壁際椿事の「あるくみるきく」

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武田徹氏シンポジウム、「原発とメディア」参加

2012年03月26日 | きく

23日夜、新宿のニコンサロンで開かれたシンポジウム、「原発報道とメディア」を聞きに行って来ました。講師は、ジャーナリストで恵泉女子大の先生でもある武田徹さんです。

驚いたのは、核武装も視野に入れ、対米従属ばかりでなかったという、中曽根康弘、正力松太郎らの姿勢です。

対米従属でないのは評価できても、そのために核兵器を持つというのは、なかなか被爆国、日本の市民の理解を得ることは難しいのではないでしょうか。中曽根は、その後、米国大統領の関係を「ロン・ヤス」と称されるほど、親米に転じますね。何かあったのでしょうか?

以下、要約です。

3月11日、震災の直前、夫婦でトルコ・イスタンブールに向かい飛び立った。トルコに着き、ホテルの従業員から聞いて、震災のことを知った。仕事(orプライベート?)の旅行なのに、外出せず、部屋に缶詰で、テレビとインターネットで情報収集した。

次の用事がヨーロッパであり、そちらに向かう妻と別れた。妻は「一緒にヨーロッパに来たら」と誘った。しかし、そこまで日本の放射能汚染状況は深刻でないと判断し、2002年に原子力発電について本を著している手前、逃げ出すようなこともできず、16日に帰国した。

私は、ジャーナリストと紹介されることがあるが、現場主義と違い、非現場主義だ。一歩引いたところから、全体を俯瞰するような姿勢を貫いている。その立場で、原子力についても調べ、書いてきた。

そもそも日本が原発を導入したのは、憲法にさかのぼる。GHQナンバーツーのホイットニーが、日本の自主憲法制定委員会を訪れ、マッカーサー憲法を押し付けた。その際、「自分は10分ばかり外出する。その間に受け入れるかどうか、決めなさい」と言ったとか。

この際、付け加えたセリフが、「原子力の太陽で日向ぼっこ」。「アメリカを頂点とした西側の秩序に入るなら、日向ぼっこというアメを与えよう、という誘いだった。

戦後、日本がアメリカから原発を導入する。これを主導したのは、中曽根康弘(当時は通産大臣?)と、読売新聞の社主で、議員(衆or参?)だった正力松太郎。
(補足:この辺りの経緯については、NHKドキュメント『原発導入のシナリオ』(1994年)に詳しい)

当時、ウランの濃縮技術を持っているのはアメリカのみ。アメリカとしては、日本に原発を許すとしても、軽水炉に限定させ、ウランを売り込みたいという思惑があった。

原発は、水で冷却する軽水炉のほか、ガスで冷却する黒鉛炉などがある。黒鉛炉と違い、軽水炉はプルトニウムをたくさん生成しない。プルトニウムは原子爆弾に使われる。アメリカとしては、日本を輸出先として育てつつも、核武装するリスクは抑えたいという思惑があった。この辺りの経緯は、アメリカの公文書公開で、最近になって明らかになってきている。

とろころが、日本の第一号の原発(東海第一原発)は、イギリスから導入したガス冷却黒鉛炉だった。中曽根、正力らには(現代の政治家とは違い)対米従属だけでない気概があったのではないか。

現在、商用炉として54基の原発が日本にあるが、2号基以降はすべて軽水炉。とはいえ、軽水炉でのウランの燃焼カスを、プルトニウムに変換する高速増殖炉(実験炉)はある。(いまだ核武装の夢あきらめきれず、の勢力がある?)

夢のエネルギーとされた原子力。その日本への導入期、偶然、第五福竜丸事件があった。これは(広島、長崎に続く)“第三のヒバク”と呼ばれ、市民による反核運動が盛んになった。

(熱しやすく冷めやすい国民性なのか?)反核運動も下火になり、逆に原子力礼賛になっていく。それが鉄腕アトムやゴジラが生まれた社会背景でもある。再び世論が反核に転じるのは、1970年の大阪万博の後。反対運動が盛んになる中で、立地先を増やそうという目的で、1974年に電源三法交付金が始まった。

日本の近代化は、一極集中によって、効率を高められた。それは必然的に過疎化を伴った。日本の郵便番号は、千代田区の100から、だんだん皇居から遠ざかるにつれて、数字が大きくなっていく。南の端(沖縄)だから900番代ということはなく、おおむね皇居から同心円状に、遠いところは、800番台、900番台となる。たぶん、これは東京からの郵便物の到達所要時間だろう。

原発の立地を調べたら、54基のうち35基が800番台、4基が900番台だった。ドイツは脱原発を宣言した。ドイツは人口が散らばっており、地方分権が進んでいる。これも「脱原発」できた理由でないか。(逆を言うと、日本が脱原発できないのは、人が都市へ流出し、税収基盤が弱く、中央の交付金頼りという構造的な問題にあるのでないか)

原子炉は水がないと、燃料から崩壊熱が出る。わたしは当初からメルトダウンを心配していた。崩壊熱を調べると、メルトダウンは確実に起こる。当然、専門家も政府も知っていたはず。それを隠した。

市民は、その辺りの専門的な事情は、分からない。市民も、重大事故に備えていなかった。お上任せだった。専門家を自分たちのブレーンとして確保していなかった。厳しいようだが、リアリズムの評価でないか。

今回の事故によって、ツイッターなどソーシャルメディアが注目された。マスメディアは嘘ばかり流す、とされた。果たしてそうか。そうではない。両者は相互補完であるべきだ。


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1 コメント

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Unknown (珍事)
2012-03-29 16:52:47
郵便番号の件です。北海道は、004など、ゼロで始まりますね。これは「10」のことだそうです。10の一の位(0)が、郵便番号の百の位なのです。

北海道は、百の位がゼロですよね。札幌の004とか。沖縄(900)より大きい。これは、郵便制度が整えられた明治期、まだ北海道は開拓前夜だったからだと思われます。

不思議なことに、石川県が900番台なんですよね。それほど皇居から遠くなさそうですが。
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