグロだと認識されなかった自分を恥じたのだろうか。
あるいはマグロに箸の持ち方を教えてくれたニホンザルへの怒りを露にしたのだろうか。
あるいはわさびが利きすぎていたのだろうか。
マグロは、ぬるくなったお茶をぐいっと飲み干し立ち上がり、けーん、と鳴いた。お勘定、と言いたかったのだろう。
気付いてやってきた店員は皿の数を数え、それに見合った分のマグロの身をそぎ落として、ありがとうございます、と言った。うなづいてマグロは自動扉を開けた。外から吹いてきた強い風のせいで、マグロの血の匂いが回転寿司屋一面に広がった。

その2(市民プール編)

2008-02-17 | リッスン・トゥ・ハー
マグロが泳いでいた。
広く深い海ではない、25m×16mの市民プールの中を泳いでいた。
記録的な猛暑のもとで人々はこぞって水に浸かっていたのだから、そこに時価にして300万はするであろう黒マグロが混ざっていても何ら不思議ではない。
監視員をはじめ、泳ぐ人はマグロのしなやかな泳ぎっぷりを見て、よだれを垂れ流し、プールの水かさは増していた。
その、いくぶん粘り気が増した市民プールの中を、気にすることなくマグロはぐんと進んだ。
ひと掻きで25m進むものだから、マグロはひと掻きごとにターンをしなければならなかった。端に近づくとマグロはくるり見事に回って、足で壁を蹴る。また25m進んでくるりと回って足で蹴る。
マグロはとてもつまらなそうな顔で、それを淡々と繰り返していた。
ふとプールの縁を女の子とその母親らしきふたりが歩いてきた。女の子は泳いでいるマグロをちらりと見て、「シゲ子さん、魚介類が水泳キャップ着用してない」とつぶやいた。
マグロだと認識されなかった自分を恥じたのだろうか。
あるいは女の子のアニメプリントの面積の小さなビキニに反応したのだろうか。
あるいはそろそろ泳ぐことに飽きただけなのだろうか。
マグロは、けーん、とひとつ鳴いて跳ね上がった。
マグロの筋肉を余すことなく利用して、跳ね上がったマグロはうまく上昇気流に乗った。空に白い気流を引いてマグロは山の向こうへ消えてしまい、その後を追うように入道雲が空を覆った。

推定無罪

2008-02-12 | 若者的詩作
推定無罪、祝杯上げろ特上寿司85人前頼んで
分厚いステーキは牛一頭分、鮮やかな温野菜を添えて
あ勘定は隣のおっさんにつけといて
踊る阿呆に見る阿呆同じ阿呆なら踊らにゃ損損、てなもんや
宴もたけなわ、それでは寝ますか、ひとつのふとん奪い合ってさ
ようこそ、このサバイバルもとい、触れ合いたいと思う夜に
喜んでいるのか、嫌がっているのかはっきりしてくれよ君

夢まで一緒だってなんて言ってないからさっさと寝ろよ
たとえば今が冬だからこたつにあたって
レンコンを辛く炊いた奴に七味唐辛子を振る
それを食いながら熱燗をくいっといっぱいああ幸せだあとつぶやいて時々
ちょっとだけ乳繰り合いながら何度も年を重ねよう
都合ええことに失うものは何もない
よろしくおねがいします永遠に君、それは涙か!

その1(プラットホーム編)

2008-02-09 | リッスン・トゥ・ハー
夕刻、駅にマグロが走ってくる。
切符は事前に手に持っていて、それを迷うことなく投入し改札口を通り抜けたマグロは大変急いでいる様子だった。
マグロはしかし、誰も声こそかけなかったが、周りの客からじろじろと見られた。
当然である、時価にして300万はするであろう立派な黒マグロだった。
ある人は唖然とし、ある人は腰を抜かし、ある人はよだれを垂らした。よだれはだらだらと真下に垂れて大きな水たまりを作った。少し気の早い一番星がゆらゆらと映った。
マグロはそれら視線を全く気にする様子もなく、まだ帰宅ラッシュ前の人もまばらなプラットフォームで電車をしばらく待っていた。
ハイキング帰りといった装いの親子が通りかかり、女の子がマグロを指差し「シゲ子さん、ほら、大きな魚介類!」と叫ぶと、途端に頬を、赤身よりも赤く染めた。
マグロだと認識されなかった自分を恥じたのだろうか。
あるいはいくぶん魚顔の女の子が、初恋のマグロに似ていて、マグロがとびきりのシャイボーイだったのだろうか。
あるいはただ夕焼けの加減でそう見えただけだろうか。
ふいに、マグロは跳ね上がり、さっきから流れ続けているよだれの水たまり、いやもはや池と呼べるほど広がった中に飛び込んでしぶきを上げ、深く深く潜っていった。
二度と浮き上がることはなかった。

あしたのこと

2008-02-08 | 若者的詩作
明日はあいにく午後から
雨降りに変わります待つ一人に成りすます
何年待ってたらいいのか途方に暮れて
やがて斜め前の学生さん星のように静かに
呼吸して目を閉じて耳をすまして祈る

開いてたその頁にしおりを挟んで
眠ろう、とつぶやいたが相づちは聞こえない
オーディオのヴォリュームをほんの少し上げて
聞こえないぐらいちいさく名前を呼んでみよう

毛布に包まったら何も聞こえなくなる

とりあえず明日はカレーでも作ろう
玉ねぎをじっくりと飴色に炒めて
お話の続きを読みながら煮込もう
隠し味にチョコレートをちょっとだけ入れよう

もぐらを踏む

2008-02-06 | 若者的詩作
御託並べて明日を待つよよ
徒労、不安だ僕ら沈む
息継ぎするため泳いでる

峠はすでに越えましたと諭すよ
ソファ座って話をするデジャヴ
僕ら一切を捨てて

ギター拾った若造が俺を歌犯そうと
ギラギラ煮えたぎった
いらいら握ったギター

ギラギラ太陽の真下
とりあえず

御託並べて今を生きるよ
ハローはにかんだもぐらを踏む
息継ぎするたび潜ってく

「体にアンパンを乗せたのではなくアンパンから体が生えてきたのです3」

2008-02-05 | 掌編~短編
乾いたアンパンは砂をこねて、唾液を混ぜ込み、人間らしき形をつくる。唾液はガムのように伸びて粘着性が高かった。もちろん砂糖が含まれているからである。ジャムおじさんと名づける。それに、自らの頭を作らせるように動きをプログラムし、言い忘れたがアンパンは天才であった。世界の天才をミキサーにかけて出てきた粕ほどの天才であった。だから、アンパンに不可能はなった。アンパンは自らがヒーローとなる世界を作り上げた。ばい菌をイメージした砂を作った。それは宿敵にするつもりだった。はひふへほ、というアンパンは自分がアンパンであるという自覚を失いかけた。自分は神だった。実際この世界では神そのものである。すべてを創造してしまったのだから。もう怖いものは何もない。
自分が作り上げた中でもっとも気に入っていたのがバタ子だった。アンパンはバタ子をそばに呼んでは弄んだ。バタ子はいい声で鳴いた。一通り終わるとアンパンはバタ子にオクラホマミキサーを躍らせた。綺麗だった。それを見ているときだけ、ただのアンパンに戻れた。明日もやはりかばおはアンパンを食いたいと叫び、俺がそこに向かう、そしてアンパンを千切って与え、ばい菌にあーんパンチを食らわせる。その繰り返しだった。俺は疲れているのかもしれない。俺はすべてを手に入れ、これ以上何を望んでいるというのだ。アンパンはそう自分に言い聞かせてバタ子を抱いた。バタ子は甘い味がした。
アンパンは激怒した。バタ子が甘い?どういうことだ、バタ子はしょっぱいだけのはず、甘いわけがない。バタ子は当惑していた。バタ子よ、正直に言え、誰だ?バタ子は震えている。やはりアンパンが砂をこねてつばを加え、作ったココナツの周りを回り始めた。目にも留まらぬ速さで回り始めた。バタ子よ止めろ、正直に言えば許そう、アンパンは叫んだがバタ子は止まる気配すら見せない。そして、バタ子はバターになってしまった。
アンパンは指ですくいペろりんちょとなめる、甘い、この甘さには覚えがあった。奴か、アンパンは飛び上がった。アンパンが作り上げた森が町が湖が震えた、空気を切る大きな音を立て、音速で飛んでいた。飛ぶアンパンを見て、ある子どもは流れ星に願いを言えたよ!とはしゃぎまわった。ちなみに願いは「破れない靴下」だった。戦後貧しい日本を想定してある子どもも、もちろんアンパンが唾液を練り上げてつくったものである。
 アンパンが空を高速で飛び、向かった先はメロンパンのもとだった。
 メロンパンは乙女を想定して練り上げたはずだった。きらきらとした目をする夢見がちな乙女の理想として、四天王に君臨させる予定だった。気持ちを入れすぎた、自分の中にほとばしる乙女像を凝縮して形にしたものがメロンパンだった。その思いの強さが裏目に出た。乙女は禁じられた恋に走ってしまったというわけだ。アンパンは、天才であったが、一途だった。バタ子が甘いことに気づき、メロンパンが禁じられた恋に走ったに違いないと思い込んだ。そして、その怒りを、いや、喜びかもしれなかった。乙女の禁じられた恋はたまらなく魅力的であった。だからその様子をとても聞きたくてここまでやってきたのかもしれなかった。自らの唾液がここまで進化したことがうれしかったのかもしれない。メロンパンは入浴中であった。
「入るぞ」とアンパンは小さく言って家に上がりこんだ。
 当然シャワーの音にかき消されてその小さな声はメロンパンに届いていない。
 アンパンが浴室に近づく、中から楽しそうな鼻歌が聞こえた。懐かしい歌だった。アンパンがまだ釣られ乾いたアンパンだった頃に歌っていた歌だった。それをアンパンもハミングしてみた。とたんに楽しい気分になった。ほんの一瞬、その頃に戻れるような気がした。なにもかもが消え去って、真っ暗闇の中で干からびていくアンパンに戻ったような気がした。しかしすぐに、中のメロンパンはアンパンの存在に気づいた。そして喜びをあらわにした。バスタオルもつけずに浴室から飛び出てくるメロンパンはかわいらしかった。まだ乙女の要素を十分に持っていた。だからアンパンはひとつ安心した。それが崩れてしまえば、ブルースなんかをしわがれた声で歌うようになっていたらどうしようと内心心配していたのだ。その心配は無用だった。メロンパンは以前と同じように無邪気にアンパンに抱きついた。アンパンは頭をなでてやった。
 一通り会いにきた恋人がするようなことをして、ふとアンパンは気になっていることを問いかけた。
「お前はバタ子とどういう関係なんだい?」
「お友達です」メロンパンはどうしてそんなことを聞くのかしら、という風に答えた。
「どういうお友達だい?」アンパンはだんだん馬鹿らしくなってきながら再び聞いた。
 もうどうでもいいのだ。激怒した自分に酔ってここまできたけれど、正直もうどうでもよかった。
「いっしょにおしゃべりしたり、お茶したりするお友達です」
「それだけかい?」アンパンの聞き方はぎとぎとの中年そのものだった。舌を伸ばしてメロンパンをなめながら聞いた。
あん、とメロンパンはひとつ喘いで、それ以上のものはありません、と答えた。
 それから情事を手早く済ませ、アンパンは再び飛び立った。バタ子はバターになってしまったが、やはり帰る場所はそこしかなかった。アンパンはバタ子のようなのをもう一度作りたいものだ、とおぼろげながら思った。月夜だった。

ウォーター

2008-02-03 | 若者的詩作
歪んだレンズ覗いたら未来が映りますか?
映らないなんでもない振りして答えた

刻むコード超える永久に眠って忘れてんだ
不安でいられないそうやってまたつながるスマイル

僕サイボーグ味も匂いも解りません
壊れた振りして缶コーヒー流し込んで錆びた

眠り込んで以来消えた悲鳴も一切も
ロンドン橋で絶望を持て余したいや

夕凪鳴いて湯気立ち上って
君がかすんで夢中になった
祈りは街さえ飲み込んでしまう

誰もいない、だけど悲しくないんだ

思い出した重い後悔を背負って
生き延びるんだ運命線変えたって?

流すウォーター乾く青に染まって悔やんでら
所以満ち足りない世界のどこですか?ウォーター

夕凪鳴いて湯気立ち上って
丸く描いて夢中になった
祈りは街さえ飲み込んでしまう

君はいない、だから悲しくなるんだ
誰もいないだけど悲しくないんだ
君がいない、だから悲しくなるんだ
僕はいないだから悲しくないんだ

僕サイボーグ味も匂いも愛も解りません。