【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

海賊対策/『宝島』

2009-03-26 18:51:00 | Weblog
 「海賊の定義」はなかなか難しそうですから、ドクロの旗を掲げていたら攻撃可、としたら「新ルール(交戦規則)」が明確になりません?

【ただいま読書中】
宝島』スティーブンソン 著、 神戸万知 訳、 ポプラ社、2004年、700円(税別)

 冒険小説の古典です。何度目の再読になるかは忘れましたが、この翻訳は読みやすいものでした。
 ジム少年の両親が営む酒場兼宿屋「ベンボー提督亭」に「船長」と自称する老船乗りがふらりと現れるところから話は始まります。「船長」は海賊仲間を裏切って宝を隠した島の地図を持ち逃げしていました。それを追ってきた海賊たちは「船長」を殺そうとしますが、地図は偶然ジム少年の手に入ります。地主のトリローニさんを隊長に宝探しの航海が始まります。しかし……ヒスパニオーラ号に紛れ込んでいた海賊による叛乱が。
 登場したばかりのときには片足の海賊シルヴァーが何とも言えず魅力的に描かれています。海の経験豊富、統率力があり礼儀正しく人間的魅力もある人物でどうやら教育も受けているようです(19世紀のイギリスの庶民には珍しいことです)。ところが突然スイッチが入ると凶暴な人殺しに。暴力に慣れておらず正直だけど強欲な人々が南海の孤島でいかにこの百戦錬磨の海賊たちに対抗するか(それも19対7の劣勢で)、が本書の見所の一つです。もう一つの見所は「海賊」の存在そのもの。当時のイギリスではまだ海賊は「英雄」的存在でもあったはず。私掠船という合法的な海賊の記憶も残っていたでしょうし、イギリスでは伝統的に沿岸部では密輸などの「反体制」も盛んに行われた“伝統”があります。さらにシルヴァーが、戦況が悪くなった時の言動もずいぶん“人間的”で、著者は「海賊」をただの単純な暴力と欲にぼけた海の荒くれ者としては描きません。
 さらに状況を複雑にするのが、ジム少年の衝動的な行動です。とにかく突然思いついたら突進します。結果としてはオーライなのですが、こんな人が部下にいたら指揮官は胃に穴が開きそうでしょうね。



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