朝三暮四、という成句があります。
猿飼いが、猿に「栃の実を、朝に3つ、夕に4つやろう」と言う。すると、猿は不満を表した。「では、朝に4つ、夕に3つやろう」と言い直すと、猿は満足した。
朝夕合わせて7個と条件は同じ。目先の利益しか見ない猿を笑う。転じて、大局観を持ち得ない人を笑う。大局的に見ることが大切。これが句意です。
いま発売中の週刊『AERA』の巻頭で、養老孟司さんが、こんなことを述べられています。「猿は、朝は一日の活力減として4つ食べたい、夕は後は寝るだけだから3個でいいと考えたのかもしれない」と。
もし、そうなら「3+4も4+3も同じ7なのに、サルは馬鹿だねぇ」と短絡的に考える人間こそ馬鹿で、天体の運行と自身の活動を合理的に考えて食料摂取量を調整していた猿こそ賢いことになります。
深夜まで赤々と電気をつけて起きていて、昼まで寝てるという人間は、いったい何なんでしょう。いつも虚心坦懐に、モノゴトを見ようと心がけていますが、そんなボクでも朝三暮四の解釈は、コペルニクス的転回でした。
ちなみに、財務会計的に考えても、朝に4つが有利です。「いま手元にある100万円と、1年後に確実にもらえる100万円は、価値が異なる」。これは教科書的な知識です。
故事成句の解釈も、一面的ではダメなんですねぇ。