リッスン・トゥ・ハー

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エドガー代打逆転満塁弾!

2010-07-31 | リッスン・トゥ・ハー
「もっと付け加えたいもっと付け加えたいもっと付け加えたい」

「なんですか薮から棒に、監督」

「だって付け加えたいじゃない」

「何をですか?」

「今でエドガー代打逆転満塁弾じゃない」

「はい」

「もっと長くしようと、これいじょうないぐらいに」

「なんで?」

「おもしろそうじゃない」

「しかし、何を付け加えるんですか、もうつけることないでしょう」

「それを考えるのが、俺、監督の仕事でしょうが」

「違うと思いますが」

「とにかく考えましょう」

「わかりましたよ」

「ホームランはさ、ライトスタンドへ入ったんだよね?」

「そうですね」

「じゃあ、西へを付け加えるのはどう」

「西へ、ですか」

「エドガー代打逆転満塁弾西へ!」

「ライトが西ってわけじゃないような」

「次!」

「エドガーのことを装飾していくのはどうですか」

「いいね!エドガーは、そうそう無類の風呂好きだ!」

「助っ人でいいんじゃないですか?」

「それいただき、無類の風呂好き助っ人エドガー代打逆転満塁弾西へ!」

「風呂好きもつけちゃったよ」

「あとは、代打された奴の名前も入れとこうか」

「代打されたやつといえば、誰ですか?」

「忘れたから、真田広之でいいんじゃない、華があるし」

「いやあかんでしょう、真田広之野球選手じゃないし」

「無類の風呂好き助っ人エドガー真田広之の代打逆転満塁弾西へ!」

「この末っ子気質!」

「そうだ基本的に入れていい言葉あるじゃない」

「なんですか?」

「9回2死サヨナラ」

「じゃないでしょう、6回のことでしょう」

「付け加えたい付け加えたい付け加えたい」

「わかりましたよ、もう好きにしてください」

「9回2死無類の風呂好き助っ人エドガー真田広之の代打逆転満塁サヨナラ弾西へ!」

「だいぶ長くなりましたね」

「そういえばさ」

「なんですか?」

「エドガーのことも言ってるんだからさ、真田のことも言ってやらなきゃ不公平じゃない」

「いいですよ、別に真田広之が試合にでてたわけでもないし」

「真田が怒って闇討ちしてくる可能性もあるじゃない」

「たしかに時代劇もやってましたけど真田、そんなデンジャラスじゃないですよ」

「真田といえば、まず俳優だね、そして、無類の、無類の」

「俳優いうてもうとるし。無類の、つけなきゃダメですか?」

「バランスの問題だから、無類の、無類の、ほら、なんかない?」

「そうですねえ、じゃあ、無類の犬好きでどうですか?」

「そうなの?」

「知りませんけど、イメージですよ」

「それいただき、9回2死無類の風呂好き助っ人エドガー無類の犬好き俳優真田広之の代打逆転満塁サヨナラ弾西へ!」

「長くなりましたねえ」

「俺、疲れた、寝る」

「毛布を!監督に毛布をかけろ!」

来春、のぞみとひかりは禁煙とす

2010-07-31 | リッスン・トゥ・ハー
煙草を吸ってはいけないということ。たとえ連結部分においても。座席はもちろんのこと、電車内のどこ部分であろうと煙草を吸ってはいけないことになった。愛煙家の反発はすごい。全車禁煙になってしまえば非常に困るから今のうちに愛煙家は反撃の狼煙を上げる。のぞみ、という割には望みなんて全くないわ、などとうまくもないことを堂々と言って、愛煙家は禁煙家に攻撃をくわえるようになる。攻撃と言っても実際に殴ったり、狙撃したり、塩酸を振りかけたりするのではない。精神的に追いつめていくタイプのねちねちとした攻撃だ。禁煙家の弱みにつけこんで、責める。愛煙家はそういうことがとてもうまいから、徐々に禁煙家がおとなしくなってくる。愛煙家が本気を出せばこんなものだ。ようやく、ひかりが見えたわ、などとうまくもないことをどうどうと言って、愛煙家はほくそえむ。以前と同じように、特別なゾーンをもうけてそこで吸ってもらうということから、進んで、全面的に吸っていいことになりつつある。前からこういう風に頑張ってたらよかったんだよ。さらに、新幹線だけでなく、駅、飛行機、公共施設、町中、家庭内、どんどん吸っていいことになりつつある。これが愛煙家の本気だ。リセットしたわけよ、完全にまずリセットして、そして俺らは生まれ変わったわけよ。おぎゃあと産声を上げて生まれたわけよ、と目を細める愛煙家・岸谷五朗さん(46歳)。

石田純一の後継者、ISSAに

2010-07-30 | リッスン・トゥ・ハー
石田が重い口を開いたのは、コロシアムでの闘いを終えて控え室、妻の東尾に口元ににじんだ血を拭ってもらいながら。「もう引退する、体力の限界だ、俺にはもう色男はつとまらねえ、後継者は一茶だ」。担当記者群からどよめき、天井を破ってお空に広がる。翌日の新聞、発表される。石田は引退、一茶が後継者。ダンスレッスンをしている一茶のもとに記者が集まる。多くを語らない一茶、ひとこと「夏草や純一どもが夢の跡」どよめき。一茶は石田の意志を受け取り、色男として今後過ごしていることを暗に誓ったのだ。世の女性は色めき立って、一茶の前に現れる。稀代の色男が代替わりした。抱かれなければ、と誰もが思った。女性だけでなく、男性も、なんなら一度ぐらいなら抱かれてもいいやと、その隙をうかがった。一茶はなかなか隙を見せずに、ダンスレッスンをこなしていた。以前と何ら変わりなく。人々も記者も退屈だと感じるようになった。石田の意志を継ぐものとして一茶は受け入れた、しかし受け入れただけでこの10年一人の女性として抱いていないではないか。石田の判断は間違っていたのではないか、一茶は何もできない臆病者なのではないのか、と騒ぎはじめた。騒ぎをよそに一茶はダンスレッスンを続けた。20年が経過した。石田に孫ができた。一茶はやはりダンスレッスンを続けていた。今となっては誰も注目していない。かつての美しい容姿や肉体は衰えていた。ある日、一茶はダンスレッスンを止め町に繰り出した。もう誰も一茶だと気付かなかった。ただの細めの中年だと認識した。一茶は早速女性に話しかけた。女性ははじめ、なにこのおっさん、と相手にしなかったが、一茶からにじみ出る色男のオーラに次第にやられて、すぐに虜になってしまった。もう何も目に入らない。女性には夫や子どもがいたが、それらをすべて投げ捨てて、女性は一茶の元を離れなかった。そういう風にして一茶は何人もの女性を虜にした。かくして、長い列になった。一茶隊と名付けられた。一茶は旅を続けた。一茶隊はどんどん長くなった。大陸へ渡る。さらに伸ばしていく。ある日、一茶が力つきた。その場で動かなくなった。一茶隊は機能を停止した。万里の長城の完成である。

「岐阜県の寺にいる」「会わせるわけにいかない」

2010-07-30 | リッスン・トゥ・ハー
「岐阜県の寺にいる」

「一体何をしているのです?」

「寺と言えば、さあなんでしょう?」

「こちらが聞いているのです」

「知らねえよ、勝手に行ったんだから、とにかくここにはいないの」

「連絡先を教えてください」

「知らない」

「どうして?」

「だから勝手に行ったんだから、どこに行ったのかも知らないし、向こうから連絡してこないからわからないの」

「まったく、いいですか、疑っているわけではないのです、事実を確かめたいだけです、教えてくれませんか」

「ほんとに知らないんだって、岐阜県の寺を一軒一軒あたればいいじゃない」

「いやですよ面倒くさい」

「おまえ、区役所がそんなこと言っていいの?」

「いいですよ、実際面倒くさいもの、やってられるかよってなもんですよ」

「うわ、おまえ、区長に苦情言ったらくびだよ」

「いいですよ、いちいち面倒なことを言われる職業なんて魅力も何もない、お好きなように」

「いいんだな、おれいったん言い出したら聞かない男だ」

「どうぞ、で、岐阜県の寺に確認するの面倒くさいので、死亡ということで報告しますので」

「意味がわからんよ」

「わからんくていいんです、そういうことにしておきますんで、実際には寺にいるんでしょうけど、いいです、それは架空の人物ですきっと」

「いないんだよ!」

「え?」

「おじいちゃんいないのこの世に、もう2階でミイラになってんの!岐阜県にもいないの!早く探してほしかったの!もう」

「言ってくれれば、はなしが早いのにもう」

「意思疎通意思疎通」

「ぷんぷん」

「ぷんぷん」

「じゃあ、ちょっと会ってきます」

「会わせるわけにいかない」

「なんでだよ!」

「死んでるから!」

「なるほど!」

関取の大バーゲン

2010-07-30 | リッスン・トゥ・ハー
もう、いらないんだ。いらない人たちがたくさんいる。だからバーゲンに出す。バーゲンという言葉に日本人は弱いからね。きっと、あっという間に売り切れるよ。使い方は人それぞれで、ちょっとした力仕事をまかせたり、話し相手ってのも悪くない、孫の用心棒ってのもある。でも、一緒に暮らすって言うことは、関取だって人間なんだから、イライラすることもあるし、声を荒げて反発することもある。それをうまくいなさないと、怒りの行き場がなくなり爆発してしまう。関取が爆発すると、半径2k以内は壊滅状態だ。その事態は避けたい。相撲協会としてもそれだけは回避するように様々な策を練っている。関取がイライラしていることを把握するための体内にセンサーを取り付け、中央管理し、危険だと判断すれば現場に行司が直行する。行司が仕切れば関取はすぐにおとなしくなる。関取だって人間なんだから、恋をする。若い関取であればなおさらだ。恋をし、それを関取はとどめておくことができない。伝えない恋なんて、かき混ぜない納豆と同じ、と考える。想いを伝える、うまくいくこともあるし、うまくいかないこともある。うまくいけば何の問題もない、あとは若いふたりにまかせて、我々は・・・、と席を外すだけだ。うまくいかないときは少々厄介だ。落ち込む関取はなにもしなくなる。何もする気が起こらないんだ、とねてばかりいる。やはりセンサーが反応して、相撲協会が知る、現場に行司がむかう。行司が仕切れば関取はまた自分の相撲が取れるようになる。行司と関取、我々が考えているよりも深い結びつきがあるわけ。マスター、おあいそ、お願い。

セクシーな背中のタトゥーが見え隠れ(会話)

2010-07-29 | リッスン・トゥ・ハー
「わたしは見ました」

「なんですか急に、七海君?」

「わたしは見たのです」

「なにをですか、しかしまず着席しなさい、全校集会中ですよ」

「タトゥは見えたり、隠れたりしました」

「誰のタトゥですか、そして着席しなさい、そろそろざわついてきますから」

「もちろん、アンジーの」

「アンジーのタトゥが見え隠れしたわけですね、それがどうしたのですか」

「ただ見え隠れしたわけではなく、タトゥ自身が動いていたからこうして話しているのです」

「タトゥ自身が?」

「パカパカ走っていました」

「馬ですか?」

「馬です」

「走っていたと?」

「走っていましたね、荒野をどこまでも」

「タトゥの?」

「そのとおり、タトゥの荒野をタトゥの馬がパカパカ」

「ひろい背中なんですね」

「ひろいよ、まあ、お父さんの背中の2倍ぐらいはあるだろうね」

「そのひろい背中の荒野を馬がパカパカ?」

「パカパカ、さらにタトゥのお城にたどり着いて、タトゥのスープを飲み干しますと」

「タトゥの歌を、タトゥの声で、歌うタトゥ」


セクシーな背中のタトゥーが見え隠れ

2010-07-29 | リッスン・トゥ・ハー
アンジーの背中を見ると、あるのだ。タトゥが、それを見たクルは目のいろを変えた。赤く赤く、宝石と言われる所以の輝きを発した。しかし強い。これ以上なく強くなっている。だからクルの目を奪うことは非常に難しい。アンジーの背中にあるのは蜘蛛、旅団のメンバーだという証拠。つまりアンジーもそれ相応の能力があり、闘いに長けている。クルは怒りに燃えている。家族親族一同を旅団に殺されたからである。その経験からクルは鍛錬を重ね、旅団に復讐するために能力を手に入れ今にいたる。アンジーも見つけた宝石をそうやすやすと逃がしてたまるかてなものである。かくして火花は散り、互いの能力を見せあいながら戦闘が開始される。間合いを計る。稲光が天空に轟いている。そして、ついにクルが攻撃を仕掛けた、そのとき、釣り竿をつかってクルの目を狙うものがいて、クルは完全にアンジーに意識が向いていたものだからいとも簡単にとられてしまう。油断?いや気配すら感じなかった。潜在的なものだろう。面白い、まだまだ荒削りだが、面白い。クルはそう感じた。隙をついた攻撃を仕掛けたものが、そう、ブラピだ。

浜崎あゆみ豪遊伝説は続く

2010-07-28 | リッスン・トゥ・ハー
「遊んでいるらしいね」

「誰が?」

「浜崎よ、もう、ショッピングやら食い道楽やら、好き放題してるらしいよ」

「それだけ稼いでるってことでしょう」

「しかし全盛期に比べたら確実にCD売れてないよね?大丈夫なの」

「問題ありませんよ」

「誰?」

「どうも浜崎のジャーマネです、はじめまして」

「ジャーマネ?マジで?なんでこんなロサンゼルスの吉野家のカウンターにいんの?」

「ええ。先ほどからはなしは聞かせてもらいました」

「いや、なんでいんのって?」

「派遣されているのです、浜崎に」

「浜崎に?あんたが?なんのために?」

「下々のものの話を聞くようにと」

「下々のものの話?」

「ええ、聞いて説明せよと」

「じゃあ、説明してもらいましょうか」

「浜崎には印税で得た収入総額が、3兆円あります」

「3兆?」

「3兆」

「なんかぴんとこないなあ」

「一円玉に換算すると東京ドーム2個分です」

「もっとぴんとこないなあ」

「小さな国なら買えますね」

「そりゃすごい!」

「そんな金を持っているわけですから、まあ、これから一生、どれだけ遊ぼうがなんら困らないわけです」

「そういうことか」

「しかも、浜崎はまだ引退しているわけではありません、さらに世に出てお金を稼ぐつもりなのです」

「まあ強欲」

「以前ほど売れなくなったとはいえ、まだ売れます。そこらへんのミュージシャンよりは確実に売れます」

「知名度が違うしね」

「信者はまだたくさんいます、確認しているだけで54人」

「すくな!」

「信者予備軍が129人」

「すくな!大丈夫なのそれで」

「信者のうちひとりがビルゲイツ」

「なるほど」

「ビルゲイツは浜崎のためなら資産の5%をなげうつ覚悟」

「なるほど」

「期待に応えたい浜崎」

「なるほど」

「なるほど」

「なるほど」

これが龍馬のいろは丸じゃい

2010-07-28 | リッスン・トゥ・ハー
龍馬は得意気、なにせいろは丸がすごく立派で、みんな歓声を上げている。うらやましそうに見ている。売ってくれ、と交渉してくるものもいる。デジカメで撮影しているものもいる。いろは丸の歌を作って合唱している合唱団もいる。絵を書くものもいる。音声記録として残し、ラジオ局に売り込むものもいる。龍馬はそれらのものに笑顔で応じ、好きにさせていた。これがおいどんのいろは丸じゃい、と胸を張った。そこに突如としてあらわれた黒船、いろは丸の10倍の大きさで、勢い良く煙を立ち上げて、勇猛果敢に港にやってくる。こんな片田舎の港じゃ狭すぎるから、沖の方に停泊させた。こうなるといろは丸のことなど誰も関心を示さない。人々の関心は黒船になる。いろは丸にやっていたことをそのまま黒船にする。龍馬は悲しげ。格の違いを見せつけられた感がある。アメリカは偉大じゃのう、とつぶやくが、そのつぶやきだって今では誰も聞いていない。だんだん腹が立ってくる。龍馬だって日本男児じゃい。黒船がなんじゃい、日本人なら日本で作った船じゃろうが。突撃じゃ、と龍馬はいろは丸に乗り込んで黒船に向かう。何をするわけでもない。ただ驚かせてやろうと思っただけ。黒船、小さい船がこちらにむかってくる、蝿を払うように大砲を撃つ。威嚇。龍馬かなりびびる。すごい水しぶきが上がった、水しぶきが落ちてきていろは丸は沈む。海の底。龍馬はまだ死ねない。死ねない、と泳いで岸に着く。人々が笑っている。自分のことを笑っている。さっきまであんなに尊敬されていたのに今はあざ笑っている。龍馬は、笑顔って残酷だな、と思った。

アルバイト経験で世の中をナメきってしまう

2010-07-27 | リッスン・トゥ・ハー
「なにしろアルバイトだ、対価を得るわけだ、学生時分からそりゃなめてしまうだろう」

「そうでしょうか」

「働いているという実感があるだろう、それは大きいよ」

「社会人とそう変わらないと?」

「全く同じじゃないか、金を稼ぐ、しかも安価、社会人よりもやってられないだろうよ」

「にもかかわらず、どうして働くんですか」

「それは、快楽を得たいためだろう」

「快楽?」

「そう、例えば服が欲しいという快楽、ギターが欲しいという快楽、金を使う快楽だね」

「なるほど」

「金を使う快楽を得るために金を得る、当然のことだね」

「わざわざ学生がする意味はあるのでしょうか」

「もちろん、人間はいくつであろうと快楽を得るのが大好きな生き物、学生であろうと同じこと」

「先生もですか?」

「もちろん、わたしも何のために働いているのかと言えば快楽を得るためだ、理解する、という快楽を」

「カッコいい」

「崇めたまえわたしを」

「はい」

加藤和樹、秋山莉奈になら処刑されてもいい!?

2010-07-27 | リッスン・トゥ・ハー
ただし、秋山なりの処刑だがな、と加藤は付け加える。秋山なりの、という言葉が意味する所は何か、専門家はチームを作り調査を開始した。まず秋山の周辺、秋山自身、向こう一ヶ月の天気、人気のスポットなどを念入りに調べた。浮かび上がってきたことは、秋山が通常のピストルで狙撃する、首を絞める、などの処刑をする技術に長けているわけではないということだ。秋山は世間に認知されている女性タレントそれ以上でもなしそれ以下でもなしという女だった。当然加藤もその認識で間違いないだろう。すると、加藤が意味する処刑、秋山なりの処刑とは一体どういう意味か、チームは次に加藤の周辺、加藤自身、向こう一ヶ月の天気、人気のスポットなどを念入りに調べた。今はパワースポットに人が集まるということだ。夕立に注意すべきだが、大きく崩れることはないとのことだ。さらに加藤は、秋山に対して複雑な感情を抱いている可能性が高いとの結果が得られた。詳しく調べると秋山の父親は、加藤の父親と同一人物である可能性が、0.00000008%あるということだ。我々はその可能性にかけた。もしもふたりの父親が同一人物ならば、兄妹で処刑などするはずがない。法律的にも厳しくなる。加藤がそれを知っているとしたら、加藤が言った処刑は、処刑ではなく、戯れる行為、家族としての絆を確認するための行為。チームは慎重に調査を続けた。調べていることを知った加藤は何をするかわからない。怒り狂い、暴徒と化すかもしれない。慎重にならざるを得なかった。にもかかわらず、調査チームの一人、アルバイトの西田くんがやらかした。それは西田くんがメガネ女子おすすめスイーツについて調査をしているとき、偶然、加藤が通りかかった。西田くんは加藤を加藤だと知らずに、自分が今加藤の周辺を調べていることを話した。本人曰くほんの雑談としてしゃべってしまったとのことだ。沈黙が怖かったとも。事実を知った加藤はすぐに秋山に連絡し、ふたりは逃げた。誰も知らない場所に。そこでシアワセに暮らしたとのことである。調査を台無しにした西田くんは、アルバイト代が50円下がったという。

ゾウに鼻で倒され、全身踏まれて飼育員

2010-07-26 | リッスン・トゥ・ハー
「ゾウも怒ったんだね」

「意外とすぐ怒るから気をつけた方がいい」

「そうなの?」

「そうだよ、ゾウほど怒りやすい動物はいない、そしてゾウほど怒ったら厄介な動物はいない」

「それはそうだろう、なんと言ってもでかいし力があるから」

「それだけじゃない、素早いんだ」

「意外とそうなんだ、それは強そうだ」

「強いなんてモンじゃない、破壊神といっても過言ではないぐらいだ」

「さすがにそれは過言でしょうよ、破壊神と言ったら相当だよ」

「相当なんだって、もう誰にもとめられないんだって」

「でもたとえば破壊神なら止められるわけでしょう」

「いや、破壊神は破壊することには定評があるが、暴れ狂うゾウを止めることには定評がないからあるいは」

「そんなことないでしょうに、破壊神でしょ、この世のどんなものよりも強いはずだろうよ」

「いいや、破壊神など、ゾウの前では、ブロッコリーのようなもの」

「ブロッコリーとは強く出たな、破壊神をブロッコリー呼ばわりするということがどういうことかわかってるの」

「ゾウの前では、どうしてもそうなってしまうの、なぜならゾウは最強、宇宙を統治するものそれがゾウ」

「神だろうよ、統治するものはさすがにゾウなんざ、言ってみれば神の使いみたいなもんだろう」

「いや、そうみせかけて実際に頂点にいるのがゾウだというわけだ」

「それは納得できないなあ、破壊神より強いなんて考えられん」

「絶対に強い、わしが保証する」

「わしは破壊神が強い、方に保証する」

「これでもか!うおーーーー!」

「わ!田中の皮膚を破ってゾウが出てきた!」

「破壊し尽くしてやるわしはゾウじゃ!」

「ゾウが暴れだしたぞ!」

「散々偉そうに言いやがってまずはオマエからゾウの恐ろしさを思い知らせてやるわ!」

「無駄だ!うおおーーーーー!」

「わ!木村の皮膚を破って破壊神が出てきた!」

「たいがいにせいよゾウよ、わしは破壊神じゃ!」

「かまうものか!ゾウの力を見よ!」

「この愚か者め!返り討ちにしてやる!」

「うおーーーー!」

「うおーーーー!」

「ああ、わしゾウです、皮膚がばりばりばりと破れてます」

「ああ、わし破壊神です、皮膚がぼろぼろぼろとはがれてます」

「最強なんてないんだね」

「みんな謙虚にならなくちゃいけないんだね」

「これが矛盾というやつです」

「良い子のみんなは覚えておこうね!」

マツコ・デラックスが沸騰寸前!

2010-07-26 | リッスン・トゥ・ハー
夏のせいだ。朝から気温は上昇し、10時時点ですでに40度を超えた。まだ上昇する気配。マツコの体内にある水分が、沸き立ちはじめる。別にマツコに限ったことではない。人間であれば誰でも沸き立ちはじめる気温。しかしマツコの場合はその程度が大きい。なぜならマツコが貴金属で全身を覆っており、それを外そうとしない。貴金属こそがあたしのアイデンティティだから、とマツコは頑なに貴金属を外さない。どころか、新たな貴金属をつけはじめている。どんどんつける。ここでやめたらマツコが廃ると言わんばかりに。全身をくまなく覆っていく。手持ちの貴金属では足りなくなると、マツコはアルミホイルをぐるぐる巻きにしはじめる。アルミホイルで自分を覆ってしまう。気温はさらに上昇する。45度。アルミホイル人間と化したマツコは、その中でもだえ苦しむ。なんのための苦行か。これはなんなのか、疑問など全く感じない。あたしのこの破天荒な生き様をみんかい、と言わんばかりの形相で、マツコの意識は遠のいて、体内の水分がふつふつからぐつぐつ、沸き立ち、皮膚や、毛、爪、身体の表面がとろけはじめた、息ができないほどの熱気がアルミホイルの中、マツコは意識がなくなる寸前、とても背の高い目鼻立ちのはっきりした男性に抱かれる妄想を見た。陽炎である。

向日葵や、太陽に向かって背比べ

2010-07-25 | リッスン・トゥ・ハー
「なんで太陽に向かうのでしょうか?」

「いい質問だね」

「なんでですか?」

「本質をついていてしかもシンプルで」

「だから、なんで太陽に向かうのでしょうか?」

「よろしい答えましょう、向日葵の花は知っているね?」

「おそらくアレだと思っている花があります」

「マア間違いないだろう、ちなみにその花の色は?」

「群青色ですね」

「群青色ですか」

「群青色です」

「そう表現したのを聞いたのは初めてだ」

「そうですか」

「しかし群青色と言われてみれば群青色以外の何者でもないような気がするね」

「だって群青色ですもの」

「それだけではないよね」

「もちろん、黄色やピンクや白、なんでもござれです」

「たのもしい」

「胸を貸しましょうか?」

「いいの?」

「いいとも、そもそもこの胸はあなたのものであった胸、今更とやかく言いません」

「では胸を借りるとしよう」

「ああ、やけに積極的ではありませんか」

「現代人なので、こっちも商売としてやってくるものでね」

裏切り者はろくな死に方しない

2010-07-25 | リッスン・トゥ・ハー
ろくな死に方、というのが老衰であるならば、裏切り者は老衰では死なない。老いてなお現役を豪語する裏切り者、ゆっくりと老後の人生を楽しむなど考えもしない。老後など存在しないと言わんばかりに、働く。裏切り者としての仕事、スパイ関係の全般の仕事をする。さすがに重要な任務は老いによる衰えにより失敗する可能性があるから依頼されなくなったが、価格競争の調査員、スーパーの万引きGメンなどそれなりにやりがいのある仕事をしている。時々働くってなんだろう、と疑問に思う。誰も答えてくれない真理みたいなものだ。働く、それを考えるために裏切り者は働く。女房子どもには本当の仕事のことは話せない。そういう契約になっている。だから万引きGメンをしているときに女房が万引きを働いた場面に遭遇したことがある。仕事に厳しい裏切り者はしっかりと女房の手を捕まえて事務所につれていく。女房は自分を捕まえたものが夫だと気付いていない。Gメンをするときには深く大きいサングラスをかけているし、若干声を低く迫力のあるように出しているから。女房はいつものように、はじめてです、もうしません、魔が差したのです、という。常習犯だ。裏切り者はそれを知っているから容赦はしない。あのねえ、奥さん、いいの、家族呼ぼうか、今日はもう家族にきてもらおうか?お願いしますそれだけはやめてください、もうしません、絶対にしません、お願いします、絶対にしません、赦してください。でもねえ、もう、20回目でしょう、ご主人呼ぼうか。やめてくださいお願いします、主人はお花屋さんで働いているんです、わたしがこんなことをしたと知ったら、あの人、きっと卒倒して、家を出て行くかもしれません、そんなことは避けたいですゆるしてください。裏切り者は次第に切なくなってくる。ご主人て俺じゃないか、まだ気付かないのか、こいつはなんで気付かないんだ、一緒に暮らしてきた30年間はなんなのだ、とふいにサングラスを外す。女房は悲鳴を上げて、呼ばないでって言ったのに、と叫ぶ。あなた違うの、これは誤解よ、ほら、Gメンの人の勘違いよ、あれ、Gメンの人がいなくなった、突然消えた、これはいったいどういうこと?まだ気付かないのか、俺だよ、俺がGメン。すべてさとった女房、なんぼのもんじゃい、と裏切り者の頬を殴り、これがあたしの痛みじゃい。痛くって痛くって痛くって裏切り者死ぬ。