壁際椿事の「あるくみるきく」

東京都内在住の50代男性。宜しくお願いします。

『企画書は1行』を読んだ

2010年01月29日 | 読書
書名からすると、企画の練り方、企画書の書き方の本のように見受けられるし、私もそう思って読み始めました。しかし実は、優れたビジネスの事例集でした。非常に面白く、一気に読み切りました。

以下、気になったところを引用&要約。

トヨタ自動車の「カンバン方式」は、作り過ぎを抑えるためだとか。また、「カンバン方式」「あんどん」を、決して「トヨタ・クオリティ・システム」や「プロダクト・コントロールパネル」とは呼ばない。現場から出てきた「実感」を表わす言葉を大切にしているから。(トヨタ自動車、張富士夫氏)

内容が良い悪いでなく、好き嫌いで選んでもらえる企画書を書く。企画が通らなかったときは、たまたま相手とセンスが合わなかっただけ。(ラジオ番組製作会社・林安二氏)

人類初の有人宇宙飛行、アメリカのマーキュリー計画の宇宙船には、当初、窓がなかったそうです。強度の点から設計者が、窓なしに設計したのです。しかし乗組員は反対。「ドラム缶状のコンテナに詰め込まれて過ごすと、発狂してしまう。宇宙の神秘を自らの記憶にとどめておくことは心許ない」と。これら宇宙飛行士の声で、私たち人類は、「地球の自画像(地球の写真)」を手に入れられた。

サウジアラビアの宇宙飛行士、スルタン・ビン・サルマン・アル=サウドの言葉。「(宇宙船から地球を指さし)最初の一日か二日は、みんな(多国籍の乗組員たち)は自分の国を指した。三日目、四日目、それぞれ自分の大陸を指した。五日目には、私たちの念頭にはたった一つの地球しかなかった」

日用衣料のユニクロの店舗で働く従業員は、みんな自社の服を着ています。制服のように同一の服でなく、服はてんでバラバラなんだれど、ある一定のトーンがあります。貸与でしょうか? であれば、従業員はどう服を選ぶのか。支給でしょうか? であれば、会社はどの服を誰にあてがうと、どのように決めるのか。ずっと不思議で、先日、レジの人に聞いてみたのです。

すると、社員割引で購入する、のだとか。なるほど。

自分が売るものが好きで、自信が持てないと、本気で売る力は出てきませんよね。当然のことです。

でも、なかなか難しい。この「自社製品を制服に」を提案したのは、経営コンサルタントのシー・ユー・チェン氏だそうです。氏は、UCC直営の喫茶店「上島珈琲店」のコンセプトも立案したそうです。とても落ち着く、いい店です。チェン氏、すごい才能の持ち主だと思いました。

広告の目的とは、企業が抱えている課題を聞き出して、それを解決することです。(広告会社タグボート代表、岡康道氏)

タグボートという社名そのものが、コンセプト(企画)です。小さく目立たない船(自社)だけど、大きな船(クライアント企業)を牽引する、ということです。わずか5文字の社名に、企画趣旨が込められているのです。

一生、屋台を引くことはできない(たこ焼き屋台から始め繁盛店を作り上げた柳瀬俊之氏の「1行」)。

著者は、食、美術、海外文化評論、人物ルポルタージュなどの分野を活動領域とするノンフィクションライター。著名な脚本家、小山薫堂氏とも仲が良いようで、氏との雑談中に「企画書は1行」の企画を思い付いたそうです。企画書は、自分がやりたいことを(予算も付けてもらって)やらせてもらうための手段。「やりたい」という本気の強い気持ちが必須です。突き詰めれば1行になります。なるほど、その通りだと思おいました。