リッスン・トゥ・ハー

春子の日記はこちら

東京停電

2011-03-31 | リッスン・トゥ・ハー
「停電になります」

「またですか?」

「そういわず困っている人がいるのです」

「わかった協力しますよ」

「ありがとうございます」

「でも仕事ができませんねえ、どうしようかな」

「今日は早く帰ったらどうですか?」

「でもなあ、家に帰っても何もすることがないし」

「ゆっくりしたらいいじゃないですか」

「ゆっくりしようにも、停電じゃ本も読めないし、ゲームもできない」

「なにもせずに家族とお話をしたらどうですか」

「話すことなんてありませんよ」

「あらためてしてみるのもいいですよ」

「そうかなあ、もうずいぶん話してないや」

「こんなときですから、ぜひやってみてください」

「わかった、どうせすることないんだから話してみるか」

「御協力ありがとうございます」

「いや、こっちこそ、なんか久しぶりにドキドキするわ」

「楽しみですか?」

「ちょっとね」

「ちなみにどんなはなしをするんですか?」

「そうだなあ、娘の小さい頃の思い出でも話そうかな」

「それはいいですね」

「娘はね、身体が弱かったからよく病気をしたんだよ」

「そうなんですか」

「いつかなんて、夜中に急に泣き出して、熱を測ったらすごく高い」

「はい」

「これはやばいぞって、思ったけれどあいてる病院もよくわからないし」

「そうですねえ」

「そのときの妻と言ったら」

「なんですか?」

「フライパン握りしめて、にんじんにんじんと叫びながら」

「は?」

「外に駆けてったんだ」

「意味が分かりませんが」

「そういうことがあったの」

「そうですか」

「じゃあ、帰るわ」

「はい、お気をつけて」

脱ゆとり

2011-03-31 | リッスン・トゥ・ハー
急ぐぞ!急ぐぞ!とにかく急いで生きるぞ!急がなければ私はでくのぼうだ。でくのぼうのように生きていきたいと言ったあの日は今や昔。現代人として全うするぞ。急いで急いで、寝る!起きる!食う!排便!歯磨き!顔荒い!めざましテレビを見る!着替える!会社へダッシュ!疲れて歩く!再びダッシュ!たどり着く!パソコンを立ち上げる!キーボードをすごい早さで叩く!叩く!なにをやっているのか知らない!なにか脈絡のない文章が出来上がる!上司に提出!怒られる!てへ、と言う!怒られる!鐘が鳴る!一目散に帰る!ダッシュ!疲れる!再びダッシュ!家に着く!パジャマに着替える!食う!風呂!寝る!のリズム。土日祝日関係ない。私はでくのぼうだ。繰り返すだけの毎日だ。それでもいいと思っている。それでもいいと言ってくれた。あなたを急いで愛する。それは当然の行為だよ。

水嶋ヒロ編集長

2011-03-30 | リッスン・トゥ・ハー
「編集長!編集長!」

「なんだね?」

「連載記事を書いてみました」

「書いたのか」

「これです読んでください」

「よかろう」

「どうですか?」

「まだ読めてないって」

「では読んでください」

「よかろう」

「このトノサマバッタが予想以上に柔らかい件とかどうですか」

「いやまだ読めてないって」

「では一刻も早く読んでください」

「よかろう」

「このトノサマバッタが予想以上に柔らかい件とかどうですか」

「デジャブ?これデジャブ?」

「どうですか?」

「読むから、読むからちょっと待ってって」

「このトノサマバッタが予想以上に柔らかい件とかどうですか」

「あなたのしゃべっている言葉の意味理解してない?」

「お願いします」

「あれ、意思疎通が図れてない?」

「どうですか?」

「わかった、ちょっと待ってて10分でいいから待ってて」

「このトノサマバッタが予想以上に柔らかい件とかどうですか」

「シャラップ!」

「どうですか?」

「いいかげん、ぼくも堪忍袋の緒を切るよ」

「どうですか?」

「てめえなめとったらいてこますどこら!」

「このトノサマバッタが予想以上に柔らかい件とかどうですか」

「・・・」

「どうですか?」

「すごくいいと思います」

「いや、そんな件ありませんけど」

「そうすか」

「ちゃんと読んでます?」

「ごめんなさい」

「まあ、いいですよ、次から気をつけてください」

「はい」

あたしが時代よってアイドルはオーラが全然違う

2011-03-30 | リッスン・トゥ・ハー
オーラの持つ禍々しさに触れたらもう、立ち上がれなくなるだろうから。髪の毛なんてね、一瞬で抜け落ちて、頬もこけて、目のくぼみ方も欧米人のそれ、なのに下っ腹ばかりがつきでてきて、栄養が偏ってるかんじ。ちゃんと1日3食食べてるんだけどね。触れたものに話を聞いたらいくつか共通している証言があって、例えばオーラがね迫ってくるんだって。おら、オーラだぞってどんどん迫ってくる。一度だけじゃなく、何度も何度もオーラだぞ。ところ構わずオーラだぞ。四六時中もオーラだぞ。オーラが来るたびにびくっとなるから、気の休まる時がない。そら疲れるわ。本体に、どれだけ離れても迫ってくるんだって。幻想みたいなものかもしれない、けれど、本物以上にびくっとなるもので、すごく身体が動くじゃない。するとひどい筋肉痛よ。まったくひどい筋肉痛で、動くのもおっくうになる。もう一生立ち上がれなくてもいいやと思う。食事もカロリーメイトで済ませる。バランス栄養食だからある程度はもつけれど、限界がある。そうやってだんだん、ゆっくりとオーラは身体を蝕んでいくの。

神のみぞ知る

2011-03-29 | リッスン・トゥ・ハー
神です。俺は神ですけど、知らんよ。なんも知らんよ。俺何も聞かされてへんし、書類も渡されてへんし、だから知らんよ。まあ知りたくもないけど。そんなこと知ったところで、怒鳴られるだけやし。別にええ。知らんでもええ。俺、のほほんと生きていきたい派やから、ええよ。プッチンプリンだけ大量に買い込んで、保存しとくからええよ。プッチンプリンだけあれば俺は生きていける気がするよ。あの弾力が俺を何度でも蘇らせるよ。ぐんぐん力が湧いてくるよ。俺は強いよ、最強とも言えるよ。神として、胸を張るよ。それだけやし、強いけどなんもできひんよ。だから期待せずにいてほしい。期待されたら神もつぶれるよ。プレッシャーに押しつぶされてしまいそうよ。そっと穏やかに生きていきたいよ。神のささやかな願い。

ひこにゃんVSひこねのよいにゃんこ

2011-03-29 | リッスン・トゥ・ハー
「あたしはひこにゃんですって」

「ちがうって」

「だってこんなに尻尾が長いんですよ」

「それはつくりもんやって」

「ひこにゃんだってつくりもんでしょ?」

「そこらへんは曖昧にしとこって」

「もう絶対ひこにゃんだって認めないならあたしはここを動きません」

「まったくこまったこまった」

「動きませんよ」

「ほら、ねこじゃらし!みてねこじゃらし!」

「そんなものひこにゃんは興味ありません」

「じゃあ、ねずみの死骸、ねずみの死骸!」

「ひこにゃんをなんだと思ってるんですか」

「野生動物でしょ?」

「あんなもんが野生にいたら、1時間でハイエナの餌食ですよ」

「ハイエナ、おらんやろ」

「じゃ、禿鷹の餌食」

「禿鷹もそうおらんて」

「じゃああの今旋回している鳥は何ですか?」

「あれはコウノトリかな」

「天然記念物の?」

「天然記念物の」

「なんでこんなところにいるんですか?」

「ねらってるんでしょ」

「ひこにゃんを?」

「ひこにゃんのポジションを」

「貪欲!」

「その貪欲さを絶滅回避にいかせばいいのにね」

「ごもっとも!」

住民から石を投げられる夢を見る

2011-03-28 | リッスン・トゥ・ハー
夢を見ると、目覚めは最悪。もう最悪すぎて吐きそうになっとる。私、夢が大嫌いで、いいところですぱんとちょんぎるように終わるから、脈絡もなく、移り変わるイメージに翻弄されんのは、いい加減にしてほしいわ。夢というだけで何もかも許されると思うなよと、私は主張する。大いに主張する。誰の共感を得られなくともかまわんよ。私は私の好きなようにさせてもらう。

気づいたら、私は水玉のシャツをきている。選んでいるのだ。無意識のうちに。水玉のごく小さな水玉のシャツで、もうこれは10年ほど前に買ったシャツで、気に入っているけれど、いいけがんくたびれてきたんで、そろそろお役御免といきましょかと声がかかってるんで、じゃあおおせのままに、ってとこだが、しかし踏みとどまるはシャツの水玉が私をそろりと呼んでいるからで、向こうの方から呼んでいるのを捨てるのはしのびない。実に忍びないし、私はそういう腐りかけの甘さをちゅうちゅう吸い取ることが何よりも好きなのでそこにまだ存在するわけ。で、また手に取っている。手に取ったら着るしかないわけ。私はきかけたシャツをいったん元に戻すなんていう所作はできません。できません絶対。着るしかない。

着たら着たで実にしっくりきますし、なじんでいるので、文句は言えない。胸を張って町に出るよ。石を投げられてもびくともせんよ。

死ぬとわかっていながら宇宙に飛んだ

2011-03-28 | リッスン・トゥ・ハー
わたしはね、宇宙に行きたかったそれだけですよ。別に死んでもいい。一瞬でいいんです。宇宙に行きたかった。だから乗ったのです。人々の欲望に乗ったのですよ。あえてね。結果的にはそのとおりになってしまったわけですけれど、わたしはね、後悔など全くしていませんよ。全くです。宇宙に近づけたのですから。あの瞬間、わたしは誰よりも宇宙に近いところにいた。そして燃えた。落ちた。流れ星のようじゃありませんか。最高です。それをおろかだという人がいるなら、わたしはそいつの頭に中華あんをぶっかけてやりますよ。ええ、あつあつに熱したやつです。そいつはきええと叫ぶでしょう。わたしは笑いもしませんよ。わたしをおろかだと言った罪は重いのです。わたしが宇宙に、これほどまで憧れるのはどうしてでしょうか。自分でも正直まとまっていないので説明することができません。ただ。ただ、地上のやれ金を稼げだ、馬にまたがれだ、チェリーを結べだ、いっているお祭り騒ぎに嫌気がさしていたのは確実です。そんなじめじめしている地上にいるぐらいなら、すかっと晴れ渡る宇宙でぱんとはじけたいと思ったのです。

ひじからぶつかると、右を刺すそぶりを見せて鋭く

2011-03-27 | リッスン・トゥ・ハー
あたしは天狗で助平、とつる子さんはつぶやいて羽ばたいて、街路樹の枝にとまる。
天狗はみんな助平な生き物なのだと言う。天狗同士でも、人間とでも、いくらでも性交をする。
気に入ろうが、気に入らなくてもどっちでもいい、性器と性器を密着させて擦るだけ、とつる子さんは言う。
私はつる子さんが羽ばたいて街路樹の枝にとまったと言ったが実際は、手と足を使って登っただけで、別に羽ばたいたわけではない。だいたいつる子さんの背中には羽などない。ただ、登っていくつる子さんの動作は、ため息が出るほど綺麗で無駄がなかったから、これを羽ばたいていると言って過言ではないと思った。
つる子さんは枝に腰掛けて、街灯りの方を見ながら言う。
「あれは、あたしが天狗になったのは3年前」
「3年前に天狗になったんですか?」
「そうよ、それまでは人間で乙女やった」
「乙女ですか?」
「3年前のある日、あたしは天狗で助平になったん」
「一体何があったんですか」
「あたしはひとりの男を愛した」
「男ですか?」
「彼は天狗だった」
「天狗と性交をした?」
「いいえ、できなかった、もしも性交していたら、あたしはまだ人間で乙女でしょう」
「基準がよくわかりませんが」
「天狗の名前を春子と言います」
「男なのに春子?」
「名前にジェンダーはありませんよ」
「はあ」
「春子はあたしの胸をもみ抱く鬼でした」
「鬼?いや、いろいろ空想上の生き物がでてきて混乱してます」
「鬼は、あくまでも比喩表現です」
「とてもまぎらわしいです」
「春子はあたしと性交をしようと躍起になっていたのね」
「胸が入り口なんですか?」
「天狗でもまだ若手の天狗だったから、慣れてなかったのね」
「最初は誰でも手探りですからね」
「やがて春子の左手はあたしの股間へと移動し、それもなんという自然な流れの中で、まるで生きているような動きを見せて、意志を持っている、全く別の意志を持っているように、ああ、あたしの内部へ潜り込んでくる鬼」
「ちょっとつる子さん興奮しないでください、よだれふいてください」
「あたしはまるで天国にいるように思いました」
「若手のくせになかなかやりますね」
「天狗としての本能にしたがっているに過ぎない」
「はあ」
「だけど、いざ、春子がそのいきり立った性器をあたしの中に入れようとしたとき」
「はい」
「跳んできたバッタよ」
「バッタ?」
「殿様バッタ」
「バッタがなにをしたんですか?」
「こっちをじっと見ているの」
「バッタが見ている?」
「春子の性器はみるみるうちにしぼんでしまって」
「バッタ影響力がすごいですね」
「あたしたちは気まずくなって公衆トイレを出ました」
「どこでしようとしてたんですか」
「それから」
あっと思ったらつる子さんは、ひじからぶつかると、右を刺すそぶりを見せて鋭く。

冬が砕け散った

2011-03-27 | リッスン・トゥ・ハー
「買いだめをされているようですね」

「東京もたいへん住みにくうございます」

「どうして買いだめするんですか?」

「モノがなくなるからでございます」

「なくなりませんよ」

「だってみんな買ってる」

「大丈夫です落ち着いてください」

「しかし不安だしねえ」

「ではこれを」

「なんですか?」

「4次元ポケット」

「ドラえもんの?」

「ドラえもんの」

「もう発売されてるんだ」

「現実がついに追いつきました」

「それはすごい」

「ぜひ出してみてください」

「なにを?」

「ひみつの道具を」

「じゃあ出してみようかな、どれどれ」

「なにがでるかな」

「じゃあこれはなにかな?えい!」

「紙おむつ2週間分」

「実用性!」

「けれど実際必要とされてますよ」

「わたし育児も介護もしてないから、ちゅうか4次元感が皆無ですし」

「次、次」

「はいはい、これだ!えい!」

「乾パン3個」

「なめとんかい!」

「遭難中の山男なら1週間持ちます」

「持つんじゃなくて、持たせてんの」

「じゃああと2個補充しときます」

「とにかく、ひみつ感が皆無なの、これじゃ非常用巾着袋やない」

「ホームセンターで売ってましたからね」

「でてこいや!そのホームセンターちょっとでてこいや!夢を壊しやがって!」

「ドラえもんの実現はまだまだ先です」

「はい」

外国人看護師の4%

2011-03-26 | リッスン・トゥ・ハー
看護師になりました。フィリピンからきて、勉強をしました。一生懸命しました。寝る間も惜しんで勉強や仕事をしました。身体はぼろぼろですし、ストレスで髪も抜けてきました。お金は少したまりましたが、国に送らなければならないから贅沢はできません。試験は全然わからなかった。日本語もよく読めないものですから、答えようもない。けれども看護師になりました。なんとか合格したのです。どういう仕組みになっているのかは知りません。しかし確かに合格したのですから、これでいいのだ。わたしは感謝しています。日本に、わたしを良くしてくれた人みんなに、恩返しをしたいのです。技術で返すのです。確実に役に立つ。困っている人を助ける。わたしはそうして対価を得る。素晴らしい人生じゃないですか。みんな悦ぶ、それが理想。わたしは今、理想の世界に立っています。わたしを採用してください。裏切りません。わたしは決して裏切りません。信じてください。

古里のアーモンドの花と同じで、春を知らせてくれるのですね

2011-03-25 | リッスン・トゥ・ハー
春を知らせる花といえば桜ですよね。桜が惜しみなく咲き乱れて、花びらがはらはらと舞えば、日本人はおほほと笑ってしまいます。微笑んでしまいます。そういうかすかな緊張のゆるみが必要な時です。引っぱってばかりいれば伸び切ってしまう神経です。ゴムだってほら、伸び切ったら使い物にならなくなるじゃない。神経だって同じようなものです。だから緩ませることが大切だって、本に書いてありました。なんかのビジネス書に書いてありました。もしくは自己啓発本に。

春風を受けて、微笑んで、一瞬だけ全部忘れて。すぐに思い出すけれど、いろんな悲しいことを思い出すけれど、つかの間の夢を見たらいいじゃない。見ることは必要よ。絶望の中にいて、未来を想像することは大切だと思います。春が来たんです。いいかげん、冬は終わったんです。これから悪いことは起こりません。いいことばかりではないかもしれないけど。サイアクのことは起こりません。だから安心して眠ってほしい。野原で寝転んで全身に太陽を受けて。

その額に落ちてくる桜、かすかに香るんでしょう。

最悪のシナリオ

2011-03-25 | リッスン・トゥ・ハー
最悪の場合、桜餅を食べ続けなければならなくなりますね。桜餅を?そうです、桜餅しかありません。この世にある食べ物は桜餅だけです。桜餅だけ?完全に桜餅しかありません。それは栄養が偏ってしまう。しかし緑のものとして葉っぱはもれなくついています。あんな塩辛いもの何の役にも立ちませんけど。エネルギーはたくさんありますし。長くは持ちませんよ。餅だけに。餅だけにじゃないよ。じゃあ餅じゃないんですか?まぎれもなく餅です。でしょ?いやそれは今関係なくて。じゃあなにが関係あるんですか?まあ関係あると言えば餅ですか。でしょ?いやいやいや、それで桜餅だけになるのね。なりませんよ。ならないの?なるわけないじゃないですか。じゃなんでそんなこと言いだしたの?最悪のシナリオを想定したのです。それほど最悪でもないけども。最悪じゃないですか。

塩騒動

2011-03-24 | リッスン・トゥ・ハー
「塩がありません」

「塩ですか?」

「食塩が!」

「それは困りました」

「どうしましょうか?」

「冷静に、まずは冷静になることです」

「しかし、塩ですよ」

「わかっています、だからこれを飲みなさい」

「なんですか?」

「日本酒、升酒です」

「升の周りについているのは?」

「もちろん塩です」

「塩!」

「べろべなめなさい」

「べろべろ」

「どうですおいしいですか」

「塩辛い!」

「そうでしょう、ささ、日本酒をぐいっと」

「ぐい」

「どうですかおいしいですか?」

「甘い!」

「そうでしょう、ささ、塩をべろべろと」

「べろべろ」

「日本酒をぐいっと」

「ぐい」

「どうです堪能しましたか?」

「すごく堪能しました」

「あなたが堪能すると同時にすべての塩がなくなりました」

「ええ!」

「わたしの貴重な塩を返してください」

「はなしが全然見えない!」

「あなたはわたしの大切な大切な塩をべろべろとなめとったのです」

「やれ、っていうから」

「言い訳は聞きたくない」

「ごめんなさい」

「ゆるしません」

「本当にごめんなさい」

「ゆるしません」

「どうしたら許してくれますか?」

「そうさな、塩一粒につき100万払えや」

「ぼったくり!」

「はい、合計で1億になります」

「そんなお金ありません」

「しゃあない、8千万にまけとくわ」

「わかりました、どうぞ」

「現金で持ってる!」

「万元戸たあ、わしのことじゃい!」

「ははー」

エリザベス・テーラーさん(79歳)

2011-03-24 | リッスン・トゥ・ハー
どうもテイラーです。このたび、わたくし、逝かせてもらうことになりました。もう79にもなったのですから、そろそろだという声もちらほらあったのは確かです。その声に後押しされる形で逝かせてもらいます。もうね、いつでもよかったのです。正直疲れていたし、別に毎日が楽しいわけじゃない。そりゃ79にもなったら、毎日退屈ですよ。退屈を紛らわすために、金を使って、使って、いつのまにか破産寸前ですよ。破産するのはテイラーらしくないじゃない?だから逝かせてもらいますよ。あとの処理は知りません。あたくし、そういう面倒くさいことは一切しない主義なのです。逝ったら、どこに行けばいいのでしょう。駅があるんでしょうか?あるんでしょうね。どこにいくにも駅に入って馬車に乗るのが基本ですからね。あら、あなた今テイラーを馬鹿にしませんでしたか?テイラーも馬車に乗るんだと馬鹿にしましたね?このたわけ者が。馬車は基本です。あたくしぐらいの気品がないと乗りこなせません。安易に乗ろうものなら振り落とされてしまうでしょう。気性の荒い馬なら確実にね。落ちると危険です。大変危険です。命も危ない。あたくしは強靭な握力をもっていますから、決して振り落とされることはありません。いいですか、テイラーの握力のことをいつまでも覚えておいて。忘れたら地獄の底からにじみ出てきて、その首根っこつかみ、地獄に引きづりこんでくれるわ。では、ごきげんよう。