【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

国技

2017-08-02 06:43:13 | Weblog

 大相撲の親方には「日本人しかなれない」という決まりがあるそうです。たぶん「国技」だからでしょう。でも、だったらなぜ横綱には外国人でもなれるのでしょう? 私から見たら、現役時代に横綱になれなかった親方よりも横綱の方がエラいんですけど。

【ただいま読書中】『大相撲の道具ばなし』坂本俊夫 著、 現代書館、2016年、1200円(税別)

 初っ端から「読んで良かった」と私は思いました。「褌を相撲の世界では『みつ』と呼ぶ」とあったのです。そういえば「まえみつを取る」とか言っているのはなぜかと調べたことがなかったのですが、「まえみつ」=「褌の前の部分」だったんですね。これをぐるぐる回して締めるから「廻し」、しっかり締めるから「締め込み」だそうです。しかし稽古廻しも締め込みも洗わないって……なんとも不潔な感じではあります。
 履き物や座布団など身の回りの品にも、番付によって厳しい決まりがあります。普段着である浴衣では、他の力士の名前入りのものを着ている人が多いのですが、これはお下がりではなくて、挨拶回りなどで自分の名前入りの生地を配ることがあり、もらった人は自分で浴衣に仕立ててそれを着る、という風習があるからだそうです。
 行司は、昔は陣羽織にたっつけだったのが江戸時代には麻の上下、明治になってから現在の直垂に烏帽子になったそうです。行司も位によって差があります。直垂の紐の色がランクで違い、立行司だけ短刀を腰に差して印籠をぶら下げます。三役行司は印籠だけ、それより下は短刀も印籠も無し。十枚目(俗名は「十両」)行司以上は白足袋ですが、それより下の行司は裸足。
 呼出の仕事は多様です。白扇を持って土俵上で力士を呼び上げるから呼出ですが、他にも、土俵を掃く・懸賞旗を持って土俵を回る・柝を打つ・太鼓を打つ・幕内力士の控え座布団(土俵だまりで次の出番を待っているときに座る)を付き人から受け取って土俵だまりにセットする、など多彩です。そういえば、毎場所土俵を作るのも呼出の仕事でした。彼らがいなかったら大相撲は成立しません。
 床山の仕事も重要です。今どき、地毛で髷を結う人って、お相撲さん以外にどれくらいいましたっけ? 日本の伝統文化を“動態保存”している人たち、と言えるかもしれません。
 土俵は、江戸時代初期に使われるようになりました。それまでは地べたで人垣に囲まれて勝負をしていました(「人方屋(ひとかたや)」と呼ぶそうです)。だから最初に土俵が使われるようになったときには、賛否両論が激しく闘わされたそうです(その時のリクツが、後世に「土俵に関する古来からの伝承」として残されたりしたそうです)。形も丸や四角、大きさも様々でしたが、やがて現在のものに統一されました。(そういえば「四角い土俵」は、以前読んだ『相撲の歴史』(新田一郎、講談社学術文庫)にも書いてありました)
 最後には「国技館」まで「道具」として登場します。著者は「大道具として寛大にとらえてください」と言っていますが、寛大も何も、楽しいからOKです。